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AI (人工知能 )とは

Artifical Intelligence

AIに明確な定義はあるのか、AIはどのように進化してきたのか

人工知能(AI)とは一般に、「人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようとする試みやそのための技術」のことを指します。ただし、「知能」自体に明確な定義がないため、AIの定義も研究者によって異なり、明確ではありません。

近年、AIが注目されるようになったのは、AIがトップ棋士に勝利したことが一つのきっかけでした。チェスや将棋と比較して、手数が極めて多く人間に勝つのが難しいと言われていた囲碁においてもAIが人間に勝利したことで、その能力が実証されたのです。さらに、スマートフォンの音声応答アプリケーション、AIを搭載した人型ロボットなど、日常生活でもAI技術を目にするようになりつつあります。

ただし、AIが注目を集めたのは、今回が初めてではありません。AIにはこれまで、1960年代の「第1次ブーム」、1990年代の「第2次ブーム」、2010年代の「第3次ブーム」という3回のブームがありました。

第1次ブームでは、「探索=与えられた状態から目的の状態に至るまでの状態変化を場合分けによって探し出す」と「推論=既知の知識をベースに未知の事柄を推量する」という概念とAIの基本技術である「ニューラルネットワーク=脳機能の特性に模した数理的モデル」が誕生しています。ただし、探索と推論アプローチでは、解くべき課題のルールとゴールが明確なら解が見つけられるものの、そうでないと使い物にならないことが明らかになり、ブームの終焉を迎えます。

第2次ブームで注目されたのは、「知識表現=人間の持つ知識をコンピュータが扱えるようにする表現形式」という概念です。つまり、知識内容に合った表現形式のインプットがあればコンピュータも人間同様にデータを扱えるようになるのではないかと考えたのです。この第2次ブームでは、「データマイニング=データの集合から情報を抽出し、自動的にパターンを発見する分析手法」が生まれますが、システム内に矛盾したルールが併存するとAIが動作しなかったためにブームは下火に向かいます。

そして現在、再びブーム(第3次ブーム)を迎えた背景には、インターネット上に蓄積された膨大なデータの存在とその解析を可能にする機械学習の進歩があります。この機械学習技術を利用して、Googleは犬の画像データを大量にAIに読み込ませて新たに入力された画像が犬であることを自動的に識別できるようにしました。AIは今、大きなブレークスルーを迎えていると言えるでしょう。

出典:「情報通信白書」(総務省)

AIのレベルはどのように分類されるのか、AIシステムの導入はどのように進められるか

AIのレベルは一般に、レベル1からレベル4の4段階に分けられます。それぞれ、レベル1では厳格なルールに基づく単純なアウトプットが、レベル2ではインプットデータと決められたルールに基づく多様なアウトプットが可能になります。レベル1にはスマート家電など、レベル2にはSiriのような質問応答システムなどが該当するでしょう。

レベル3になると、AIはサンプルデータと人間の設定したルールに基づいて知識を学習し、インプットデータを自動的に判断してアウトプットできるようになります。そしてレベル4では、人間がルールを設定しなくても、AIがサンプルデータから自律的にデータの特徴やルールを学習して、自動的にアウトプットできるようになるのです。ECサイトにおけるレコメンド機能やパーソナライズ機能などはレベル3の典型例であり、多くの画像認識技術はレベル4のAIによって実現されています。

ではここで、AIの技術を簡単に整理しましょう。AIとは極めて広い概念(技術体系)であり、そこには既出のニューラルネットワークも含まれます。ニューラルネットワークを活用したAI技術が機械学習であり、深層学習もまた機械学習技術の1つです。逆に言えば、様々なニューラルネットワークの手法が誕生し、より複雑な学習ができるようになったことで機械学習が進化してきたのです。

機械学習とは、サンプルデータと人間の設定したルールに基づいて知識を学習する仕組みをコンピュータで実現する技術です。つまり、前述のレベル3に該当します。また機械学習では、人が判断のポイントとなる特徴点を指定しなくてはなりません。この特徴点から、コンピュータがデータのパターンやルールを発見し、それを新たなデータに当てはめることで判断・予測し、アウトプットするのです。

一方、深層学習ではより多層的なニューラルネットワークを使うことで、AIが自律的にデータの特徴やルールを学習し、自動的にアウトプットします。前述のレベル4に該当する技術です。Googleの例で言えば、犬の画像データを大量にAIに読み込ませることで、犬の画像データの特徴やルールを自律学習したことで、自動的に犬の画像を判別できるようになったわけです。ただし、深層学習では、AIがどのようにデータの特徴やルールを学習したかが分からないため、パターンやルールがブラックボックス化しやすいという課題もあります。

