Round-trip Letters
カヒミ・カリィ × Hello,AI Lab

【 Vol.08 From Hello,AI Lab 】
社会課題とAI

それは、文通のようなメッセージ。以前からAIの可能性に注目していたアーティスト、カヒミ・カリィさんと、三菱電機の研究者集団「Hello,AI Lab」が、AIについて語り合いながら、発見や気づきをやり取りするコラムです。

わたしがお答えします
  • 回答者

    Hello,AI Labの研究員

  • 特徴

    アラフォー、女性、現在子育ての真っ只中、お世話好き、ちょっとおせっかい、幼少期より科学技術に興味あり。少々ピアノを嗜む。

  • 注意

    研究所の意見を代表しつつ、若干の私見をはさみます。

1 新しい価値と捉え方

国民性の違いに関心を

カヒミ・カリィさま

お返事、ありがとうございました!

前回のレターもとても興味深かったです。特に、新しいものに対する抵抗感の有無や、物事を慎重に捉えるか、またはシンプルに捉えるかといった感覚の違いには国民性があるというお話に、なるほどと思いました。

責任感が強く、真面目で丁寧な日本人のこの国民性に、私は誇りを感じることがあります。ただその真面目さ、丁寧さが、良い方向に出ることもあれば、足枷になることもあるのかもしれませんね。2020年の春、NYのロックダウンの時にあっという間に公立校がリモート授業に切り変わったというお話が前回のレターにありましたが、日本では同じ時期、多くの学校関係の方々がリモート授業の準備に大変苦労されていました。
それぞれのよさを認め合いながら、これからも、国民性の違いには、関心を持っていたいと思いました

2 人を越えて支えるAI

自動運転とシンギュラリティ

さて、いただいたご質問にお答えさせていただきます!
これまでより未来感のある、さらに突っ込んだ内容になってきましたね。

【質問1】

先日、自動運転車が実用化される日が近いとのニュースを読んで、まるで夢のような話だと驚きました。将来的に、自動運転車が交通のメインになる時代が本当に来るのでしょうか。具体的にそれはどんな感じになりそうなのか教えていただけたら嬉しいです。

自動運転車は遠い未来の話ではなくなってきていますね

社会課題や時代のニーズに合わせて、この分野の研究開発は急速に進展してきました。
ところで、一口に自動運転と言っても、自動運転には、レベル0~レベル5の6段階があることをご存じでしょうか

レベル 概念 運転手 走行領域
0

運転の自動化はなく、全て人が運転する。

人の運転が必須

1

人が運転する。ただし、特定の条件下では、「ハンドル操作」もしくは「加速・減速」のどちらか一方を車が行う。

人の運転が必須

限定的

2

人が運転する。ただし、特定の条件下では、「ハンドル操作」に加え、「加速・減速」のどちらか一方もしくは両方を車が行う。

人の運転が必須

限定的

3

限定された環境(ハイウェイや渋滞など)において、車が自動で運転する。ただし、人の運転は必須で、車が自動で運転できないと判断したときにすぐに対応する必要がある。

人の運転が必須

限定的

4

限定された環境(ハイウェイや渋滞など)において、車が自動で運転する。人の運転は必須ではない。

人の運転は
必須ではない

限定的

5

完全に車が自動で運転する。

人は不要

限定なし

技術面だけを考えた場合、一般的には2030年ごろにレベル5が実現するのではないか、と言われているようです。では、レベル5が実現した社会を想像してみましょう。

運転をする必要がないので、ゲームをしたり、映画を観たり、食事を楽しんだりしている間に、目的地に到着します。乗っている人の好みや気分、スケジュールに合わせて、車の方から楽しく時間を過ごせるように提案してくれるかもしれません。
「今日は晴れていて気持ちのよい気候なので、海岸沿いを走りましょうか」
「少し時間があるので、おいしいパフェでもどうですか」
みたいな感じですね。

では、運転すること自体が楽しみな人はどうでしょう?そういう人にとっても、楽しく安全に運転ができる社会が来るといいなと思います。そんな自動運転レベル5が実現する社会は、未来のようでもあり、ある意味ではまるで過去のようでもあるといえるかもしれません。車がなく、移動手段が馬車だった時代。乗る人は目的地を告げ後部の座席に腰を下ろす。そして目的地まで運んでくれるのは、馬と操作する人(御者)。なんだか、自動運転レベル5が実現する社会との共通点がある気がします。

さて、話を元に戻しましょう。自動運転はレベル0~5の6段階があると先程お伝えしましたが、2021年5月現在、レベル2やレベル3の機能を持つ自動車が発売されています。どのレベルの自動運転車を公道で使用してよいかは、各国の法律が定めています。そして日本ではついに、2020年4月、レベル3の自動運転機能を持つ車が、公道を走れるようになりました。また、レベル4、レベル5の実現に向け、研究開発は進められています。

