コラム
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2003年 9月分 vol. 4
手作り衛星ますますパワーアップ
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2003年6月に打ち上げられたXIが9月22日に送ってきた画像。  9月22日、私の携帯にEメールが。「オッ!」東大の小型衛星キューブサットXI(サイ)から久々に新しい地球の画像がとどいたゾ。きれい! 地球が三日月状の弧を描いていて、暗黒の宇宙との境界がくっきり。数日前にXIのデータ配信担当の中村友哉君から「地球を撮影させるコツをつかんだ」とメールをもらっていたが、このことだったのね。XIも日々成長しているな~。

 XIの画像には必ず「XIの気持ち」というコメントが添えられている。この日は「やっときれいな地球の画像をみんなに届けられるよ。こんな美しい星だから,大事にしなきゃね!」研究室のメンバーが順番に考えているらしい。XIのデータは、登録すれば携帯電話やPCに1週間に2回ほど送られてくる。登録者は1300名ほど。これまでたくさんの地球観測衛星が打ちあがったけど、画像を一般市民に直接送ってきてくれる衛星なんて無かったことを思うと、なんて素晴しいサービス。大学生の方たちは本当にご苦労様です。

 東大チームはXIに続く「キューブサット II」プロジェクトを進めている。そのミッションは画期的。地球の写真を写すのだが目標は分解能20m(地上の20mの物を見分けられる能力)、超小型の衛星で実現可能な最高レベルの解像度。望遠カメラと広角カメラの二つを搭載し、望遠カメラは伸展ブームの先にとりつける。衛星の見る向きを変えることだってできる。

 東大の中須賀真一先生は「地球観測衛星は分解能1mのものが既に打ち上げられていますが、1枚の画像は高いし、自分が本当に欲しいところの絵はなかなか手に入らない。それよりも分解能はもう少し落ちても、安くて簡単に写真が手に入った方がいい。『生きた地球儀』が実現できる。いろいろなビジネスに使えると思いますよ。」

パネル展開型多目的衛星PETSATのイメージ。パネルを折りたたんで打ち上げ(左)、宇宙で展開。パネルの大量生産で低コスト、開発期間の短縮を実現できる。  中須賀先生の話には人を引き込む「商人の」説得力がある。聞けば出身は大阪。大阪と言えば、東大阪市の町工場から人工衛星「まいど1号」を打ち上げようというプロジェクトが注目されている。東大中須賀研究室はこのプロジェクトに協力。XIのデータ配信担当の中村君たちが2002年、衛星設計コンテストで設計大賞を受賞した「PETSAT」のアイデアが「まいど1号」に使えないか、開発が進められている。東大阪市には宇宙開発事業団の産学官連携推進室が7月に関西サテライトオフィスをオープンした。「まいど1号」の打ち上げ目標は2006年。タイガースも優勝したことだし、がんばってやー!


XI データ配信サービス
http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/cubesat/mission/datadist/index.html