エレベーター・エスカレーター

INTERVIEW ミッション遂行の軌跡 INTERVIEW ミッション遂行の軌跡

アニメーションライティング誘導システム「てらすガイド」
ビル設備のマネジメントを、スマホでもっとスマートに。~ BuilUnity(ビルユニティー)~

近年、日本では商業施設、オフィス、住居など複数の機能が一体化した大型複合施設が急速に増加し、施設内の移動はますます複雑になっている。そのなかで「外国人や高齢者、車いす利用者など多様な施設利用者に的確に情報を伝達しなくてはならない」という課題があり、またツールである案内表示板や床面ステッカーには「表示内容を変更するたびに作成、貼り換えなどの作業が発生し、費用や手間がかかる」という問題がある。
そこで、それらの課題・問題を解決し、すべての人に快適な移動をもたらすべく開発されたものが「てらすガイド」だ。これは光のアニメーションを活用して施設内を誘導するアニメーションライティング誘導システム。
国際標準化も視野に入れた全く新しいサインの開発ストーリーをデザイン、ソフトウエア、ハードウエア、さらには営業部門のキーマンが語る。

  • 01プロトタイプへの評価に確かな手応えを感じて

    「地面に光の文字や図形を映して何かを伝えるというコンセプトは、自動車に搭載する機能として始まった研究でした」と語るのは、三菱電機デザイン研究所で5年以上にわたり車載器関連の研究を続けてきた坂田。近い将来、自動運転の普及とともにドライバー不在の運転環境が生まれるかもしれない。そのとき、安全を確保するためにも「発進します」「右に曲がります」「ドアが開きます」といった動きを周囲に対して事前に伝えることが求められるのではないか。それを、人の目にとまりやすいアニメーションの光によって実現できないだろうか──という着想が、アニメーションライティング誘導システム「てらすガイド」のスタートラインだった。

    その技術を建物内の誘導サインとして応用しようと考えたのがビル事業部。営業担当として、てらすガイドの実証実験とヒアリングを繰り返しながら、マーケティングを担当した成塚は当時をこのように振り返る。

    人とのつながりが
    いちばんの収穫です

    三菱電機(株)デザイン研究所
    産業システムデザイン部
    ビルシステムグループ 専任

    坂田 礼子

    「ビル事業部では建物内においてエレベーター・エスカレーターにより"縦の動線"を、セキュリティーシステムにより"横の動線"を支援しています。これらをより快適にご利用いただくうえで、アニメーションによる光のサインは非常に面白いと考えました」。

    アニメーションライティングを活用したサインの実現に向け、成塚が先頭に立って取り組んだのが実証実験だった。2017年のニュースリリース直後から各方面より問い合わせが舞い込んだこのシステムのプロトタイプを携え、成塚が最初に向かったのは某大型マンション。そこに、てらすガイドの試作機を5台、2週間にわたり設置させてもらった。気になるお客様からの評価は──。

    「こてんぱんにやられました。管理会社からは好評でしたが、てらすガイドを毎日見る住人の方からは低評価でした。対象とすべきマーケットを考え直し、不特定多数が利用する空港や駅向けに実証したところ、お客様から高い評価をいただき確固たる手応えをつかむことができました」。

    てらすガイドに最も古くから携わる坂田も、実証実験のチームに参加したメンバーのひとり。とくにサインの要となる視認性には頭を悩ませた。

    「実証実験では技術的な面でさまざまな課題が浮き彫りになりました。たとえば施設ごとによる見え方の違い。空間の明るさやフロアの色によって、視認性は大きく左右されます。また、ただ動かせばいいのではなく動かし方も重要です。ここは点滅させるべきではないか、矢印の見せ方に問題はないか…など、実証実験を通じて繰り返しブラッシュアップしていきました。また、これまでフロアに投影するシステムとしては天井にプロジェクターを据え付けるタイプが一般的でしたが、床に置いて横から投影することも、人影の影響を受けにくいという点で画期的です」。