出典:「情報通信白書」(総務省)

現在、AIを活用したシステムは様々な分野で利用されています。インターネットの世界における検索エンジンやスパムメール検出はもちろん、金融業界における株価予測、医療業界におけるがんの診断など、その用途は多岐にわたります。特に最近、利用著しいのは、画像認識と音声認識といった技術です。それぞれ、画像認識は工場の不良品検出や高齢者の見守り、自動運転や指紋認証などに、音声認識は議事の書き起こしや自動応答(チャットボットなど)、話者の認識や感情分析など、幅広い業界でサービスが利用されています。

では、AIシステムを導入するにあたっては、どのような作業が必要になるでしょう。通常、AIシステム導入前には、PoC(Proof of Concept、概念実証)と呼ばれる、「目的とする成果が得られるか」を検証するプロジェクトを実施します。PoCのプロジェクトでは、最低限の機能を持ったシステムを短期間で構築し、実際に使ってみることで目的とする成果が得られるかを確かめます。工場の不良品検出システムであれば、不良品と良品の画像データを読み込ませてAIシステムに学習させ、きちんと不良品だけを識別できるかをチェックするわけです。

このとき重要になるのが、十分な量と様々なパターンの画像データの収集です。AIシステムが学習モデルを構築するのに必要な画像データだけでなく、学習モデルにデータを入力してデータ識別するプロセスにおいて追加学習するための画像データも必要になります。そして、求める精度で不良品を識別できない場合には、さらに学習させたり、学習モデルに手を入れたりなど、試行錯誤を繰り返します。検証の結果、一定程度の成果が得られると分かって初めて、システム導入を検討することになるのです。

AIは今後どこまで進化するのか、AIにはどのような課題があるか

AIは今後、様々な技術と組み合わされて、識別や予測の精度を向上させることで、さらに幅広い分野に応用されると期待されています。AIが自らの行動とその結果を分析できれば行動計画を立てられるようになり、言語と概念を紐付けられれば自ら知識を取得することが可能になるでしょう。ある意味、自律的に思考できるAIの誕生です。

AIがこのような自己フィードバック機能を持つようになると、AIが人間に替わって文明進化の主役になる時代が到来するかもしれません。このように、AIが人類の知能を超える技術的特異点のことを、米国の未来学者、レイ・カーツワイル博士は「シンギュラリティ」と呼んでいます。自然言語処理や機械学習を専門とする博士は、シンギュラリティを迎えると、人間社会が大変革を迎え、人間の能力をはるかに超えたロボットが出現すると予言しています。

ではAIの能力が飛躍的に進化した時代、人とAIの役割はそれぞれどのようになっていくのでしょうか。機械による大量生産技術の導入によって多くの工場労働が不要になり、OA化によりコンピュータがホワイトカラーの事務作業を代替したように、今後AIが、人の現在果たしている役割の多くを置き換えていくことは間違いないでしょう。

ただ一方で、自律的に働くAIを得ることで、業務効率化や新たな事業の開発も可能になります。つまり、人はAIを使うことで、生産性向上や事業開発に向けた施策を考える役割を担っていくのではないでしょうか。AIがそうした役割を果たす上で、人はこれまで以上に、情報収集や課題解決、論理的思考などを通じた業務遂行能力を身につけることが求められるのかもしれません。またAIでは代替が難しいと考えられているコミュニケーション能力などの対人関係能力を養っていく必要もあると考えられています。

AIの可能性に注目が集まる一方で、AIを人類や人に害を引き起こす可能性のある技術へ利用すること、プライバシーや人権に反する目的に利用することに対する懸念もあります。こうしたAIが生む負の側面を無視できなくなりつつあるため、たとえばGoogleがAI倫理の7原則を示すなど、多くのIT企業は相次いでAI利用の指針を表明しています。日本政府もまた、AI利用の際の7原則を策定し、「人間中心」の考え方を掲げました。

では今後、どのような分野でAIの利活用が進められていくのでしょう。総務省の有識者に対するアンケート調査によれば、健康診断の高度化、公共交通の自動運転、救急搬送ルートの選定、交通混雑・渋滞の緩和など、社会的課題の解決への活用が期待されています。近い将来、公共の場面でAIが活躍するシーンを数多く見ることができるのかもしれません。

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