このページの本文へ

ここから本文

写真 写真
vol.1 vol.1
vol.1
気候変動 ー 私たちの世代が​
未来のためにできること​
根本 美緒 × 鳥海 采

日々のくらしに影響を与える
“気候変動”。
この環境問題に対して私たちは
何ができるでしょうか?
気象予報士であり、大学院で研究活動にも取り組んでいる根本 美緒さんを
ゲストに迎え、
三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部の鳥海 采が対談しました。

テーマ 1 気候変動と私たちのくらし​ テーマ 2 “緩和策”と“適応策” テーマ 3 若い世代や企業の変化 テーマ 4 発想の転換​
テーマ 1 気候変動と私たちのくらし​ テーマ 1 気候変動と私たちのくらし​

健康にも影響を与える
夏の暑さ

まず、お二人のお仕事や日頃のご活動についてお聞かせいただけますか。

根本 美緒さん(以下、根本):
私は気象予報士として活動していまして、WebサイトやSNSで天気予報を発信したりコラムを執筆したりしています。また、東京大学の大学院で環境システムについての研究も続けています。

鳥海 采(以下、鳥海):
お仕事とご研究を両立されているのですね。お子さんも3人いらっしゃると伺いましたが、どんな毎日なのですか?

根本:週に2回は朝6時からアメリカの研究会にオンラインで出て、終わったら子どもたちを送り出します。昼間は仕事や研究をして、子どもたちが帰ってきたら一緒に過ごし、夜はオンラインでゼミ……。もうバタバタです(笑)。鳥海さんは、どのようなお仕事をされているのですか?

鳥海:私は、ルームエアコンをはじめとする空調冷熱機器の販促や宣伝・広報を担当しています。CMやWebサイトなどを通じて、お客様やメディアの皆様に当社の製品をご紹介する仕事です。エアコンは“暑さ”“寒さ”をコントロールする製品ですし、最近の気候は気になります。根本さんは気象予報士として気候変動の問題をどう捉えていますか?

根本:例えば1990年代と比べると、極端な現象がよく起こるようになりました。最高気温が35℃以上の猛暑日や50ミリ以上の激しい雨を記録する回数が、数値として現実に増えています。

鳥海:やはりそうなのですね。厳しい暑さで熱中症になる方も多いと感じます。対策の一つとして、2018年頃から2020年にかけて主に公立の小中学校でエアコンの設置が急増しましたが、これも耐えられないほどの暑さが子どもたちの健康に影響するからですね。

根本:まさにそうですね。私も一人の親として、子どもたちに危険な思いをさせたくない。大学院に進んだのも、「では私たちの世代に何ができるのだろう?」と考えたことが理由の一つだったのです。

テーマ 2 “緩和策”と“適応策” テーマ 2 “緩和策”と“適応策”

樹木や空調で
気候変動に適応

根本さんの大学院での研究内容を教えていただけますか。

根本:暑さが人の健康にどのような影響を与えるか、目で見てわかるようにするための研究に取り組んでいます。適切な対策を講じるためには、評価が重要。とくに注目しているのは、樹木による対策です。

鳥海:少し意外な気もしますが、樹木ですか?

根本:はい。地球温暖化対策には、CO2などの温室効果ガスを減らす“緩和策”と、気候変動に対応してくらしを守る“適応策”がありますが、樹木はこの両方に役立ちます。CO2を吸収する一方で、木陰を作ってくれますから。この視点で言うと、エアコンも立派な適応策ですね。お子さんに限らずご高齢の方も暑さを感じにくく、体温調節が不得意といわれていますから、室温を調整してくれるエアコンの役割は大きいと思います。

鳥海:実は私たちのエアコンにはAIを搭載した機器もあります。少し先の外気温や日差しの変化の影響を部屋ごとに予測して冷暖房・除湿を調節したり、赤外線センサーで室内や人の表面温度を測定して温度を変えたりすることができます。また、省エネ性能の改善や、温暖化係数※1の低い冷媒の採用、家電に使用していたプラスチックを素材に戻すリサイクルなどにも取り組んでいます。

※1 CO2を基準にして他の温室効果ガスがどれだけ地球を温暖化させる性質をもっているかを表した数字。

根本:そうなのですね。そういった企業の技術力に私たちのくらしは助けられていますね。

テーマ 3 若い世代や企業の変化 テーマ 3 若い世代や企業の変化

環境教育やSDGsで
高まる意識

ところで、根本さんはどうして環境問題に関わるようになったのでしょうか。

根本:きっかけは大学生の時でした。環境経済学に出会ってゼミで研究するなかで、次第に教育の大切さを感じるようになりました。でも当時、小中学校では環境教育はあまり活発ではなくて、“学校の外”で何かできないかと考えて就職したのが、仙台にあるテレビ局でした。

鳥海:環境について考えてもらえる番組を作ろうと思ったのですか?

