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くらしのエコテクノロジー くらしのエコテクノロジー
vol.24
瀬戸内の豊かな生態系と共生する環境先進工場を目指して
三菱電機 受配電システム製作所 製造管理課 横田 大樹
人物編

瀬戸内の豊かな生態系と共生する環境先進工場を目指して​

2021.09.09

受配電システム製作所は瀬戸内海に面した四国、香川県丸亀市で、私たちの生活に欠かせない電気を安定供給するための技術を40年以上研究開発し、関連製品を製造してきました。その歴史ある製作所で製造管理課として環境を守るさまざまな取り組みに関わる横田さんは、製作所内のビオトープの整備や里山保全活動にも積極的に取り組んでいます。事業所の生物多様性の保全を目指す三菱電機グループの中でも、外部の評価機関SEGES認証※1を取得して高い評価を得る受配電システム製作所の生物多様性への取り組みとはどのようなものなのでしょうか。また、IoTを活用した環境先進工場をはじめ、環境負荷を抑え、自然環境に配慮する製作所の仕組みについてお聞きしました。

※1 SEGES認証:企業などによって創出された良好な緑地と日頃の活動、取り組みを評価し、社会・環境に貢献している、良好に維持されている緑地であると第三者機関が認定する制度。受配電システム製作所の緑地と取り組みは「そだてる緑(事業者が所有する300m²以上の緑地に対し優良な保全・創作活動を認定する制度)」のExcellent Stage1と認定された。

安全で確実に電気を使えるよう電力インフラを支える

受配電システム製作所は電気のインフラに欠かせない受配電システムの研究開発から製造までを行っているとお聞きしましたが、事業の概要を教えてください。

横田さん:電力インフラを支える受配電設備の開発、製造を行っています。発電所で作られた電気は変電所を介してビルや工場などに送電され、その後ビルや工場などに届いた電気を各フロアに配電する際にさまざまな技術や製品が必要となりますが、その過程での“電気を配る技術”を開発しています。

横田さんの写真
電力系統図 電力系統図
受配電システム製作所は、発電所から送られてきた電力を受け、コントロールし、ビル、工場などの各設備に安全、確実に配るための製品やシステムを開発、製造する。

具体的にはどんな製品を開発しているのでしょうか。

横田さん:具体的には3.6~84kVの電圧クラスでの電気の給配電を行うスイッチギヤ※2や、その配電盤内に収める事故電流を遮断するための遮断器(ブレーカー)などが主力製品となります。また、工場やプラント内で使用されるたくさんのモータを制御するための「モータコントロールセンタ」なども開発しています。

※2 スイッチギヤ:金属の箱の中に開閉装置と呼ばれる電気の回路を開けたり閉じたりするための装置を収納したもの。

私たちは毎日便利に電気を使っていますが、それがどこでどのように作られ、送配電されているか詳しく知りません。たとえば、御社の製品はどのような場所でどのように使われ、私たちの生活にどのように役立てられているのでしょうか。

横田さん:生活している中で見ることは少ないかもしれませんが、ビルや工場から発電・変電プラントまで、受電した電気をトラブルなく安定して供給するための設備として当製作所の製品が納められています。つまり、生活に欠かせない電気を安全かつ確実に使えるよう、私たちの暮らしを支えていると言えます。

現在の横田さんの担当業務はどのようなものですか?

横田さん:製作所での生産活動はどうしてもある程度、環境への影響がありますが、それを最小限に抑えていくためのさまざまな取り組みに関しての事務局的な役割を担っています。

環境といっても幅広いと思いますが、具体的にはどのようなものでしょうか。

横田さん:生産に伴って排出される廃棄物や排水、排ガスから、塗料やメッキなど生産に使用する化学物質まで、それぞれに対して環境に関わる法律があるので、それに対してしっかり要求を守るための監視と管理を行っています。また、環境マネジメントシステム(ISO 14001)※3の活動が遅れなく実施できているかなども管理しています。

※3 ISO 14001:組織を取り巻くすべてのヒト(地域住民、利害関係者)、モノ(水、空気など)に対して組織が与えている「環境影響」を明確にし、悪い影響を与えていれば、それを解決させていくための仕組みを作る環境マネジメントシステム。

環境先進工場で、IoTを活用してエネルギーロスにすばやく対応

2018年に完成した受配電システム製作所の新工場は「環境先進工場」として工場全体のIoT化を図っているということですが、IoTを活用し、エネルギー効率向上を図っている例などがありましたら教えてください。

横田さん:製造管理課では主に建物やインフラ設備の管理を行っています。新工場では設備稼働状況やエネルギー消費量などのデータを見える化して分析するシステム「SA1」※4を活用しています。電気だけでなく蒸気、エアー、水などの計測や、空調、照明の管理についても集約して行います。これらの情報はウェブ上で所員の誰もがリアルタイムで閲覧できるシステムとなっているので、迅速にエネルギーロスを見つけて対応することができます。

