サステナビリティの実現に向けて

常務執行役
武田 聡

三菱電機グループが、経営方針に「『事業を通じた社会課題の解決』という原点に立ち、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置づける。これにより、企業価値の持続的向上を図り、社会・顧客・株主・従業員を始めとしたステークホルダーへの責任を果たす」ことを掲げてから1年。私どもは、サステナビリティの実現を経営に実装させるために、様々な取組みを行ってきました。

サステナビリティの実現に向けた推進事項

まず、サステナビリティを経営の根幹に位置づけた私たちが取り組むべきことは何なのか、改めてサステナビリティ委員会等で議論し、サステナビリティの実現に向けた4つの推進事項を明確にしました。

一つ目は、事業を通じて社会課題や環境課題を解決し、「活力とゆとりある社会の実現」に貢献することです。二つ目は、社会課題や環境課題を引き起こさない・拡大させないよう、責任ある企業活動を行うことです。三つ目は、短期的・中期的のみならず、長期的な社会変化・環境変化に適応すること、事業機会を創出して企業を持続的に発展させること、リスクを予測し、企業経営に与える影響を抑制・最小化することです。四つ目は、透明性の高い情報開示を通じて、社会・顧客・株主・従業員を始めとしたステークホルダーとコミュニケーションを取り、社会からの期待や要請・意見を企業経営に反映させることです。

マテリアリティ(重要課題)に関する主要なKPI

三菱電機グループは、「持続可能な地球環境の実現」「安心・安全・快適な社会の実現」「あらゆる人の尊重」「コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの持続的強化」「サステナビリティを実現する企業風土づくり」の5つのマテリアリティ(重要課題)を掲げています。

「事業を通じた社会課題解決」「持続的成長を支える経営基盤強化」の二つの面から特定した先の5つのマテリアリティ(重要課題)に対し、中長期の目標や取組み指標(KPI)を設定の上、PDCAサイクルによる継続的な改善活動を実施しています。2023年には、取組み指標として特に重要な17項目を設定しました。これらの達成に向けて、サステナビリティ委員会にて進捗の確認及び施策の推進を行い、経営への着実な組み込みを図っています。

社会課題の解決に向けた課題領域

私たちが手掛ける「家電から宇宙まで」という幅広い事業分野の中で、三菱電機グループの人財や技術をもって、私たちはどのような社会課題を解決したいのか、また、社会からはどのような社会課題の解決を期待されているのかを改めて整理しました。その時によりどころにしたのが、2022年に策定したサステナビリティビジョン「人と地球と心でつなぐ」です。三菱電機グループは2050年に目指す社会を「笑顔あふれる持続可能な社会」としています。取引先やお客様、そして三菱電機グループ従業員など幅広いステークホルダーが幸せを感じられる社会を意識したものです。

2050年のありたい社会からバックキャストし、三菱電機グループが解決する課題領域として、『カーボンニュートラル』『サーキュラーエコノミー』『安心・安全』『インクルージョン』『ウェルビーイング』の5つを特定しました。

『カーボンニュートラル』:自社だけでなく社会のCO₂を減らし、気候変動を抑える脱炭素社会
『サーキュラーエコノミー』:資源が有効活用され、持続的に循環する社会
『安心・安全』:様々な環境変化やリスクに対応できるレジリエントな社会
『インクルージョン』:あらゆる人を尊重し、誰もが自由で公正にいきいきと過ごせる社会
『ウェルビーイング』:一人ひとりの心身ともに健康で快適なくらし

笑顔あふれる社会の実現に向けて、まずはこのような社会やくらしを目指していかなければなりません。中でも、カーボンニュートラルへの対応は私たちが特に強みを発揮できるものであり、「責任」と「貢献」の両面から取組みを加速させています。自社領域の脱炭素を目指す「責任」では、これまで2030年度目標としていた「工場・オフィスでの温室効果ガス排出量を50%以上削減(2013年度比)」を見直し、「2030年度に実質ゼロ」を目指すこととしました。「貢献」では、社会全体のカーボンニュートラルの実現に貢献する事業の創出・拡大を目指しています。

人財に対する考え方

サステナビリティを実現するための原動力は、三菱電機グループに関わる人に他なりません。この考えの下、「人=将来の価値を生み出す資本」ととらえた人財戦略を、より一層推進しています。グローバル競争がますます激化する事業環境下で、三菱電機グループが社会からの信頼を取り戻し、発展するために、多様・多才な「個」の力を総結集し、あらゆる変革を成し遂げていきます。

「変革」に向けて

このように、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置付けることを掲げてから1年。私たちは、できることを全力で進めているところです。2022年度の品質不適切事案を受け、三菱電機は今、変わろうとしています。この改革はすぐに成し遂げられるものではありません。特に、風土改革には、現在進めている活動を一過性のもので終わらせず、一つひとつの課題の解決を5年、10年と辛抱強く継続して、よりよい企業風土を根付かせていかなければならない、という覚悟をもって取り組んでいます。
私自身は、これらの取組みに対し、「オーナーシップをもって、主体的に取り組む」ことを大切にしています。これは、私自身のパーパスでもあります。三菱電機グループの目指す姿に私自身のパーパスを重ねて、サステナビリティの実現に尽力していきます。

武田 聡

2023年7月現在