コラム
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2003年 7月分 vol. 2
野口飛行士 娘達と向き合い宇宙目ざす
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


野口聡一飛行士は神奈川県出身の38歳。シャトル再開時には、船外活動で 耐熱タイルの修理を行う可能性も大きい。  ラーメン、カレー、ハンバーグが好きなB級グルメ。小2からボーイスカウト。中高は陸上、大学時代はアメフト部。苦手は音楽で「音楽教室」から脱走経験あり。女の子3人のパパ。趣味はキャンプ。高校生のときスペースシャトル「コロンビア」初打ち上げを見て、宇宙飛行士を目指す。そんな野口聡一さんが1996年に572名の応募者から宇宙飛行士候補者に選ばれたとき、毛利飛行士は「身体的にも精神的にも、とても健康的でタフ」と絶賛した。

 今まで何度か野口さんにインタビューしているが、思い出すのは約4年前。宇宙飛行士になりたいという小中学生2人と話を聞きに行った。「つらかったり悩んだりしたときはどう克服して、また頑張ろうと思いますか」という中学生の質問に「宇宙飛行士の性格で大事なのは、クヨクヨしないこと。勉強とか部活でガクッとくることがあっても、気持ちを切り替えてもう一度挑戦することを心がける。心がけるっていうと妙にがんばったりしてよくないんだけど(笑)」とほぐしてくれるのが野口さん流。ご自分の気持ちの切り替え術は「車の中で大声を出して帰ること、子どもと一緒に遊ぶこと」と話してくれた。

 「タフさ」、「クヨクヨしない性格」が今、本当に彼を支えてんだろうなーと7月7日、宇宙開発事業団で行われた記者会見で野口さんの話を聞きながら思った。コロンビア号の事故から5ヶ月。仲間を失った悲しみから完全に脱してはいないものの、それを乗り越えて宇宙への挑戦を続けていこうとしている。シャトルが以前より安全な乗り物になるのは間違いない。リスクがゼロのものはない。リスクより宇宙から得られる恩恵の方が大きい。落ち着いて穏やかに野口飛行士は語り続けた。

 本人の飛行に向けての決意は固い。でもご家族は? 野口さんは3人のお嬢さんたちが「迷っているな」と感じたこともあったそうだ。彼女たちと正直に向き合うしかない。だから何が起こったのか、そして自分が何をやりたくて一生懸命なのか語り続けている。

 野口家の3人娘は日本宇宙少年団の情報誌「ジュニアサイエンティスト」おたよりコーナーの常連さん。バックナンバーには宇宙の絵、大きな木が笑っている絵。ロケットの横に「ぱぱ」と書いてあるイラストもあった。つい最近も3人から宇宙遊泳のハガキが届いたらしい。ぱぱの想いを受け止めて、さらに支えてるのは彼女たちかも。人類のため、と言うより一番近くの大切な人のために、宇宙に行って必ず帰ってきてね、野口さん。


野口宇宙飛行士記者会見
http://jem.tksc.nasda.go.jp/iss/ulf1/030707.html