事業等のリスク

第152期有価証券報告書(2022年度)より

三菱電機グループは、海外向け売上高比率が5割超を占め、幅広い事業分野で「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を目指しています。また、顕在化した各種コンプライアンス事象を真摯に受け止め、内部統制システムの改善等に取り組んでいます。

事業の遂行にあたっては、様々な要素が三菱電機グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。具体的に三菱電機グループの財政状態及び経営成績や、投資家の判断に影響を及ぼす可能性がある要因のうち、主なものは以下のとおりです。

視点1

地政学的リスクの高まり

サプライチェーンの混乱

サイバー攻撃等の増大

①地政学的リスクの高まりによる社会・経済・政治的混乱の影響について

ウクライナをめぐる国際情勢は、欧州を中心とした地政学的リスクレベルを一変させ、社会情勢を不安定化させるとともに、世界経済の回復に対しても減速をもたらしています。また、米国・中国の緊張関係の高まりなどにより、企業にとって予見困難なリスク顕在化の可能性が増しています。

三菱電機グループは、社会インフラから家庭電器まで広範な領域で事業を展開し、海外向けが売上高の5割超を占めています。また、日本国内向けの売上には国内で利用される製品だけでなく、顧客の製品に組み込まれて海外に輸出される製品も含まれています。

したがって、ウクライナ情勢の長期化、世界的なインフレーション進展等を背景に、世界各国・地域の景気減速が想定以上に進み、当社製品の需要や、当社製品を組み込んだ顧客の製品の販売動向が変化した場合には、三菱電機グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

こうした各国の経済安全保障政策の急激な変化に対応すべく、社長直轄組織である経済安全保障統括室において、政策動向や法制度の調査・分析、全社における機微技術管理、情報セキュリティ、投資、開発、サプライチェーン等に関わる経済安全保障の観点から見た統合的なリスク制御を行っています。

②サプライチェーン(部材調達)環境の変化について

半導体の全般的な需給逼迫には改善の兆しがあるものの、一部の産業機器・車載機器向け半導体や電子部品、材料の価格上昇や調達困難な状況が継続しています。また、感染症・自然災害等による供給混乱、各種経済安全保障規制の拡大、人権課題への社会的要請など、サプライチェーンの強靭化が喫緊の課題となっています。

これらも踏まえて、引き続き三菱電機グループは競争力のある製品を市場に供給するために、安定調達に向けた調達品の確保と、価格高騰の抑制に注力します。また、特定の国・地域の緊張関係、あるいは人権や環境に関連した各国の規制により、サプライチェーンの変更等も想定されますが、多様な調達リスクの軽減と環境の変化に対応した持続可能な調達体制を構築し、生産活動の継続を可能とするBCPを戦略的に推進します。

③情報セキュリティを取り巻く環境について

三菱電機グループの顧客・ステークホルダーの皆様からお預かりした情報、営業情報や技術情報、知的財産などの企業機密が、コンピューターウイルスの感染や不正アクセスその他不測の事態により、滅失もしくは社外に漏洩した場合、または工場の生産に影響を与えるようなサイバー攻撃事案が発生した場合は、三菱電機グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。加えてソフトウェア又はハードウェアの大規模障害、三菱電機グループ及び三菱電機グループ管理外のシステムに未知の脆弱性があった場合や外部事業者が提供する情報通信サービスの停止、大規模災害等により、情報システムが機能不全に陥る場合は、三菱電機グループの事業が影響を受ける可能性があります。

かかるリスクへの対応として、情報セキュリティ基盤強化活動を推進し、巧妙かつ多様化する最新のサイバー攻撃パターンへの対策強化及びレジリエントな情報システムの維持・強化を進めていきます。また、人的情報漏洩防止策の強化も含めて機密情報の保全を図ります。

視点2

ゲームチェンジ/技術革新

人権課題への社会的要請の高まり

気候変動に係るリスク

④技術革新の加速と競争の激化について

サステナビリティを実現するための重要課題のうち、気候変動、人権等については、国際的な法制面の整備、規制への取組みが加速しており、これまでの価値観と社会構造が変化し、急速な技術革新(ゲームチェンジ)をもたらすことも考えられます。急速な技術革新は競争の激化を招き、リスク側面として三菱電機グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

