Round-trip Letters
カヒミ・カリィ × Hello,AI Lab

【 Vol.11 From k.k 】
人と暮らしとAI

それは、文通のようなメッセージ。以前からAIの可能性に注目していたアーティスト、カヒミ・カリィさんと、三菱電機の研究者集団「Hello,AI Lab」が、AIについて語り合いながら、発見や気づきをやり取りするコラムです。

1 歴史ある技術

進化の背後にある研究者の思いに触れて

Hello,AI Labさま

こんにちは!お返事どうもありがとうございます。

前回のお手紙で、ディープラーニングの基本構造の一つを40年以上も前に世界に先駆けて考案し「ディープラーニングの父」と呼ばれている、福島邦彦さんという方の話をお聞きして、さっそく福島さんのインタビューや人工知能の基本、歴史などについての記事などを拝見しました!

初心者の私が理解するには難しい、専門的な内容でしたが、AIを支える技術の一つであるディープラーニングのもとになっている人工ニューロン(脳機能の特性を模倣した数理モデル)の研究が、なんと1940年代から始まっていたと知って驚きました。21世紀になってから発展した印象がありましたが、実はとても長い研究の歴史があるのですね。

AIはとても難しい技術ですし、人間的なものとは対照的でメカニックなイメージがありますが、その技術の発展の背後には、実はその可能性を長期に渡って信じ続けた研究者の方々の熱い思いがあったのだと知って、難解な技術がなんだか身近に感じられました

2 こんなAIがあったら

ファッション、教育、年の重ね方

では、ご質問にお答えさせていただきますね。

【質問1】

ファッションにAIを活用する場合、どんな活用の仕方が理想的ですか?

これまで、撮影などのお仕事でスタイリストの方に服を選んでいただく機会がたくさんあったのですが、私の好みや体型などを参考にして選ばれる服に、いつもうっとりしたり感激したりしていて、本当に毎回ワクワクしています。自分では選ばないようなタイプのものでも、着てみたら意外に似合っていたりすることも多くて、自分はこういう人、なんていう思い込みに気付いてハッとすることも。服を選んでもらうことは、楽しいだけではなくて、新しい自分を発見する貴重な機会にもなっています。

また、ライブや音楽関係の取材の時は私服のことが多いので、合いそうな服を自分で探すこともあるのですが、こんな感じの服が欲しいな。と思って、お店を巡ってもなかなか見つけられず、途方に暮れることがあります。こんな感じの服が欲しいなという写真やイラストなどをAIに見せて、AIがそれを探してくれたらすごく助かるうえに、素敵な服を発掘できてとても楽しそうです!AIとファッションはとても相性が良さそうですね。

【質問2】

教育の現場にも、どんどんAIが活用されることについて、期待や不安があれば教えてください!

教育の現場でAIがどんどん活用されそうで嬉しいです!とても期待しています

というのも、11歳になる娘が宿題をしている時など気になることが色々あるんです。たとえば、本当は宿題というのは、良い点数を取ること自体より、学習したにも関わらずまだ理解できていない部分を確認して、それを子供がきちんと理解できるように促すことが大切なのではないかと思うんです。でも実際はなかなかそこまで行かずに、担任が採点をしてそれを記録する、というところで止まってしまっている事があります。先生も忙しいので子供一人一人に細かく対応ができないまま、次の授業に進んでしまうのだと思うのですが、先生も子供も”何が分かっていないか分かっていない”という状態は良くないと思うんです。

たとえば、宿題の採点にAIを使うことによって、不正解だった部分をクリックすると正しい答えの説明を受けることができたりしたら、子供はその時点で理解できるようになるかもしれません。また、どの問題(質問)を子供に与えるべきかも、それぞれの子供の得意不得意を具体的に把握することでより的確になりますし、学習効率がもっと良くなるのではないかと思います。子供の不得意な部分にフォーカスして学習させたり、また得意な分野はエキストラの質問を与えて好奇心を促したりなど、AIを活用することによってそれぞれの子供に合ったカリキュラムができるのではないかと期待が膨らみます。先生も採点などの手間に追われなくなる分、各生徒の学力や学習傾向などをもっと把握して、一人一人に丁寧に対応する時間を作れるようになれたら素晴らしいと思います。

AIを活用することで不安な部分は、学習の道筋をAIに与えてもらうばかりだと能動的に考える力が衰えてしまうのではないかということなどでしょうか。子供自身が疑問を持って答えを知ろうとしたり、自ら学ぼうとしたりする意思などもやはり大切ですよね。その部分も上手にフォローできたら、教育はもっと進化していけるのではないかと思います。教育の現場でこれからどんどんAIが活躍することを考えるとワクワクします!

【質問3】

カヒミさんにとって理想的な年齢の重ね方に、AIを活用できそうですか?もし活用できるとしたら、どんなやり方がありそうですか?

年齢の重ね方とAI、そういえば今まで考えたことがなかったのではっとしました!面白い質問ですね。まず私にとって理想的な年齢の重ね方はどんな感じかな…と考えてみました。

実は私が憧れる人は昔からあまり変わらなくて高齢の方が多いんです。その中でも私の祖母は特別に私の憧れでした。私の周りにも素敵な年配の方が何人もおられるので、歳を重ねる事はポジティブに受け取れていると思います。私が素敵だなと思う方々に共通しているのは、好奇心が旺盛で日々の生活の小さな楽しみを見つけるのが上手なこと、老化や病気などに対しても受け入れる姿勢が大らかなこと、どんな時も自分のことだけでなく家族や友人、社会、世界の問題を気にかけていること…まだまだたくさんありますが、人生を最後まで大切に過ごそうという美しい姿勢が感じられることかもしれません。AIがそこに寄り添ってくれることで、そんな好奇心や楽しさをますます見つけることができたり、それから長い人生の中で逃げることのできない悩みや悲しみ、切なさなどの精神的な部分も、AIならではのヒントをくれることで助けになってくれたら、と思います

3 研究者の方々へ

人や世界、疑問に思っていることについて

いつも私の素朴な疑問に、とても丁寧に説明をしていただけて嬉しいです。どうもありがとうございます!今回もどうぞよろしくお願いします。

Hello,AI Lab さまへ

質問が3つあります。

  • 【 質問1つ目 】

    AIを研究しようと思われたきっかけを教えていただけますか?インタビューなどでミュージシャンになった理由を聞かれることがあるんですが、AIという新しい分野に興味を持たれることは音楽よりも特別な感じがして、とても興味深いです。

  • 【 質問2つ目 】

    これから世界でAIが活用されることで、人間以外の生物(動植物や菌類など)にどんな影響があると思われますか?

  • 【 質問3つ目 】

    AIは生活を便利にしてくれたり、身体的な活動を助けてくれたりしますが、私達の精神的な部分の支えになることもできますか?たとえばカウンセリングなど、私達のメンタルを扱うことはとても繊細ですが、逆に感情的にならないAIだからこそ得意な部分もあるのではないかと気になりました。

k.k より

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