インターネット事業やモバイル通信事業を展開するフリービット株式会社。同社グループで、法人向けにホスティングを中核としたクラウドインフラ事業を手掛ける株式会社ベッコアメ・インターネットは、自社データセンターの閉鎖に伴い、サービス基盤を三菱電機デジタルイノベーション株式会社のデータセンターに移設しました。併せてネットワークオペレーションセンター(NOC)の業務をアウトソーシングし、サービス品質を維持したまま、NOC運営コストの削減を実現しました。
左から、
フリービット株式会社 BX事業本部 副本部長 クラウドインフラ部 部長 馬場 健一 氏、
株式会社ベッコアメ・インターネット システムマネジメント部 長谷川 淳一 氏、
株式会社ベッコアメ・インターネット システムマネジメント部 川田 裕己 氏
ランニングコスト削減をはじめ
全体最適化に向けNOCのアウトソーシングを検討
フリービットグループは「Being The NETFrontier!(Internetをひろげ、社会に貢献する)」を企業理念に掲げ、ITを活かした各種サービスを提供しています。
同グループでクラウドインフラ事業を手掛けるベッコアメ・インターネットは、インターネット黎明期から培ってきたITインフラの構築・運営ノウハウを強みとして、法人向けに、ホスティング、ハウジング、ローミングなどのサービスを提供しています。これらのサービスを提供する拠点として、2000年から東京都台東区でデータセンター(浅草DC)を運営してきましたが、ビル設備の老朽化に伴い浅草DCを閉鎖し、移行先を検討することにしました。さらに、ネットワーク機器やサーバーなどの監視・運用・保守を行うNOC業務を、自社運営からアウトソーシングに切り替え、コスト削減を図ることにしました。
NOC業務を外部委託することにした理由について、フリービットBX事業本部 副本部長クラウドインフラ部 部長で、ベッコアメ・インターネットのシステムマネジメント部長を兼務する馬場健一氏は次のように語ります。
「自社運営時は必要最小限の人員でNOCを運営してきましたが、継続的な人員確保が課題となっていました。そこで、NOC業務を外部委託することで安定稼働とランニングコストの削減を図ることにしました」
4ステップに分けた移行とNOC品質を維持する提案を評価
2021年からサービス基盤の移行先を検討していたベッコアメ・インターネットは、グループ全体で取引実績のあった三菱電機デジタルイノベーションが提供するデータセンターに移設することにしました。
移行作業の開始から約2年が経過した2023年、同社は、三菱電機デジタルイノベーションから統合運用管制センター(ICC)のオペレーターが24時間365日の監視・運用・保守を担う「統合運用フィールドサービス」の提案を受け、NOC業務の委託を決めました。
「当初はNOC業務を外部委託することで、サービス品質が低下するのではと懸念していましたが、三菱電機デジタルイノベーションから、これまで当社でNOC業務を担ってきたオペレーターがICCでも継続して担当するという提案をいただき、安心して委託できると判断しました」(馬場氏)
NOC業務の委託は、三菱電機デジタルイノベーションの提案に沿って段階的に実施されました。まず第1ステップ(2024年8月~10月)は、NOCオペレーターの半数がICCに異動して、ICCでNOC業務を開始。続く第2ステップ(2024年11月~12月)では、残りのオペレーターが異動して、浅草DCを閉鎖。そして第3ステップ(2025年1月以降)では、ICCでのNOC業務が本格稼働し、さらに段階的な移行を経て、同年5月にNOCオペレーターとICCオペレーターが協働する共用体制へ移行が完了しました。
移行プロジェクトについて、ベッコアメ・インターネット システムマネジメント部の川田裕己氏は次のように振り返ります。
「NOCオペレーターのパフォーマンスを落とさないようにしたいという私たちの意向を汲んで、段階的な移行を提案いただきました。指示系統についても、ICCのSEを介して指示を出す体制を整えていただいたことで、情報伝達が滞ることはありませんでした。移行期間中は、当社が提供した業務リストやチェックリストを用いてICCオペレーターにベッコアメのNOC業務を短期間で教育していただくとともに、当社のNOCオペレーターに対してもICCの運用業務を教えていただきました。また、移行期間中は週に1回定例会を開催し、ベッコアメのSE部門や管理部門と密に連携しながら、運用業務の安定稼働を進めました」
三菱電機デジタルイノベーションの支援について、ベッコアメ・インターネット システムマネジメント部の長谷川淳一氏は次のように語ります。
「浅草DCとICCでNOC業務を並行稼働しながら共用体制に段階的に移行するといった工夫により、スムーズに切り替えることができました。また、NOCチームの移行に際しては、三菱電機デジタルイノベーションがWBS(Work Breakdown Structure)を活用した課題管理や、課題管理表による情報共有で支えてくれました。細かい粒度で進捗を管理し、週1の定例会で情報を共有いただいたおかげもあり、課題を一つひとつ解決していくことができました」
NOC運営体制を維持したままランニングコストを約2割削減
NOC業務のアウトソーシングにより、NOCオペレーターがベッコアメ・インターネットの運用業務だけでなく、ICCの運用業務も兼務することで、ランニングコストを削減することができました。
「運用にかかる人件費をざっくり試算すると、ランニングコストは従来から約1割減りました。地代やマネジメント費用といったデータセンター全体の運用に関わる部分まで含めると、約2割のコスト削減が実現できています」(馬場氏)
NOC業務をアウトソーシングしたことで、これまでベッコアメ・インターネットの管理者が担ってきた運用のとりまとめやレポート作成、NOCオペレーターの採用および教育などの業務からも手が離れました。
「NOC運用に必要なIT人材の採用や教育といった業務から解放され、結果として業務分析に基づく課題抽出や品質改善活動に充てる時間が増えています」(川田氏)
NOCオペレーターとICCオペレーターが協働する共用体制に移行してから約半年が経過した現在も、運用品質は従来と変わらず、安定稼働が続いていることを高く評価しています。
「当社のNOCオペレーターは、従来どおりベッコアメ・インターネットの運用業務に対応しながら、ICCの運用業務もこなしています。それにもかかわらず、今までと変わらない業務品質で対応できていることは、とてもうれしく、アウトソーシングの成果を心から実感しています」(長谷川氏)
スキルアップによる一次解決率向上と
運用監視の標準化・自動化を検討
今後は、NOCとICCの業務ノウハウを活かしたシナジー創出に向け、NOCオペレーターの継続的なスキルアップによる一次解決率向上と、運用監視の標準化・自動化を推進していく予定です。
「現在、NOCオペレーターの主な業務は、障害などのアラートを検知した際に当社SEにエスカレーションすることです。NOCオペレーターの技術力を高め、自力で解決できる範囲を広げられれば、SEの負担軽減やコスト削減につながります。そのためにも、NOCオペレーターのスキルアップに取り組んでいきます。また、当社のNOC業務には、まだ属人的な作業が残っています。今後は、ICCの業務を参考に標準化や自動化を進めていきたいと思いますので、引き続きお手伝いをお願いします」(馬場氏)
フリービット株式会社
所在地
東京都渋谷区円山町3-6 E・スペースタワー
創業
2000年