不確実性の高い事業環境を想定して、これらの変化に耐えうる強固な経営基盤を構築します。例えば、研究開発においては、大学など社外研究機関との連携や、顧客との共創などを通じて、グループ内外の知見を融合することにより未来社会をデザインし、新しい価値のタイムリーな創出を図ります。

⑤人権に関する法規・規制および社会的要請等の高まりについて

三菱電機グループは、人権に関して以下のリスクを認識しています。

  • 各国で制定が進む企業に人権の取組みを求める法令に適時適切に対処しなければ法令違反となるリスク
  • 人権侵害に加担した企業とみなされた場合に企業に課される経済制裁リスク
  • 人権侵害に関わる企業への信頼の低下などのレピュテーションリスク

かかるリスクに対し、三菱電機グループとして国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際規範に基づく取組みを強化しています。

また、三菱電機は、グローバルサプライチェーンにおいて社会的責任を推進する企業同盟であるRBA(Responsible Business Alliance)に加盟し、自社およびサプライチェーンの人権課題に積極的に取組んでいきます。

⑥持続可能な地球環境の実現に関する法規・規制および社会的要請の高まりについて

三菱電機グループは、地球環境リスクのうち気候変動に関するリスクを最優先に対応しています。気候変動に関するリスクは、脱炭素社会への移行に関連するリスク(移行リスク)と、温暖化が進展した場合の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)に大別されます。これらのリスクは、費用の増加(生産・社内管理・資金調達コストなど)、収益の減少などを招くおそれがあります。

かかるリスクに対し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿って、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の観点から事業運営を強化します。また、事業のリスクを制御するとともに機会創出に取り組み、社会課題の解決を促進します。

視点3

感染症・大規模災害

⑦感染症・大規模災害(地震、津波、台風、水害、火山噴火、火災)等の影響について

三菱電機グループは、製造・販売拠点、研究開発拠点、及び本社を含む主要施設を国内外に多数有しており、感染症や大規模災害(地震、津波、台風、水害、火山噴火、火災)等により三菱電機グループの拠点が被害を受けることで、事業活動が中断する可能性があります。また、サプライチェーンの混乱に伴い調達、生産、物流等に影響が生じ、多額の損失が発生する可能性があります。

これらに対し、三菱電機グループは感染症や大規模災害等の緊急事態の際は、全社緊急対策室を設置し、全社の情報を一元管理するとともに、各事業拠点単位での安全確保と事業活動の復旧・継続(BCP)に取組みます。また、生産活動の継続が可能となる安定調達に向けたサプライチェーンを構築していきます。

視点4

製品やサービスの品質及び関連するコンプライアンスリスク

⑧製品やサービスの品質及び関連するコンプライアンスリスクについて

製品やサービスの欠陥や瑕疵等による損失計上や、関連するコンプライアンス違反の発生による社会的評価の低下等は、経営全般に影響を及ぼす可能性があります。

かかるリスクに対し、品質保証体制を強化するとともに、予防機能を重視した実効的な内部統制システムを構築していきます。

視点5

複雑化・複合化するリスクと金融市場の不確実性

⑨金融市場(為替相場、株式相場)リスクの影響について

上記①~⑧項で示した複雑化する各個別リスク、あるいはそれらの複合リスクにより、為替相場、株式相場が影響を受ける場合、三菱電機グループは、以下の影響を受ける可能性があります。

<為替相場>

三菱電機グループの売上は北米、欧州、中国がおよそ10%ずつを占めていることに加え、当社における米ドル建てやユーロ建てでの輸入部材購入、アジア地域の製造拠点における当該地国以外の通貨建て輸出売上や輸入部材購入があります。

為替予約等により為替の変動の影響を回避するようにしていますが、為替レートの急変により、当社の想定している為替レートから大きく変動すると、三菱電機グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

<株式相場>

三菱電機グループは、「政策保有株式は原則保有しない」という考え方を基本方針としていますが、一方で、事業運営上、必要性が認められると判断した株式については保有することがあります。株式相場の下落は、三菱電機グループが保有する市場性のある株式の価値の減少や、年金資産の減少をもたらす可能性があります。

かかるリスクへの対応として、保有株式については、採算性、事業性、保有リスク等の観点から総合的に保有意義の有無を判断し、毎年、執行役会議及び取締役会にて検証・確認を行っています。保有意義が希薄と判断した株式は、当該企業の状況等を勘案した上で売却を進めるなど縮減を図ることとしています。

なお、上記における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月29日)現在において当社が判断したものです。