※4 SA1:三菱電機システムサービス製の工場向け監視・制御システム。設備の稼動情報やエネルギー使用量などをリアルタイムで収集。遠隔監視・制御、設備監視、省エネ監視などにも対応。

新工場内の空調・換気設備を管理するモニターの写真
新工場内の空調・換気設備を管理するモニターは従業員が持つタブレットでも確認できる。

IoTを活用して実際にエネルギーロスを見つけたという事例があれば教えてください。

横田さん:たとえば、クリーンルームの清浄度を維持するために、これまでは除塵用の循環ファンを常に一定の速度で運転していました。でも「SA1」によって基準に対して過剰環境であることがデータからわかったので、ダスト量に応じてファンを自動制御する機能を追加し、CO2排出量を65%削減して稼働できるようになりました。

コロナ禍で工場内の空気の質なども注目されるところですが、エアーや空調の管理は新工場ではどのように行っていますか。

横田さん:温度、湿度、CO2センサーがついていますし、温度と湿度によって空気の熱量を計算して、空調を使った方がいいのか、それとも屋外の空気を取り入こんだ方がいいのかを自動計算をしてファンが自動的に動くようになっています。また、輻射空調システムと言って、気流感のない空調システムも取り入れています。

新工場はIoTの活用だけでなく、太陽光発電などの自然エネルギーの活用や、断熱性能の拡充、照明の省エネ、直流配電ネットワークシステムの導入(技術編参照)などさまざまな先進的な設備を導入されていますが、従来の工場に比べてどれくらい電力を削減できるのでしょうか。

横田さん:さまざまな取り組みを行った結果、電力原単位※5で約3割削減できています。

※5 電力原単位:対象とする工場の一定期間のエネルギー消費量を同じ期間の活動量で割った値。

新工場は省エネ性能が向上しただけでなく、ウッドデッキや緑化ルーバー、光庭があるなど快適性も向上しているということですが、どのような工夫があるのでしょうか。生産性も向上していますか。

横田さん:まず、基本的に外壁は内側に断熱材を入れたサンドイッチパネルを使用し、屋根は二重折半屋根に太陽光発電パネルを載せることで遮熱効果を高め、その上でセンサーによって空調やファンが自動的に動きます。採光もとれる光庭やウッドデッキは建物内への熱の侵入を抑制し、省エネになるだけでなく、従業員がほっと一息つけるスペースを作り出しています。他の工場に比べてエネルギーは削減しながらも、体感的には快適性は高く、生産性もあがっていると聞いております。

新棟「真空バルブ・遮断器工場」の光と緑があふれる「光庭」
新棟「真空バルブ・遮断器工場」の光と緑があふれる「光庭」。中庭の採光により照明を抑制し、従業員のためのリフレッシュ空間にもなっている。
横田さんの写真
水分量をモニタリングする水分計がついた緑化ルーバーはウッドデッキ上に配置され、建物内への熱の侵入を減らす。

横田さんは従業員に対する環境教育教材の作成や実施などにも関わっていらっしゃるということですが、どのような内容で啓蒙活動を行っていますか。

横田さん:「ISO 14001」の認証を取得していますので、その活動の一環として各部門の環境担当者を対象とした環境教育を毎年必ず実施しています。三菱電機グループの環境活動や、「環境ビジョン2050」について、また受配電システム製作所​としての方針・目標など全般的な内容についての資料を作成し、研修を実施します。また、昨年度からは毎月の環境スローガンを作成し、各工場のサイネージに掲示するなど、少しでも環境について意識を向けてもらえるような取り組みも行っています。

渡り鳥の休息地「ビオトープ」を人と生きものが触れ合う場所に

製作所内には、ビオトープも整備され、横田さんはその維持管理も行っていますが、どのようなコンセプトで整備したのでしょうか。

横田さん:受配電システム製作所は、瀬戸内海に面した工業地域の最北端に位置していますので、瀬戸内海や周辺緑地を結ぶ生き物にとっての休息地として活用されることを意識して整備しています。また、ビオトープ内に芝生エリアを設けることで従業員も訪れやすいように配慮し、人と生きものの共存という点も意識しています。

横田さんは入社してからずっとビオトープの維持管理に関わっていらっしゃるのですか。

横田さん:はい、活動当初からメンバーとして参加しています。2016年から、まずどんな生物がいるか把握しようということで季節ごとに計4回の生きもの調査を実施しました。そして2017年には従業員自らスコップで穴を掘って手作りのビオトープを設置しました。観測した結果、水辺があることで鳥が来るなど効果があったということがわかったので、次の年には専門家に依頼して、本格的な大きいビオトープを別の場所に造成しました。

在来種の植栽で囲まれたビオトープ
野鳥や昆虫類が訪れやすいように休息用の中ノ島や止まり木などを備え、在来種の植栽で囲まれたビオトープ。
2017年に作った「手作りビオトープ」から始まった生きものとの共生を目指した環境づくり。
2017年に作った「手作りビオトープ」から始まった生きものとの共生を目指した環境づくり。

