Factory Automation

海外レポート

智能製造に向けた三菱電機の取り組み

2017年8月公開

「モノづくり」から、「価値の提供」へ。

消費者意識はモノからコトへ。今問われる製造業の進化。

 あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)を活用し、ここ中国でも製造業にサービス化の波が押し寄せ始めています。今、生活者の意識が、「モノ消費」から価値を重視する「コト消費」に変化していく中で、電子決済 "アリペイ" やシェア自転車 "モバイク" など、生活者のニーズを的確に捉えたサービスが急速に普及してきました。製造業においても、IoTを活用することでの生産効率や製品性能の向上、お客様の多様なニーズに対応しながら、大量に商品を製造する "マス・カスタマイゼーション" への対応など、「モノを作る」ことから「価値を提供する」ことへの進化が迫られています。

智能製造が目指す世界と製造業が直面する現状課題。

 智能製造発表前と後で、中国の製造業界の意識変化を感じています。これまでは、設備やロボットを入れれば簡単に自動化できるという発想が主流でしたが、その辺りの意識も確実に変わってきています。Made in Chinaの品質を向上させようという声や、自動化させて人件費を減らしたいという声は以前からもありました。しかし現在多くの企業で採用されているシステムは、IoT導入による自動化や省人化といった「モノづくりの効率化」の面を中心に推し進めており、実はそれだけでは製造業が理想とする状態にまでは到達できません。IoTの活用は本来、モノづくりの効率化にとどまらないものです。今、進めている自動化や省人化中心のシステムでは、中国の製造業がさらに発展するために必要な "大量生産から価値提供へ" の移行が難しいと感じています。

智能製造への鍵を握る、日本式の現場改善。

 そこで注目されているのが、日本式モノづくりです。現在導入が進んでいる欧州型システムは、パッケージに合わせて製造の現場を変化させることを前提としたソリューションですが、実際は取り組む企業ごとに開発・生産技術の成熟度合いや設備レベルもさまざまで、お客様ごとにニーズも異なるため、現場にとっては活用しにくいのです。そのため、 "もっと納得感のあるやり方はないか?" という発想でお話をいただく機会が増えてきた肌感覚があります。

 私たち日本式のソリューションは、製造現場のプロセスや方針をきちんと認識した上で、IoTのサイバー側を現場が向かいたい方向性に合わせて整備していきます。つまり現場を重要視する点が、現行システムとの明確な違いです。日本の製造業にはかつて、安かろう悪かろうの大量生産時代がありました。ところが長い年月をかけて、製造現場の技術者たちが絶えざる創意工夫・改善を積み重ねて経験を深め、実態に即してシステムを使いこなしていったのです。そうして培われた現場を重視する日本式モノづくりによって価値を創造し、世界に名だたるモノづくり強国に進化した歴史があります。

 さらに重要なのは、IoTはあくまでも手段であり、イコール智能化ではないということです。自分たちの考えている方向性とペースで進めること自体が智能化で、オペレーションをどうやって今の自分達に合う形に変えていくかが重要です。そのためには、オペレーションを回せる人材を育てる必要があります。最近では智能製造のオペレーションを進める人材育成についてアドバイスを請われるケースも多く、最近ようやく "サイバーだけではなく、人も大事" という風潮になってきました。我々のメッセージが浸透してきたのだと思います。トップダウンではなく現場から情報を吸い上げる、人材も現場で育てる。そんな日本式の現場改善が非常に重要です。

お客様と共に取り組む、三菱電機のソリューション。

 三菱電機が一世紀近くに渡り培ってきた知見を活かす智能製造ソリューション「e-F@ctory」は、2003年から既に展開しており、世界で約180社、7,300件超の導入実績があります。このソリューションは、IoTを活用したお客様の現場レベルの課題抽出、解決、競争力強化をお手伝いするといった実質面におけるアプローチに基づいています。つまり、お客様が自分の課題を発見する手助けをしながら、一緒になって課題を発掘し、さらに、 "その課題はなぜ起こっているのか?" を定義してあげることで具体的な解決が生まれます。長年に渡って現場主義でモノづくりに取り組んできた私たちだからこそ可能な、ナレッジベースの現場改善コンサルティングです。同時に進めているのが、エネルギー使用最適化によるトータルコスト削減。「省エネと言うとエネルギーを使わないことと発想しがちですが、実は違います。生産に合ったエネルギーを使っているか?そこが大事なのです。例えば環境対策のために安易に環境装置を入れたところで、本当はエネルギーを無駄にしているかも知れません。最適化はトータル的に見て初めて分かります。それは、工場全体のマネージメントも同じです。製造も、環境も、エネルギーも、トータルで見た時に一番良い方法論を提案出来ているかがポイント。「必要な時に、必要な場所で、必要な分だけ使う」、この考えをすべての面において実現するのが、私たちの提供するソリューションです。

モノを売る製造業から、価値を提供する製造業へ。

 中国は新たな国家像へ向かって歩み始めています。そんな中、今後、中国製造業界の発展に貢献をしていく上で、私たちにどういう応え方ができるのか。これを事業軸ではなくお客様目線で共に考えていかなければいけない。一番のポイントは、製造業の現場の課題を発掘し、その課題に共に向き合い、モノを売る事から付加価値を提供する事に変えていくことです。製造業が、量から質、そして質から価値の時代へ進む中、智能製造への貢献を通じて、私たちは中国社会と経済の発展を下支えしていきます。

Profile

富澤克行 Tomizawa Katsuyuki

三菱電機株式会社執行董事中国総代表
三菱電機(中国) 有限公司董事長兼総経理
1983年三菱電機株式会社入社。2017年3月より現職。
2000年から中国で自動化と智能製造を積極的に推進。
2008年からは南京工程学院客員教授にも就任。

Topics

三菱電機の智能製造ソリューションモデルラインが、価値提供を実現する。

三菱電機は、日本の先進製造ソリューションを実際の生産現場で見てもらうために、常熟市と大連市の自社工場をe-F@ctoryモデル工場として開放しています。

また最近、同じ常熟市のイノベーションセンター内にも、先進のe-F@ctoryモデルが体験できるショールームがオープン。地域産業活性化のための情報発信基地として期待されています。

あなたの工場の課題を私たちにお任せください。

三菱電機は、FA技術とIT技術を活用し、開発・生産・保守の全般にわたるトータルコスト削減と品質向上に貢献してまいります。

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