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  3. AI 危険予知システム「AI 見守りカメラ」

生産現場における安全管理は、製造業界が抱える重要な課題です。特に製鉄業など危険を伴う作業現場では、従来の人的監視だけでは限界があり、より効果的な安全対策が求められています。三菱電機デジタルイノベーション株式会社では、このような課題に対応するため、AIとカメラを活用した危険予知システム「AI見守りカメラ」を開発しました。本システムは、工場などの生産現場で働く従業員の不安全行動や、特定エリアへの人や車両の侵入など、様々な物体の位置を24時間体制で検知し、警告を発出するシステムです。お客様の業務ニーズに応じた強化学習を行うため、多様なシーンへの導入が可能で、最小限の導入負荷で生産現場の安全対策レベルを高めることができます。

左から、三菱電機デジタルイノベーション株式会社 流通・ヘルスケア事業 ライフチャネルソリューションサービス営業部 流通ソリューション第二営業課 課長代理 平岡 照久氏、
ライフチャネルソリューションサービス部 ソリューションサービス第二課 中島 恒幸 氏、
ライフチャネルソリューションサービス営業部 流通ソリューション第二営業課 小畑 円香 氏

製鉄業において事故を未然に防ぐソリューションとして開発

AI見守りカメラを開発するきっかけは、ある鉄鋼メーカーからの要望でした。製鉄所の生産現場は危険を伴うため、鉄鋼メーカーにとって安全確保は重要な経営課題です。しかし、人的監視には限界があり、その解決策を求める声を伺ったことが開発の発端となりました。開発の経緯について、流通・ヘルスケア事業 ライフチャネルソリューションサービス営業部 流通ソリューション営業第二課 課長代理の平岡照久氏は、次のように話します。

「2021年ごろ、ある鉄鋼メーカーから生産現場の危険を予知・警告できるソリューションを探しているとのご相談をいただきました。当初はハイエンドな映像解析ソリューションの導入も検討しましたが、監視対象となる現場が多く、投資規模が大きくなる懸念がありました。そこで、より容易に導入できる汎用的なシステムとして開発することにしました」

この鉄鋼メーカーにおいて、AI見守りカメラに求める要件は二つありました。一つ目は作業員の不安全行動の検知です。「作業員は、ヘルメットや防塵マスク、手袋などの着用が義務づけられています。しかし、エアコンが効きにくい過酷な環境下で作業を行うため、つい着用を怠ってしまうことがあります。そのため、これらの行動を監視する必要がありました」(平岡氏)

二つ目は重機との接触事故の防止です。「作業現場では大型のクレーンが常時稼働しているため、接触事故を未然に防ぎたいという要望がありました。もちろん従来から現場で声をかけながら監視を行っていましたが、大きな機械音にかき消され、人の声が届きにくい環境です。限られた人員で安全を確保することは重要な課題でした」(平岡氏)

こうした課題に対応するため、平岡氏とともにAI見守りカメラの開発を担当したのが、流通・ヘルスケア事業 ライフチャネルソリューションサービス部 ソリューションサービス第二課の中島恒幸氏です。技術的な特長について、中島氏は次のように語ります。

「AI見守りカメラには、三菱電機の情報技術総合研究所が開発したAI技術を活用しています。また、例えばクレーンと人が接近した場合、どのくらいの距離で危険と判定し、パトランプを点灯させたりサイレンを鳴らしたりといった仕組みは、現場のノウハウを踏まえて開発しました」AI見守りカメラの最大の特長は、お客様が自由に検知条件を決め、設定できることです。「お客様自身で細かな設定が行える仕組みを検討した結果、マスタ設定による検知パターンを組み合わせるという発想が生まれました。この技術は、特許取得済みであり、本システムの最大の特長となっています」(中島氏)

この技術により、マスクの未着用、重機への接近、危険エリアへの侵入といった検知項目を、お客様がマスタ設定により柔軟に管理できます。事前にAIが学習した検知対象物と距離条件をマウス操作で組み合わせることで、独自の監視条件を簡単に作成可能な仕組みとなっています。

AI 見守りカメラ 基本構成図

重大事故ゼロの実績から多業界への展開を加速

AI見守りカメラは、2023年10月にこの鉄鋼メーカーに導入されました。「導入後の作業現場では、重大事故がなくなりました。週に1回程度はヒヤリハットが起きているようですが、検知・警報により、事故を未然に防ぐことができています。現場の責任者の方からは、感謝の言葉をいただいています」(平岡氏)

効果が認められた結果、他の現場にも導入が拡大しました。また、他の鉄鋼メーカーや様々な業種・業界からの引き合いもあります。流通・ヘルスケア事業 ライフチャネルソリューションサービス営業部 流通ソリューション営業第二課の小畑円香氏は、いくつかの事例を紹介します。

「半導体メーカーからは、作業員が保護メガネやマスク、分厚い手袋を着用しているかをチェックしたい、という引き合いをいただいています。そのほか、工場での人の転倒検知ができないか、という問い合わせもいただいています。これには、人が一定時間動かなかったら転倒と判定するという仕組みを使って対応できます。転倒を検知するとパトランプを点灯して現場に異常を知らせるとともに、メールやSMSを使って管理者に知らせることもできます。そのため、夜間などの安全管理にも有用です」

市場には、AI技術を組み合わせた多くのカメラがありますが、それらとの違いについて、平岡氏は次のように説明します。「産業用の安全管理サービスはほとんどありません。防犯カメラなどはありますが、あくまでもカメラのオプションとして特定の検知しかできません。当社のAI見守りカメラは、お客様が自ら監視条件を簡単に設定できるというコンセプトなので、業種・業界を問わず多くの産業で活用できると考えています」

AI見守りカメラは、汎用的な防犯カメラとハイエンドな画像解析ソリューションの中間に位置する独自のポジションを占めており、お客様の多様なニーズに柔軟に対応できる点が大きな特長となっています。

クラウド化と生成AI活用へSerendieとの連携も構想

今後の展開について、中島氏は次のような可能性を示します。「AWSなどクラウド上での展開を検討しています。また、現場の安全面だけでなく、生産性向上を目的とした稼働監視への活用も考えています」

小畑氏は屋外展開の可能性についても言及します。「工場だけでなく、工事現場や建設業などの屋外での安全管理についてもお問い合わせをいただいており、そういった分野への展開も検討しています」

さらに、三菱電機のデジタル基盤であるSerendie®との連携も構想しています。中島氏は「危険行動のデータを生成AIに渡して安全指導に活用するなど、データを蓄積して新たな用途で利用できる仕組みを考えています」と将来像を語りました。

平岡氏は最後に、三菱電機グループとしての強みを活かした展開について次のように語りました。

「三菱電機のFA(ファクトリーオートメーション)関連のお客様からの問い合わせも数多くいただいており、FA 機器との連携も重要だと考えています。危険検知時の機器自動停止など、単なる見守り機能を超えた包括的なソリューションの提供を目指しています」

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