ビオトープを通じて確認できる動植物にはどのようなものがありますか。

横田さん:季節によりいろいろな動植物を確認できますが、春から秋にかけては多くのトンボ類、冬場は渡り鳥などを確認しています。年間を通じてモズやジョウビタキ、カルガモなど25種類ほどの野鳥が見られます。また、香川県のレッドデータブックに掲載されているトンボが産卵・孵化していることも確認できました。

ビオトープを活用して「生きもの観察会」なども実施されているとお聞きしましたが、それによってどのような効果があると感じていますか。

横田さん:2020年10月に、初めてビオトープに近くの保育所の園児を招いて「生きもの観察会」を実施しました。私が実際にビオトープに入ってヤゴやメダカを獲って、子供たちの容器に入れて見せました。最初はヤゴが怖くて触れなかった子も、最後には自分から寄ってきて手に乗せて観察できるようになり、生き物に興味をもってもらえたと感じられてうれしかったです。

横田さんの写真
「生きもの観察会」でビオトープの中に入り、子供たちのためにトンボのヤゴ(幼虫)を捕獲する横田さん。
命が循環するビオトープの植生護岸
絶滅危惧種など複数種のトンボが盛んに孵化してヤゴとなり、命が循環するビオトープの植生護岸。

生物多様性の取り組みとして受配電システム製作所は2019年1月にSEGES(シージェス)認証を取得しました。その理由と、今後の課題について教えてください。

横田さん::SEGES認証は緑地の管理と社会貢献の2つの側面から評価されるものですが、生物の調査やビオトープを作ったことや、里山保全活動などが社会貢献として評価されたと考えています。今後の課題としては、敷地内の緑地という制限がある中で、いかに質の高い緑地を構築していくか、ビオトープをはじめとした製作所内の緑地を従業員に対して更に広く周知することや、行政などとのコミュニケーション強化などがあるかと思います。

離島の里山保全活動から気づくこと

里山保全活動はどのようなことを行っているのでしょうか。

横田さん:高齢化と過疎化が進む丸亀市の離島での里山保全活動に取り組んでいます。島の方からさまざまな要望を受けて、観光資源でもある登山道の整備や、海岸保全として浜に打ち上げられたゴミを収集するなどの作業をしています。

里山保全活動を行う中で何か環境の変化などに気づくことはありましたか。

横田さん:瀬戸内海ではゴミは少ないのかなと思っていましたが、海岸清掃をやっていると島に行くたびにゴミが打ち上げられていて、海のゴミ問題の深刻さを感じます。特にペットボトルや発泡スチロールなどのプラスチックゴミが多いですね。

横田さんの写真
里山保全活動では、海岸の清掃を瀬戸内海の離島で定期的に行う。
里山保全活動では、海岸の清掃を瀬戸内海の離島で定期的に行う。

国内外で特に若い世代の気候変動に対する危機意識が大きく高まっています。環境のことでその他に関心のある事はありますか。

横田さん:気象庁の発表で猛暑日が4日以上増えた都市として香川県が入っていることに驚きました。猛暑日の増加や豪雨災害の発生など、気候変動による異常気象が増えてきており、これからの環境に対してできることはないか、以前より考えることが増えたと思います。

ご自身が生活の中で環境を意識した取り組みをしていることはありますか。

横田さん:仕事上、製作所内の廃棄物管理も担当しているので、マイバッグを持参したり、詰め替え製品などを購入してゴミを出さないことは私生活でも意識しています。リサイクルより、まずゴミを出さないことが大事だと思います。

持続可能な社会のために、私たちができることは何だと考えますか。お仕事でもご自身の生活でも今後取り組みたいことなどがあれば教えてください。

横田さん:仕事上でも当製作所の環境推進事務局として環境に直接関係する業務に携わっているため、三菱電機グループが掲げている「環境ビジョン2050」の達成に向けて、プラスチックの有効利用率の向上や、水資源の使用量削減などの活動を計画、実施していくことで、持続可能な社会の実現に向けて貢献していけると考えています。

水資源の使用量削減というのはどういう手法で行うのでしょうか。

横田さん:香川県は雨が少ない地域で、時折、水不足で取水制限などもあるので、水資源の有効活用は重要です。当製作所でも、屋根に降った雨水を雨水タンクに貯めてビオトープで使うなどの取り組みをしています。

受配電システム製作所でも積極的に取り組んでいる生物多様性の保全に関してはいかがでしょうか。

横田さん:生物多様性への取り組みを、ビオトープを中心として製作所全体に広げていくべきだと考えています。そのためにビオトープ周辺に広がるクロマツ林や従業員に向けた遊歩道や緑地などを整備し、生きものの休息地としてだけでなく、従業員が自然を感じ、生きものについて考える場としても活用していきたいと考えています。

横田さんの写真 横田さんの写真