  • 02天面に与えられた10度の傾斜の意味とは

    樹脂は生き物。
    その意味を肌で感じて

    三菱電機(株)稲沢製作所
    システム開発製造部
    コンポーネント開発課

    嶋江 聡

    てらすガイドの外形は幅406㎜×高さ856㎜×奥行171㎜。樹脂で成形された筐体を床に設置して光のアニメーションを投影する。この筐体の開発を担ったのが、稲沢製作所の嶋江だ。これまでビルマネジメントシステムの分野でセキュリティーシステムの開発などに携わっていた嶋江にとって、今回のミッションはすべてが初体験だったという。

    「てらすガイドにおいて、稲沢製作所として実績、技術のある板金とこの筐体サイズでは経験のない樹脂のどちらの素材を選択するかがまず議論に。結果、見た目の印象と形状の自由度の高さ、金型で安価に量産できることから樹脂に決まったのですが、その後も色や形状はどうするかという議論が果てしなく続きました」。

    色に関しては白と黒の2色が比較のテーブルに。社内アンケートの結果、一般的な建築物のフロアや壁面と馴染みのいい白に決定。一方、形状についてはこのような議論がなされたという。「ちょうど人が座れてしまう高さなので、座ろうと思わせない、あるいは荷物を置こうと思わせない工夫を施しました。それが、天面につけられたスラントです。背面から前面にかけて10度の傾きを与えたデザインを採用したのですが、そこに行き着くまでには20度、30度まで傾けたほうがいいのではないかという意見も。ただ、人目につく場所に置かれるものですからインパクトの強すぎるものは困る。思いきって三角形にしてはどうかという大胆な意見も同様の理由で却下されました」。

    安全性の確保も大きな課題だった。「実証実験からもわかったことなのですが、今まで世の中になかったものだけに利用者の好奇心を刺激してしまうんですね。"どこから光が出ているんだろう"と。万が一投影したサインの光源を覗いてしまうと非常に眩しいので、投影口付近のステッカーで注意を促しています。また、プロジェクターという重量物が筐体の上部にあるため、プロジェクターやテレビを手がけている三菱電機京都製作所に出向き、転倒防止策についてのノウハウを吸収しました。さらにはFMEAの手法により、故障や不具合が起きた際の対応も構成部品レベルで入念に検証しています」。

    嶋江が手塩にかけてつくり上げた筐体に生命を吹き込むソフトウエアの開発を手掛けたのが扇谷。金融、IT、セキュリティー、ビル関連など多種多様なシステム開発に携わってきた百戦錬磨の扇谷にとっても、光のアニメーションはもちろん初めての経験。とくに印象的だったのは"仕事の進め方"だった。

  • 03いつしか国際標準の技術になることを夢見て

    新鮮な経験と知見を
    得ることができました

    三菱電機(株)稲沢製作所
    システム開発製造部
    ソリューションシステム開発課
    専任

    扇谷 篤志

    「通常、モノづくりのセクションがデザイン研究所とコラボレーションする際は"我々の製品や技術に研究所のエッセンスを加える"という形になります。技術的に研究所は先を行っていますからね。ただ、今回のてらすガイドはデザイン研究所が開発を先行させていたので"研究所の製品に我々のエッセンスを加える"という形になりました。それが、ある意味とても新鮮でしたね」。

    扇谷が新鮮に感じたもうひとつの要素が技術の新しさ。「稲沢製作所ではあまり使わない新しい技術が採用されています。インターネットで調べたり、専門書を紐解いたりするなかで"こういった手法があるんだ"という気づきを得られたことは大きな収穫になりました」。

    前例のないソフトウエアを、わずか半年でまとめあげた扇谷。その努力と活躍に敬意を表するのが坂田。「当初、てらすガイドはソフトウエアを使用せずに運用する計画でした。それほど細かな調整は必要ないのではないかと考えていたからです。ところが実証実験を重ねるなかで、現場に応じた細かな調整や多彩なコンテンツが必要なことがわかりました。初期のプロトタイプに使用したソフトウエアはわざわざアウトソーシングして開発したのですが、扇谷さんが担当してくださるということで今後のさらなる改良もやりやすくなります。これからもよろしくおねがいします」という坂田に、扇谷が笑顔で頷く。