根本:そうです、そんな大きなことを言って入らせてもらって(笑)。自分で企画を立てて取材もしました。また、東京に来てからは、小学校へ訪問して出張授業するボランティアを始めました。朝の番組で天気予報を担当していましたので、子どもたちも喜んでくれるかも!と思ったのです。

鳥海:私自身、小学校で環境に関して踏み込んだ深い内容を勉強した記憶はない気がします。子どもたちは、どのような反応でしたか?

根本:2009年頃でしょうか、子どもたちの反応が変わってきたのは。例えば、子どもたちに3R※2について話をすると、「知ってるよ!」と言われるようになって。

※2 Reduce(リデュース:ものを大切に使いごみを減らすこと)、Reuse(リユース:使えるものを繰り返し使うこと)、Recycle(リサイクル:ごみを資源として再利用すること)の3つの言葉の頭文字をとった言葉。

鳥海:そうなんですね。私も、世の中の環境への意識は変わってきているな、と仕事を通じて感じています。当社の営業担当者も、法人のお客様から「これはSDGs※3のどれに当てはまりますか?」と聞かれることが多くなったと話しています。

※3 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2030年までに達成を目指す世界共通の目標。

これだけは知っておこう、『中学生からの環境用語』|SDGs

根本:SDGsは国連で決まった世界の約束です。やるべきことはまだたくさん残されていますが、とくに環境問題に対しては、企業や国の動きが変わってきたことで、社会の意識が確実に変化していますね。

テーマ 4 発想の転換 テーマ 4 発想の転換

一人ひとりの行動で未来が変わる

私たちに求められるのはどのようなことでしょうか。お二人の考えをお聞かせください。

鳥海:私は30代ですが、環境知識が少ない世代かもしれません。レジ袋が有料化されエコバッグの利用が増えたものの、「自分はレジ袋を川や海に捨てていないのに!」と腑に落ちない人もなかにはやはりいます。

根本:なるほど、レジ袋が風で飛んでいくイメージが皆さんのなかにないからですね。でも捨てている気はなくても、気づかないうちに飛んでいっているのですよね。

鳥海:そうなんです。このことからも、とるべき行動だけでなく、その理由や背景もセットでお伝えすることが大切だと感じます。私は生活のお役立ち情報を発信する仕事もありますので、エアコンだと我慢しない範囲で冷房時の設定温度を1度上げるなど、小さな一つひとつの積み重ねが大切であることをお伝えできればと思っています。これからの社会を担う子どもたちに向けては、環境教育を今までより充実させられるといいですね。

根本:一人ひとりの行動につなげることって、難しいですよね。ただ、子育て世代には危機感があると思います。例えば、通学時に子どもが炎天下で信号を待たなければいけないとか……。いろいろなことを考えているパパ・ママたちが、声を上げやすい仕組みがあればいいですよね。「私たちの世代ががんばらなくちゃ!」ー 私はそんな思いで研究しています。

鳥海:確かに少し前までは「日焼けは健康の証」と考えられていましたので、夏場の日焼け・紫外線対策は大人が行うものというイメージがある方もいらっしゃるかもしれないですね。

根本:ありますよね、きっと。でも、そうではなくて、適応策を進めないと子どもたちに負の影響があることは親として言っていかないといけない。エアコンを上手に使う、日傘をさす、スポーツの試合を昼間にやらないなど、適応策はたくさんありますから。環境問題はすべてくらしとつながっていることを知ってもらって、一つひとつの取り組みを当たり前にしていきたいですね。そして、そのためには「すべての発想をグリーンに転換する」、つまり緑化の意味のグリーンだけではなく、生物多様性の保全やクリーンエネルギーの普及といった広い意味で捉えて多面的に取り組んでいくことが必要ではないでしょうか。家族も地域も、さらには企業や行政も巻き込んで、そうしたことを皆で協力し合って進めていける社会になるといいですね。

※記事、プロフィール情報及び写真は2022年3月時点のものです。