各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進
生きものが来たくなる“よりみち緑地”を育成
静岡製作所の半径1km以内は、近年ではほとんどが工場や宅地となり、緑の多い土地は少なくなっています。しかし、製作所から離れると、東側の「有度山」や西側の「谷津山」「八幡山」のように、緑が多く、鳥類や昆虫類が利用している、自然豊かなエリアが残されています。
こうした環境を踏まえて、市街地によって分断された緑を飛び石のようにつなぐ“よりみち緑地”の整備に取り組んでいます。生きものがこの緑地を一時的に利用することで、緑の多いエリアを行き来しやすくなります。構内の生きものの状況を従業員が日々観察し、効果測定しながら、さらなる改善に取り組んでいます。
また、同製作所では、“よりみち緑地”をはじめ、構内で観察できた生きものをイントラネットで紹介しているほか、生きものに親しむイベントなどの開催にも注力。従業員に積極的に情報発信するとともに、生きものへの興味を喚起する取組を続けています。
事業所所在地
〒422-8528 静岡県静岡市駿河区小鹿三丁目18番1号
主な取扱製品
冷凍冷蔵庫、ホームフリーザー、ルームエアコン、ハウジングエアコン、事務所・店舗用エアコン、空調・産業用コンプレッサー
主な取組テーマ
- ■“よりみち緑地”を整備 [B-4-(1)] [B-4-(2)]
- ■構内の生きものについて積極的に情報発信 [C-7-(1)]
[ ] 内は取組テーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。
取組の特徴
- ■鳥類や昆虫類が、食事や休息などの際に一時利用できる機能緑地の整備を目指す
静岡製作所の活動テーマ
周辺の山々の緑をつなぐ“飛び石”のような機能を持った緑地を整備
静岡製作所は市街地の中に、古くからある工場で、構内緑地は広くありません。こうした環境下で、どうすれば生物多様性に寄与する活動ができるか検討し、地元静岡市の環境アセスメントセンター様に調査やアドバイスをいただいて、“よりみち緑地”という方向性を見出すことができました。
“よりみち緑地”とは、鳥類や昆虫類が、食事や休息などの際に一時利用できる機能緑地です。静岡製作所の東西にある山々は、市街地によって大きく分断されていることから、静岡製作所内の緑地を、周辺の山々の緑とつなぐ“飛び石”のような機能を持った“よりみち緑地”に整備することで、地域の生態系ネットワークの構築に貢献することを目指しています。
現在、構内の2か所に“よりみち緑地”を整備しています。いずれの緑地にも製作所周辺で生息が記録され、地域生態系を攪乱する恐れのない植物から、製作所内の環境に適した森林性・林縁性・草原性の植物、製作所内で生息を確認した植物や芽生え苗(幼木)を植栽しています。さらに、構外の土地の開発などで除伐されそうになった地域在来の植物を引き取り、導入しています。こうした工夫で周辺環境との連続性を持たせるとともに、在来植物の“避難所”の役割も持たせています。
「霧ケ峰みらい研究所」横の敷地
主な植栽種:ヤマハギ、ムラサキシキブ、ソヨゴ、オミナエシ、ワレモコウ、ヤブカンゾウ、ノコンギク など
工機工場北側の敷地
主な植栽種:ヤマハギ、ムラサキシキブ、アセビ、ウツギ、ハナイカダ、センリョウ、クロモジ、ヤブコウジ、タチツボスミレ、ノコンギク、ヘビイチゴ など
従業員が日々生きものを観察・記録して効果を検証
緑地の実際の利用状況を確かめるために、数年おきに外部専門家に生きもの調査を依頼するほか、従業員による調査を毎年実施しています。
自主調査の概要は以下の通りです。他の製作所の実績なども参考にしながら調査方法を考案し、チョウ類と野鳥について実施しています。調査時期は過年度の観察でもっとも個体数が多かった時期としており、今後も観察結果を踏まえて手法をブラッシュアップしていきます。
種類 | 調査時期 | 時間帯 | 調査方法 |
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チョウ類 | 10月 | AM9時~11時 |
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野鳥 | 12月 |
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また、担当者たちが見かけた生きものについても随時記録しています。2021年4月からは、野鳥向けの水飲み場を両方の緑地に設置し(各2~3カ所)、モーションカメラでの記録も開始しました。今後も観察と記録を続け、設置の効果を検証しながら、より生きものが利用しやすい緑地づくりに向けて、適宜、改善を実施していきます。
水飲み場は緑地ごとに2~3カ所設置。小さな容器を選び、水が汚れたり減ったりした場合はすぐに取り換えられるようにした
希少種「マツバラン」の見守りを継続
マツバラン
2020年12月に実施した生きもの調査(植物調査)において、よりみち緑地内に、環境省レッドリスト2020で準絶滅危惧種に指定されている「マツバラン」が確認されました。事業所に飛来した鳥類などを介して、ここまで胞子が運ばれてきた可能性があります。
現状の環境がマツバランの生育に適しているとみられることから、当面は人が手を加えず見守っていくことにしていますが、例えば枯死した木の伐採による日照条件の変化など、大きな環境の変化が起こりそうな場合は、適宜植え替えなども検討していきます。
生きものへの興味を喚起する情報発信やイベントに注力
調査を通じて得られた情報は、他の環境関連のトピックとともに、従業員に積極的に発信しています。
