海外レポート
中国工程院主催の学術報告会で三菱電機が招待講演
2017年11月公開
学術報告会を主催した工程院は、中国の技術分野を代表する学術研究機関です。中国は最高国家行政機関の国務院を筆頭に個々の政策を担当する部があり、そのうち工業政策を担当するのが工程院の上部機関である工業情報化部です。工程院は工業情報化部の中で具体的な政策の企画立案を担っており、各分野の専門家である約821人(2017年時点)の院士がさまざまな政策の提言を行っています。
中国では製造業高度化の国家プロジェクト智能製造が進行中です。智能製造は、従来「製造大国」として認知されてきた中国製造業を「製造強国」に発展させ、製造の量だけでなく質の面でもグローバルで先頭に立つことを目指した計画です。計画は国務院の中に設けられた「国家製造強国リーダチーム」を中心に進められており、工程院はそのチームの諮問機関としてご意見番的役割を担っています。2025年を一つの区切りとしながらも、その後も2035年、2045年までロードマップは続いており、約30年にわたる壮大な国家プロジェクトです。
智能製造実現へのキーワードの一つが、情報化と自動化を融合させたスマートなものづくり「智能製造」です。9月28日に北京で行われた学術報告会は、その智能製造の進め方について、工程院のほか大学や企業、研究機関などの関係者約180人が集まり、最新情報の共有や議論を行ったものです。ビッグデータやクラウド、AIなど智能製造の実現要素についてさまざまな意見交換を行った今回の学術報告会に、主催者から招待を受けて参加したのが三菱電機です。
三菱電機は日本だけでなく中国でも、FAとITを融合させたソリューション「e-F@ctory」でものづくりの高度化を支援しています。IoTを活用した次世代のものづくりが業界で注目されるようになる以前の2003年から、数多くの実績とノウハウを積み上げているため、智能製造を進めたい中国の製造業からも大きな期待を受けています。智能製造は単なる情報システムの活用だけでは実現できず、現場の実態を踏まえた情報の取捨選択や活用方法の確立など全体設計が欠かせず、そこに三菱電機の長年の経験が有効と認識されているからです。そのため工程院を始めとした中国政府と密接な協力関係を構築しており、2017年7月に江蘇省常熟市に開設された中核拠点「常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンター」では、協力ベンダ各社の中で最大規模の展示スペースを与えられています。
中国の製造業を主導する工程院が主催する今回の学術報告会に三菱電機が招待されたのは、その一連の背景を踏まえたものです。招待を受け、三菱電機は品質やリードタイムなどでグローバルでも高く評価されている日本のものづくりの最新動向を提供することにしました。
現状のプロセス整理の重要性を強調
学術報告会では三菱電機の幹部ほか関係者が講演を行いました。まず常務執行役FAシステム事業本部長の宮田芳和は、次世代のものづくりを含めた日本の産業政策や、その背景にある日本の製造業の現状や期待、さらにその期待に応えるために三菱電機が提供するソリューション「e-F@ctory」を紹介。併せて三菱電機の自社工場での事例も紹介し、e-F@ctoryにより自動化を進めながら生産性や品質などの向上を果たしていることを説明しました。

学術報告会で講演する常務執行役FAシステム事業本部長の宮田芳和
続いて情報技術総合研究所部長兼主席技師長の石川泰からは、智能製造を実現するための要素の一つであるAIについて、三菱電機社内での開発動向について紹介しました。三菱電機は1981年にはAIを研究する部門を設けるなど、AIの可能性にいち早く注目。日本国内だけでなく中国にも研究開発拠点を置き、大学などとも連携しながら研究を進めていることなどを説明しました。ものづくりへの適用の一つには機器の故障診断があり、AIによる統計解析で機器の故障をいち早く見つけ出す機能を確立し、FAの基盤や現場の機器のライブラリに搭載していることなどを紹介しました。
また同社執行役員中国代表で三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の富澤克行からは、三菱電機から見た中国製造業の課題を投げかけると同時に、e-F@ctoryによる解決策を提案しました。富澤は、中国の製造業では現状のものづくりのまま情報化や自動化に取り組む傾向がある点を課題として指摘。投資回収に時間がかかるだけでなく、部門間連携が進まず、手動でのデータ修正が残って効率化が進まないことがあるとしました。富澤は現状の業務プロセス整理と将来のシステム像を描いた上で、設備や情報系の導入で智能製造を追求する必要があるとし、そこにe-F@ctoryが持つノウハウと実績が貢献できることを強調しました。
三菱電機からはこの他にも3人が講演しています。名古屋製作所FAシステム部統括部長の都築貴之は2017年春に発表した統合基盤「FA-IT Open Platform」 を紹介しました。FA-IT Open Platformは生産現場からあらゆるデータを収集し、アプリケーションで分析して提供する環境を作るための共通基盤です。データでリアルタイム性が要求されるものは現場に近いエッジコンピューティング領域で分析・フィードバックする機能や、ITとのシームレスな連携で管理部門や社外パートナともつなげて、サプライチェーンやエンジニアリングチェーン全体での最適化を可能にする機能などを用意します。

執行役員中国総代表兼三菱電機(中国)有限公司董事長兼総経理の
富澤克行は、中国製造業の現状を踏まえた智能製造実現方法を提案
インフォメーション事業本部システム統括事業部IoT推進グループの菊池雄希は、自動化から智能化、さらには自律最適生産までのロードマップと進め方を提案。三菱電機全体の生産技術を統括する生産技術本部の次長の大谷真博は、三菱電機自身の改善活動がe-F@ctoryでどのように進められてきたかを紹介しました。改善を通した人材育成も行っており、その成果は中国の拠点にも導入されています。
学術研究者から現場の技術者まで、中国の製造業に携わるあらゆる関係者が集まる学術報告会で、三菱電機という海外の企業が単独で講演の機会を得られたのは、三菱電機の製造業向けソリューションが智能製造実現に有効と認識されていることに他なりません。三菱電機はその期待に応えるために、日中の国境を越えて積極的な支援を行っていく方針です。
- 要旨
- 「モノづくり」から、「価値の提供」へ。