    国籍の違いやハンディキャップの有無にかかわらず、日本中が多くの人で賑わうであろう2020年。三菱電機が世界に先駆けて開発した"光のアニメーション"にも大きな注目が集まることが期待される。事実、今回の技術を世界標準にしようという動きが国家プロジェクトとしてすでに進んでいる。

    「三菱電機では国立研究開発法人 産業技術総合研究所と共同で、光のアニメーションを用いた動くサイン(ダイナミックサイン)に関する視認性や利便性に関するデータの収集・分析、さらには条件の定義などにより国際標準化を進めています。もちろん、てらすガイドも国際標準化提案中の規格に準拠したものです。日本から先行して海外へ発信することで、もっと多彩な動かし方を世界中で検討できるようになったら素晴らしいですね」と坂田。

  • 04プロジェクトへの想いと今後のビジョン

    プロジェクトの
    キーワードは「感謝」

    三菱電機(株)ビル事業部
    ビルシステム第一部
    第一課 専任

    成塚 勉

    最後に、一人ひとりにプロジェクトを振り返ってもらうとともに、今後への期待と希望を語ってもらった。

    嶋江:
    当社内で40年近くにわたり樹脂製品に携わってきた先輩が「樹脂は生き物だ」というくらい、温度や湿度の変化で5〜6㎜も伸縮する樹脂。この素材と向き合ったことは自分にとって大きなチャレンジでした。今後の理想としては、災害時の避難誘導にも役立つシステムになってくれたらいいなと。非常用電源の確保など課題はありますが、大きな可能性を秘めたシステムであることは間違いありません。ビル内の昇降機やロボットと連携してスマートビルでも活躍するなど、今後のさらなる進化に期待しています。
    扇谷:
    個人的には初めてデザイン研究所とコラボレーションさせていただいたことで、デザインに関する知見を得ることができたことに感謝しています。今後も継続的に協力し合えたら、より良いモノづくりを実現できることでしょう。てらすガイドという私たちの"共同作品"が、日本中、さらには世界中の人々の生活をより便利にすることができたらうれしく思います。
    坂田:
    扇谷さんの言う通り、私も"人とのつながり"が広がったことに大きな意義を感じています。社内の車いすバスケットボールの選手にご協力いただく際には総務部の方が仲介してくださり、METoA Ginzaに設置する際は宣伝部の方々にお世話になったり。これをきっかけに部門と部門、製品と製品のコラボレーションが活性化し、お客様へよりよいモノやサービスを提供していけたら幸いです。
    成塚:
    現状のベストは尽くしたうえで発売に至ることができましたが、まだまだ改良の余地はあると考えています。これからも改良・改善に努めていきたいですね。また、今回のプロジェクトのキーワードとしてお伝えしておきたいのが"感謝"という言葉。製品化が決まる前から実証実験に協力してくださったマンションや施設の方々、短い開発期間でここまで仕上げてくれたここにいる技術者たち、そして開発を全面的にバックアップしてくれた会社、プロジェクトに関係したあらゆる方々に感謝です。この気持ちをお客様へ還元できるよう、営業として全力を尽くします。

    光のアニメーションを用いた
    動くサインにより
    直感的で
    わかりやすい誘導や注意喚起を実現

    床面に投影する光のアニメーションにより、施設利用者が直感的に案内や注意喚起を理解することのできるアニメーションライティング誘導システム「てらすガイド」。初めて訪れた方や車いすの利用者に対して、トイレやエレベーターへの誘導をはじめ会場への案内など、多彩な用途にご活用いただけます。

    専用ソフトをインストールした
    タブレット端末などで
    サインの
    ビジュアルを自由自在に編集可能

    投影するサインは多彩なコンテンツの中から任意で選択・組み合わせ、施設管理者自身のタブレット端末により簡単に編集することができます。また、状況・時間に応じて表示を簡単に切り替えられる「スケジュール機能」や、他の設備と連動しながら効果的なタイミングで指定したサインに表示切替することが可能です。

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