構内で観察された生きものの種名や生態を「生きもの図鑑」としてまとめ、イントラネットで紹介しています。また、2022年1月には、従来からイントラネットに掲載していた「環境ニュース」を、より親しみやすい内容・デザインの「Greenだより」にリニューアルし、緑地関連の取組内容を含むさまざまな環境トピックを発信しています。また、この「Greenだより」に構内で実施した環境イベントでのアンケート結果を掲載し、担当者からコメントを発信するなど、コミュニケーションの場としても活用しています。従業員からは「自然について考えるよい機会になった」「癒される」などの反応が寄せられており、今後も隔月で発行を続ける予定です。
こうした情報発信に加え、従業員が自ら参加し、楽しみながら生きものへの興味を育てられるような取組にも注力しています。
2021年度は前年度に引き続き、“よりみち緑地”で収穫した植物の種を従業員に配布しました。1月から4月にかけて、休憩所にも種を置くなどして従業員に広く配布した結果、29名(前年度実績3名)が自宅へ種を持ち帰りました。担当者に「発芽しました」などと報告してくる従業員もあり、コミュニケーションのきっかけとなっています。
また、6月にはクイズラリーを開催。前年度に続き2度目の開催となった今回は、前回開催時のアンケートで寄せられた意見を踏まえて、通常版(10問)に加え高難易度の問題(5問)も作成するなど内容を改善し、最終的には160名(前年度実績89名)の参加がありました。参加者からは「仕事の息抜きになった」「持ち帰って子どもといっしょに解いた」などの声もあり、楽しく生きもののことを学んでもらっています。
今後はさらに、よりみち緑地を活用した現地イベントの開催なども検討しています。
マネジメントの声
当社グループでは、事業所の生物多様性保全の活動により、次世代に引継ぐ地域の環境及び人づくりの推進を目指しています。その中で当製作所は、構内にとどまらず地域全体の環境に貢献することを意識し、周辺の山々の緑を飛び石的につなぐ機能緑地として“よりみち緑地”を整備してきました。
2016年に活動を開始してから、従来は見かけることがなかった鳥や蝶を構内で目にすることも増え、多少なりとも地域に貢献できているのではないかと自負しています。また、近年では"よりみち緑地"で育った在来種の種が採取できるまでになり、その種を従業員が自宅で育てる活動が広がっています。
これからも地域への貢献を意識した活動を推進していくことはもちろん、より多くの人に生物多様性保全の輪を広げていきます。
製造管理部 環境工務課 課長 片瀬 憲一
フォトギャラリー
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ヒヨドリ在来種
(2021年12月11日撮影)
ヒヨドリ在来種(2021年12月11日撮影)
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ムクドリ 在来種
(2022年2月16日撮影)
ムクドリ在来種(2022年2月16日撮影)
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ハクセキレイ 在来種
(2022年5月18日撮影)
ハクセキレイ在来種(2022年5月18日撮影)
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メジロ 在来種
(2022年3月24日撮影)
メジロ在来種(2022年3月24日撮影)
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ウラナミシジミ在来種
(2018年10月20日撮影)
ウラナミシジミシジミチョウ科シジミチョウ科在来種(2018年10月20日撮影)
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ベニシジミ在来種
(2018年10月20日撮影)
ベニシジミシジミチョウ科シジミチョウ科在来種(2018年10月20日撮影)
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ツバメシジミ 在来種
(2022年6月16日撮影)
ツバメシジミ在来種(2022年6月16日撮影)
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ナミアゲハ在来種
(2021年7月12日撮影)
ナミアゲハ在来種(2021年7月12日撮影)
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アオスジアゲハ在来種
(2019年5月9日撮影)
アオスジアゲハアゲハチョウ科アゲハチョウ科在来種(2019年5月9日撮影)
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ヤブカンゾウ在来種
(2021年6月30日撮影)
ヤブカンゾウ在来種(2021年6月30日撮影)
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ヤマハギ在来種
(2021年9月27日撮影)
ヤマハギ在来種(2021年9月27日撮影)
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ムラサキシキブ在来種
(2021年12月3日撮影)
ムラサキシキブ在来種(2021年12月3日撮影)
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マンリョウ在来種
(2021年12月3日撮影)
マンリョウ在来種(2021年12月3日撮影)
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マツバラン在来種
(2020年12月撮影)
マツバランマツバラン科マツバラン科在来種(2020年12月撮影)
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ノコンギク在来種
(2021年11月11日撮影)
ノコンギク在来種(2021年11月11日撮影)