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公式SNSという顧客接点でCXをデザインする

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
UXリサーチャー
石川 美穂
三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
日下部 真紀
三菱電機株式会社 リビング・デジタルメディア事業本部
柴田 真帆
三菱電機家電の公式SNSアカウント(X:@MitsubishiKaden、Instagram:@mitsubishielectric_kaden)のフォロワーは合計約12万人。統合デザイン研究所のデザイナーを中心に、事業本部メンバーも加わったチームで運営されている。「家電公式」とはいえ、扱う内容は事業本部を横断して多彩だ。それは単なる情報発信ではなく、ユーザーとのコミュニケーションを通じて顧客体験(CX)そのものをデザインする仕事でもある。三菱電機のSNSを支えるチームのコアメンバー3人に、仕事の内容やその面白さについて聞いた。

ユニークな企画を生み出す「越境チーム」

石川

三菱電機のSNS活動をさかのぼると、2018~2019年ごろにスタートした、らく楽アシストの情報を発信するTwitterアカウントが始まりです。2024年に家電全般を扱うアカウントに進化して、情報発信からコミュニケーションへと目的もシフトしました。日下部さんはこの時からの参加ですよね。

日下部

新卒で入社したのが2024年。統合デザイン研究所のソリューションデザイン部に配属されて、直後にSNSチームに参加しました。最初にやった仕事は料理です!

石川

料理研究家のまりえさん(@mariegohan)と連携したインフルエンサー企画ですね。

日下部

まりえさんが、三菱電機の家電を活用したレシピを毎月作ってくださっているので、それを社内でも実際に作ってみようと。社内で調理して撮影するのって意外とハードルが高いけど、まりえさんの投稿と相乗効果が出るし、コミュニケーションも広がると思ってがんばりました。1年目って同期と集まる機会が多いので、「最近、何やってるの?」って聞かれるたびに「ごはんつくってる」って言っていましたね(笑)。

石川

そして、事業本部でブランディング企画を担当する柴田さんが加わったのが2025年。

柴田

そうですね。私は統合デザイン研究所のデザイナーではない……というか、販売会社の三菱電機ライフネットワークから2025年度に三菱電機に来ました。ずっと販売側でマーケや商品の仕入れ・価格設定・販売方法など、販売に関するあらゆる施策に携わってきたので、SNSでユーザーとコミュニケーションする、という仕事そのものがすごく新鮮でした。

石川

「三菱電機のファンづくり」が目標だから、扱う内容が幅広いんですよね。

柴田

家電公式アカウントなのに、トレインビジョン*(電車内モニター)とか、宇宙事業とか……。<#こんなところに三菱電機>をキーワードに、意外性のある情報を積極的に紹介しています。基本的には、アイデアを出して、コンテンツを固めて、関連事業本部に確認して投稿する──という流れだけど、「これ、誰に確認するの?」みたいなものも多い(笑)。

石川

扱う領域が広いから、つながる人も、調べることも増えて、次のネタが見つかって——という繰り返しでどんどん広がっていますよね。最近だと、<#レトロの深い沼>を、日下部さんが中心になって企画してくれて、反響が大きかった!

日下部

かつて製造していた家電製品を引っ張り出してきて、動画で紹介しています。第一弾は、洗面所で洗髪できるハンディシャワー、その名も<朝シャンCLUB>! 1980年代、私の生まれる前の製品です。

石川

そして、第二弾で紹介した<JEAGAM(ジーガム)>というラジオはもっと古い。

日下部

70年代に海外の電波を受信して外国のラジオ番組を聞く「BCL(ブロードキャスティングリスナー)」というブームがあったそうです。完全に未知の世界でしたが、投稿してみると「今もやっています」みたいな反応もいただいて驚きました。実際に開発に携わった人からたっぷりこだわりを聞いたので、いずれはWebサイト用のコンテンツとか展示会みたいに、スピンアウト的に別メディアで詳しく紹介したいという野望を持っています。

なぜ、デザイナーがSNSを運営するのか

柴田

マーケティング的な視点だけじゃ出てこない発想が出てくる。それが今のチームの面白さですよね。

日下部

<#レトロの深い沼>みたいに過去の製品を紹介しても、直接売上にはつながらない。でも、過去の尖った製品を通じてこそ伝わる三菱電機らしさってありますよね。それに、アイデア倒れにならなかったのは、「今のチームなら、すぐにコンテンツにできる」と思えたから。石川さんは組織の内部に詳しいし、柴田さんは販売やブランドの知見がある。そして、私は実際に手を動かしてコンテンツを作れる。

柴田

それぞれ自分の軸があって、見る角度も違うんですよね。私の土台は「販売」なので、販売現場との「橋渡し」をいつも意識しています。SNSを通じて家電についての新たな視点や気づきをもらったら、できるだけ営業の現場にフィードバックするし、それも自分の役割だと思っています。私自身も統合デザイン研究所と組んだことで、常に「いろんな視点から見よう」と考えるようになりました。

石川

そもそも統合デザイン研究所は、開発部門と上流段階から連携する機会が多いですよね。私自身、事務職として入社したのに途中で統合デザイン研究所に異動して、「エアコンのリモコンは本当に高齢者に使いやすいのか?」というテーマで、開発部門と一緒にユーザビリティの評価と検証を徹底的に積み重ねてきた人間です。名刺には「人間中心設計専門家」なんて書いているけれど、スタンスは現場百遍。会社のことも、デザインのことも、すべて現場から学んできた自負がある。だからこそ、「三菱電機のいいところをもっと伝えたい!」という気持ちがすごく強いですね。

