コラム
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2002年 12月分 vol. 8
7畳の自室から生まれた 世界一リアルなプラネタリウム
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

メガスターで再現したオーストラリアの星空。(提供:大平貴之さん) 星が降ってくる。となりの人の顔に、体に。よく見ると私の体にも。170万個の星の世界の中に私がいる・・・。12月23日(月)、東京お台場の日本科学未来館で体験したプラネタリウム「メガスター・星空からの贈り物」は今までのプラネタリウムとまったく違った星の世界を体験させてくれた。

 普通のプラネタリウムが投影する星の数は、数千個から2万個。ところがメガスターは170万個もの星を投影する。しかも手作り!自称プラネタリウムクリエイター・大平貴之さんの自宅7畳の「研究室」で作られたというからオドロキ。小学4年生からプラネタリムを作り続けて約20年。4機目となるメガスターは直径50cmたらず、約30kgのキュートな投影機。大平さんは飛行機の手荷物でもちこみ、「キャラバン」のごとくあちこちで移動プラネタリウムを上映してしまう。直径10m、高さ7mのエアドームまで手作り。

 こじんまりしたドームは「パオ」のようで不思議な一体感があった。60人も座ればいっぱいになるドームの一番後ろの列に座ると、すぐ後ろに星空が。近くで見ると小さな星が無数に集まっている。ということはドーム反対側のガス状に見える星空も、すべて小さな星がきちんと表現されているわけ?・・そうだった。資料によると太平さんはリアルな星空を求めて、11.5等星の星まで再現したという(通常のプラネタリウムではせいぜい8等星まで)。双眼鏡でみると星がくっきり見えてくるそうだ。プラネタリウムの中で双眼鏡!

 メガスターでは決して「この星とこの星を結ぶと・・」と星座のお勉強をしたりはしない。未来館での3日間のプログラムはXmasがテーマ。南の海と北の高山で見える星空に加え空を舞う雪やオーロラもCGで再現。立体音響システムで鳴り響く「ピエ・イエス」などXmasの敬虔な音楽が泣かせる。「プラネタリウムの魅力は星空そのものの感動を与えること」という大平氏の言葉どおり、星空に包まれる感動を五感で味わうプログラム。 

 サンタの衣装で解説もこなした太平さんは、電気メーカーのエンジニア。プラネタリウム作りはオフタイム。顔も声もカッコよくてこんなスゴイものを作りながら気負いを感じさせない不思議な人。彼の魅力に集まってくるボランティア達がメガスターの運営を手伝っている。現在は星の数を350万個に増やし、より大きなドームで投影できる「メガスター2」を2003年春完成目ざし製作中。さらに音楽など他分野とのコラボレーションも広げていきたいそうだ。どんな感動を体験させてくれるか、楽しみ。

 来年も「宇宙」には新たなムーブメントが起こりそう。ということで、皆様よいお年を!



大平貴之さんの「メガスター」のページ
http://www.megastar-net.com/