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-天文学が非常に発達した一方で、占星術の人気が衰えないのはどうしてでしょう。 渡部:科学は、人類が集団として知を蓄積する仕事だと思う。だから(占星術のように)個々人の心の想いは扱わないし届くものではない。でも人間は誰しも弱いものなので、色々な障害にぶつかったり病気になったりしたときに、指針やガイドラインがほしい。それが宗教で、その一つ手前のところに一種のカルチャーとしての占星術があると思うんです。 鏡:サイエンスは個人の悩みを直接解決するところを禁欲したから成り立ちました。一方、占星術は個々人と宇宙とのつながりをどうしても見出したい、自分の人生に意味を見出したいというニーズに応えているんです。占星術的な世界観や前近代の、伝統的世界観を支えているのは宗教的感受性だといえるでしょう。「人生にも宇宙に意味がある」と考え、それが宇宙の運行によって美しく表現されていると考えたら、それはもう占星術です。宇宙自体がある種の目的を持っていて、そこに生きる人間が理解できる秩序があって、その秩序は一人ひとりの人間の生き方とか社会の構造にまで及んでいると。だから悩んだときに、星の動きを参照すればおのずと光が見えてくるのだと。キリスト教社会では、宇宙は神さまがつくったものだから宇宙の構造を解き明かすことで神が理解できると考えていた。 |
鏡さんが占星術や心理学に入ったきっかけは?「子どもの頃からタロットなどのオカルトや占星術の世界が好きでした。ところが高校1年で『迷信』だと気づいた。合理的に考えたら星と地上の世界がつながるわけがない。でも当たるような気がするのは確かです。自分のなかに二人の自分がいて、占いが好きな自分が嫌いだった。そんな折にユング心理学と出会った。中身はほとんど同じなのに心理学は学問としてみなされ、占星術は迷信扱い。そこで二つをくっつけようと宗教学や心理学の勉強もしたんです。」 |

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-さて、そろそろ月の話題を。月は天文学や占星術でどんな存在ですか? 渡部:月は地球を回っている一つの衛星で、結構大きいために地球の進化に大きく影響を及ぼしています。たとえば地球の自転軸が安定して気候が安定したのも月のおかげだと言われています。満月のときに犯罪が多いとか、出産が多いとか、どこまでが本当でどこまでウソか、社会システムや医療が進みすぎた今は、その関連がよくわからないのですが、現在の暦などを筆頭に、月が一つの周期になっていることは確かですね。 鏡:昔の占星術的な世界観の一番大きな特徴は、月から上の世界と下の世界に分けられていたことです。地上から月までが「地上界」で、物事が生まれたり転んだりする不完全な世界。月の上の「天上界」は永遠普遍な完璧な世界。月は天上界の完璧な世界を地上界に伝える、中間の渡し舟の役割をしていたんです。また占星術の中では月も惑星なのですが、惑星の中で動きが一番早いので、色々なできごとのきっかけを作ると言われています。 |
鏡さんとお話するのを楽しみにしていたという渡部さん。その理由は?「鏡さんの本には占星術が当たらないとちゃんと書いてある。それは正直だと思ったんですね。普通の占星術師がどういう人かは付き合ったことがないからわからないけれど、おそらく占星術は当たるということを押し出しているのではないかと。それはフェアじゃない。当たるあたらないを含めて、鏡さんは一つ広い視野で見ておられると思ったから。 」
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-それでは月と人類、あるいは月と日本人の関わりはどうですか? 渡部:たとえばエジプトではシリウスが昇るのを見て一年の始まりを決めてナイル川の氾濫を予測して、種籾を撒いていた。砂漠の人たちは方向や暦を知る術として星を見ざるを得なかった。ところが日本は山紫水明の国だから、あたりの山や川を見れば自分の位置がわかるし、四季があるから紅葉すれば秋だとわかるから、暦のために星を見る必要はない。だからメソポタミアやエジプトの人たちほど星を見てこなかったんですね。 -鏡さんの著書で、生まれたときの月の形が支配する性格や運命の本がありますね? 鏡:ルネーションといって、20世紀に入ってからできた占星術の技法ですね。占星術はすべからく「○○みたいな」ということでロジックが展開します。宗教学的にいえば「象徴的思考」ということです。たとえば植物が育って枯れていくとか、人の一生とか、皆さんが体感するような、この世で起こる様々な変化のプロセスを月の満ち欠けと重ね合わせてみることができる。それを満月とか三日月とかいくつかのフェーズに分けて、たとえば「今は月が満ちていくような状態で」とたとえる。そこで単なる記号とドライに考えないで、月と同じようにみんなが生きているんだと考えることができるわけですね。
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