柴田

フォロワー数の拡大を目標として持ちつつ、決してそこだけを見ているわけではないですよね。

日下部

一過性のバズりは狙わず、ポジティブなコミュニケーションを地道に積み重ねていきたい……といいながら、気づけばXのフォロワーは10万人を突破!誠実なSNS人格を保ったまま、これからも規模を広げていくのが理想ですね。

柴田

「しあわせをシェアしよう」というブランドコンセプトの通り、色んなしあわせをシェアしたい。製品まわりのトピックだけじゃなく、CMに出演してくださっているタレントの方々を「推し活」風に紹介していくのもその一環です。

石川

大きな組織の中にいると、エンドユーザーと直接やりとりできる場は決して多くない。しかもSNSって、情報だけじゃなく姿勢まで伝わるメディアだから責任は大きいと感じています。

SNSは「体温のある顧客体験」をつくる実験場

石川

公式アカウントとして責任ある情報発信をするためには、実は社内コミュニケーションがすごく大事で、取材するにも、承認を回すにも、かなり社内調整が必要になります。特に若手には難しいポイントだと思いますが、日下部さんは実際にやってみてどうでした?

日下部

本当にその通りで、私が見ている三菱電機と、石川さんが見ている三菱電機は全然違うんですよね。社内のどこにどんな人がいて、何を考えているか──。ここが俯瞰できれば動ける幅がぐんと広がると思っています。だから今、SNSチームで実践しながら社内のつながりを作れていること自体が、本当に勉強になっています。

石川

そもそも統合デザイン研究所は全社のデザイン業務を担当しているから、事業の垣根を越えて色々な人とつながれるし、各事業部門のハブになれる立場なんですよね。

日下部

隣に情報技術総合研究所もあって、技術的なアドバイスが気軽にもらえるのもありがたいです。デザイナーとしては「当事者の話を聞く」ことの意味が本当に大きくて。自分から積極的に情報を取りに行くスタンスが学べたし、ユーザーを観察して、声を聞いて、事例を積み上げて、フィードバックする──というプロセスをどんどん回せるようになりました。あと、個人的にやりがいを感じるのは、SNSの「速さ」ですね。デザイン業務は長期スパンのものも多いし、「自分の成果物」を実感しにくい場合もあります。でも、SNSはコンテンツをクイックに企画・制作して世に出せる。投稿の翌日には反響が見られるし、思うように伸びなくても理由を分析して次で改善できる。すごい勢いでサイクルを回せるのが刺激的だし、それが長期プロジェクトの糧にもなる。入社してみて、こういうプロジェクトもあるんだなあ、っていうのは新鮮な驚きでした。

石川

社内にもポジティブにフィードバックできますよね。修理窓口に寄せられる声はどうしても故障や不具合が中心になるけど、SNSなら「レンジのこの機能が離乳食づくりに便利!」とか「エアコンを買い替えたら暮らしが変わった」みたいな、何気ないけど実感のある声を聞けるのもうれしいです。

柴田

同じブランディング活動でも、CMは大きなメッセージを届ける力があるし、SNSは人間同士でつながれる。私たちの個人的な思いにも共感してくれるユーザーと出会えるし、一緒に育っていく感じがあるんですよね。

石川

CXのあらゆるフェーズに関われるのも面白い点ですよね。製品に出会う前から、購入時、使用中、その後まで、色々な接点でつながれる。アカウントの成長とともに前後にどんどん広がってきている実感があります。

柴田

専門性もキャリアも多様なチームでやっているからこそ、できることが広がっていますよね。SNSの中身は結局人間だから。大企業って人が見えにくい。だからこそSNSでは人間を感じてほしいと思います。

石川

身内びいきに聞こえるかもしれないけど、三菱電機の社員は、すごく一生懸命で、超がつくほど真面目で。おいしいごはんに対する思いが熱すぎて自宅に5台も炊飯器を並べている炊飯器の開発者とか、エアコンをコツンと叩くだけで不具合を見抜いちゃう技術者とか……まだまだ伝えたいことだらけですよね。これからも「体温」をしっかり届けていきたいと思っています。

「らく楽アシスト」「トレインビジョン」は三菱電機株式会社の登録商標です。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
UXリサーチャー

石川 美穂

1991年入社。
事務職として入社後、2000年に統合デザイン研究所に異動し、開発職へジョブチェンジ。ユーザーに近い感性と行動観察力を生かして、ユーザビリティ評価分野で活躍。現在はユーザビリティの視点からSNSによる顧客体験(CX)のデザインにも取り組んでいる。特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構認定 人間中心設計専門家。

三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー

日下部 真紀

2024年入社。
大学では建築デザイン、グラフィックデザインを学び、「できるだけ広がりのあるフィールドで働きたい」と考えて統合デザイン研究所へ。コーポレートブランディングプロジェクトに参画しつつ、SNSチームで企画立案やコンテンツ制作を手がける。

三菱電機株式会社
リビング・デジタルメディア事業本部

柴田 真帆

2019年、三菱電機ライフネットワークに入社。
家電製品のマーケティングやマーチャンダイジングに携わった後、2025年から三菱電機へ出向。家電を扱う事業本部で、ブランド戦略の立場からSNSに携わる。