Factory Automation

海外レポート

日本流のものづくりが智能製造を実現へ近づける

2017年12月公開

テクノロジーの進化が起こした世の中のパラダイムシフト。

 昨今、ますます広がるIoT(インターネット・オブ・シングス)ですが、2020年までには200億個を超えるモノがインターネットでつながると予測されています。家電や自動車、靴や洋服まで、あらゆるモノがネットでつながっていく時代に突入しているのです。今やデパートやコンビニ、街中の屋台までもが、スマートフォンで決済できる等、既に私たちのライフラインになっています。自転車シェアリング、タクシーの予約や出前サービス等も爆発的に広がり、そのスピードは私たちの想像以上です。全てがインターネットでつながる社会では、スマートフォン一つで色々なことができる。モノというよりは「そのモノで何ができるのか?」という“価値”を重視する意識に移り変わり、個人のライフスタイルも激変しています。そして昨今では、多品種変量生産が始まる等、製造業でもその変化が顕著に現れてきました。

  • ※アメリカの調査会社ガートナー社による予測

技術でいかに変革していくか?それが今、製造業の重要な課題。

 智能製造を掲げて、AIやIoT等の先端技術を活用し、製造大国から製造強国へと邁進している中国も、今取り巻いている環境は必ずしも平坦ではありません。むしろ状況は非常に厳しい。対外的には、欧米との技術競争があり、新興国とは価格競争を強いられ両挟みされているのです。また対内的には、一時の2桁成長から安定成長という新常態へ。対外的と対内的の両面から鑑みても、やはり今までの量から質への転換は必至です。その観点からも、世界で戦える中国ブランドを確立していくために、IoTやビッグデータ等の「技術をいかに取り入れ変革していくのか」ということが、製造業が今考えるべき重要な課題です。

 そんな中、ものすごい早さで智能製造があらゆる企業に展開されています。ただ、私たちはここで「システムを導入さえすればそれで智能化されるのだろうか?」という大きな疑問を感じています。生活者が「スマートフォンを持って何ができるのか?」という“モノより価値”を意識し始めたのと同様に、そもそも智能化を進める目的や価値は何なのか?といった議論がまず必要なのです。実際、情報システムを導入したものの、なかなか効果が上がらないという企業も多い。企業と一言でいっても、業種、地域差のほか、国有企業もあれば民間企業や外資系企業もあり、形態は様々です。発展レベルも生産レベルも異なり、闇雲に情報化を進めると、逆効果にもなりかねません。

智能化を実現する、現場起点の製造ソリューション。

 智能化の実現には、各企業自身の製造現場のレベルがどのステージにあるのかと、直面している真の課題を認識し、その上で取り組むべきステップを、運用や管理のレベルアップ、データの利活用と業務プロセス整理、智能製造新技術の導入に分け、段階ごとに改善点を具体化していくことが必要です。また、活用する人や目的が異なる経営層と製造現場では、必要なデータが変わる事を意識しなければなりません。経営にとっては、経営分析、マーケティング、商品開発に役立つデータが必要であり、製造現場にとっては設備の稼働や品質等に関するデータが必要となります。特に、常に変動する製造現場では、リアルタイムにデータを取って分析することで初めて情報の価値が出るのです。このように、企業のレイヤーごとに必要なデータを整理し、階層ごとに有効な活用法を考えることが重要です。製造現場のリアルタイムなデータの中から生産ラインの合理化等を行うために必要なデータを見極めた上で、情報システムを導入して全体の生産設計を考えていくというように、同じ情報システムを採用するにしても、こうしたステップ・バイ・ステップで進める方が、今の中国企業の現実に合っています。逆に、情報システムの導入を一気に行い、智能化を実現させようとすることは、単に理想的な話であり、それが原因で手段を固定化され、後の改善が妨げられる可能性も大いにあります。つまり、技術を導入する前の段階で、常に動いている現場からリアルタイムで情報を吸い上げながら、全体を最適化していく。そうすることで、課題を問題化して真の原因を見定められ、智能化へ向けた業務設計が可能になるのです。

数々の実績を積み重ねてきた、価値を生む三菱電機の智能製造。

 三菱電機では、智能化実現のために、お客様のパートナーとして現場からのアプローチを重視することにより、段階的に智能化企業へと成長できるようサポートしています。例えば、中車集団傘下のある重要な工場に対してまず始めに行ったのは、設備の導入ではなく、生産効率改善コンサルティングです。当初は、リードタイムが長い、中間在庫が非常に多いといった課題を抱えていたのですが、現場を診断した上で、まず改善できるポイントは何か?真の原因はどこにあるのか?を洗い出し業務設計していきました。その結果、設備を導入する前にコンサルティングサービスの提供のみで、稼働生産効率が約11%向上し、納期短縮も約17%達成と、かなり改善できたのです。そして現在は、智能化設備の導入ステップに移行しています。中国を広く見渡せば、まだまだこのようなお客様の方が大部分を占めているというのが、私たちの実感です。

日本式モノづくりが中国製造の躍進を加速させる。

 一世紀近くに渡り培ってきた知見を活かし、三菱電機はFactory Automation技術とIoT技術を活用した智能製造ソリューション「e-F@ctory」を提供しています。2003年から既に展開しており、世界で約180社、7,300件超の導入実績がありますが、私たちがこだわるのは、生産現場を起点とした経営改善です。逆に、サイバー空間でデータを使い、情報系をパッケージ化して現場を押さえるトップダウン型システムでは、効果が実感できないという企業が後を絶ちません。一方、私たちはお客様と向き合い、現場の本質的な課題を共に見つけて、そこを整理した上で情報系とつなげていく。その結果、モノを売ることから付加価値を提供できる企業へと変えていくのが三菱電機のやり方です。最近では、中国各業種のトップ企業や政府関連の方々からも私たちの工場を見て頂く機会が大幅に増え、日本流のやり方が、企業を智能化させていく過程で非常に有効であることが認知され始めていると感じます。中国の製造業が、量から質、そして質から価値の時代へ進む今、智能製造への貢献を通じて、私たちは中国社会と経済の発展を下支えしてまいります。

Profile

王 堅 Wang Jian
三菱電機自動化(中国)有限公司 総裁

1994年三菱電機株式会社入社。
2005年三菱電機 自動化(中国)有限公司 副総経理に就任。
三菱電機株式会社 国際本部 中国室室長などを歴任して、
2017年4月より現職。

Topics

智能製造の実現に向けて、産官学で連携する三菱電機の貢献。

三菱電機は、中央政府関連部門及び機構と連携して智能製造の標準化を推進するほか、江蘇省や広東省等の地方政府と共に、地域の智能化も後押ししています。さらに、トップ企業へも智能製造を働きかける等、点から面へと活動を展開しています。また、智能化に向けた人材育成のための産学連携にも積極的です。中国大手の教育機材メーカーと共同で行った有名大学への実験室立ち上げや、大学生ロボットコンテストの実施等、様々な活動で中国製造の智能化に貢献しています。

あなたの工場の課題を私たちにお任せください。

三菱電機は、FA技術とIT技術を活用し、開発・生産・保守の全般にわたるトータルコスト削減と品質向上に貢献してまいります。

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