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2003年 9月分 vol. 3
350ml缶をロケットで打ち上げ!?
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2002年8月アメリカネバダ州で行われたキャンサットのカムバックコンペに参加した東大メンバー。打ち上げ準備中。  10センチ立方の人工衛星・キューブサットは一発で成功したわけじゃない。その前に空き缶サイズの「CanSat(キャンサット)」で学生たちが格闘した経験があったから。

 キャンサットのきっかけは? 「1998年、ハワイで開かれた宇宙の日米学生会議の席上で、スタンフォード大学のトゥイッグス教授がコーラの空き缶を掲げて『衛星を作ろう』と。最初は本当にできるのかと思いましたが、とにかくやってみよう」と東京大学・中須賀真一先生は決意。


 翌年99年、第1回大会がアメリカ・ネバダ州ブラックロック砂漠で開かれた。そこは電気屋のオヤジさんや金持ちたちが自作のロケットを打ち上げる「ロケットの無法地帯」。「二日間で150ぐらい上げるかな。2段式の高度なロケットもあれば失敗して地面を這い回る(これをグラウンドシャークと呼ぶ)もあって、楽しいよ」。火薬の制限のある日本では考えられないダイナミックさ。このアマチュアロケットにキャンサットを搭載してもらい、高度4~5kmに打ち上げて分離、パラシュートで降下。東大や東工大など日本の大学生が毎年参加している。ただ飛ばすだけでなく、通信させたり落下のスピードをコントロールしたりと様々な「仕事」をさせるため回路は複雑。だが失敗しても回収して何処が原因かをつきとめることができる。

ロンチャーにセットされたロケットは、ロケット右側白いTシャツのオジサンの自作。このノリ、楽しそ~。  2001年からは中須賀先生の提案で、着陸の目標地点にどれだけ近く着陸できるか競うカムバックコンペを開催。(缶のサイズも直径6インチ×高さ10インチに拡大)。東大チームはGPS受信機を搭載し現在地・速度の情報を得て、パラセールをコントロールして目的地におりたち、2001年、2002年と連覇。しかも2002年は目標地からの距離45m! これにはプロマネの中村友哉君もオドロキ。前年の最高記録は650mだったため、先輩からは「50m以内に落とせたらヒルトンでディナーおごってやる」と言われていたほどだったから。

 2003年の大会は9月26日~28日、同じく米ネバダ州ブラックロック砂漠で行われる。注目は東北大チームの「キャンサットローバー」。着陸してからローバーで目的地に移動してくる。2002年大会ではパラシュートが開かず地面に激突したが、今年、敗者復活を目指している。

東大3班のうちプロマネ中村君(下列中央)率いる1班は強風にも関わらずターゲットから45mという驚異的な記録で優勝。  そして日本でもキャンサットのカムバックコンペが開催される! 群馬県板倉町で11月29日(土)に開催。気球で500mの高さから放出。大学生や社会人9チームが参加予定。アメリカみたいにロケットで飛ばせたら迫力あるけど、気球も一味違うのんびりムードが楽しめるかも。形あるものを作って、明確なゴールに向かうって清々しい。なんか私も作ってみたいぞーって気になります。


写真提供:東京大学中須賀研究室

キャンサット打ち上げ実験(ARLISS)
http://ssdl.stanford.edu/arliss/

大学宇宙工学コンソーシアム
http://www.unisec.jp/japanese/jpn/index.html