自動運転技術の発展は、多くの社会課題を解決します
たとえば、これから迎える高齢化社会において、足腰が弱ったり、認知力や判断力が衰えたりといった症状が出てきた方でも、活動範囲を狭めることなく生き生きと生活するために、自動運転技術はなくてはならない存在になっていくでしょう。まさに、前のレターでカヒミさんがおっしゃってくれていた「杖のような役割」のようですね。

【 質問2 】

AIを学んでいて、シンギュラリティという言葉があるのを知りました。シンギュラリティは、AIなどの技術が自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になる時点を指すんですね。それが実際に来るかは両説あるようですが、もし来た場合、私達の生活は具体的にどんな変化があると言われているのか気になりました。良い点と懸念する点の両方あると思いますが、娘が大人になった時のことを思うと特に気になって…。

まず、シンギュラリティとはどういうものかについて見ていきましょう。

シンギュラリティとは、アメリカの人工知能研究者である、レイ・カーツワイル博士が提唱する概念ですね。人工知能が仮説を立て、自分で実験をし、自分で実験結果の答え合わせをするようになったら…?きっと人工知能は自分自身で急激なスピードで賢くなり、人間を追い抜き、人間がその先の未来を見通せなくなってしまうのではないか、と

カヒミさんのおっしゃる通り、シンギュラリティが実際に来るかは両説あります。現状のディープラーニング技術だと、人工知能がいくら高性能になったとしてもシンギュラリティには程遠いという意見の研究者が少なくありません。一方で、このまま人工知能が進化し続けると、人間を追い抜き、シンギュラリティに到達する、そう考える研究者たちもいます。
シンギュラリティがもし来た場合、私達の生活は具体的にどんな変化があるのかというご質問をいただきましたが、シンギュラリティの先の未来を正確に見通すことは、誰にもできないのです

ただ、人工知能が多くの社会課題を解決する切り札として大いに期待されているということは事実です。例えば人工知能は、高齢者や障がいを持った方の話し相手になったり、困ったことがあったら支援をしたりといった役割を担っていくかもしれません。質問1つ目でもご紹介させていただきましたが、高齢化が社会課題である日本のような国では特に、自動運転車は必要不可欠な存在となることでしょう。

シンギュラリティの先の社会が見えなくても、実際には、人工知能の開発が止まることはないと思われます
人工知能自体には、悪意はありません。たとえば、包丁は凶器にもなりますが、お料理には欠かせない道具です。包丁をどう扱うかは人間ですよね。同じように、人工知能にどういう命令をくだすのかも人間です。ですので、今こそ人間の考え・振る舞いが問われる時でもあります。今一度、人間にとって大切なものについて考える時なのかもしれません。

さて以前のレターで「AIに関する7つの原則」を紹介させていただきましたが、「アシロマの人工知能23原則」というのもあります。これは2017年1月、カリフォルニア州のアシロマで開催された会議で発表されたもので、人工知能を開発するにあたって守るべき原則が定められています。アシロマの人工知能23原則では、倫理、安全、責任、利益、プライバシーなどの問題や対策について述べられており、世界中の研究者や著名人など3000人以上が署名しています。このことからも、いかに多くの人が、人工知能の開発が人類の幸せに欠かせないものであり続けることを願っているのか、ということが分かりますね。

3 家事・育児・語学のAI

生活との付き合い方について

今回は、より将来や、社会課題に対しての話題が多くなりましたね。
人工知能が未来にどんな形で共存していくのか、私達も慎重に、ワクワクしながら向き合っていきたいなと思っています。

さて、今回は、身近な生活におけるAIとの付き合い方・要望についてお聞きしてみたいと思います。

カヒミ・カリィさまへ

  • 【 質問1つ目 】

    今、掃除機やエアコンなど色々なものに人工知能が搭載されていますが、家事・育児をするにあたって「ここはもうちょっとAIを使って自動化できたらありがたいのにな」と思うところはありますか?

  • 【 質問2つ目 】

    仮にAIが自動化してくれるようになったとしても、ここは自分でやりたいなと思うところはありますか?

  • 【 質問3つ目 】

    前のレターで、「AIが語学の勉強を助けてくれたら」とおっしゃっていましたね!語学の勉強は、カヒミさんにとって楽しいものですか?もし、AIが完璧に、しかもリアルタイムに翻訳してくれる時代が来たら、どんな風に感じられますか?それでも語学の勉強を続けて、自分でできるようになりたいと思いますか?

Hello,AI Labより

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