2026.03.19
変わろうとする姿勢を体験として届ける。東南アジアで開催「#BETTERVERSE」への挑戦
三菱電機は2025年、イノベーティブカンパニーへの変革を打ち出した。その姿勢を東南アジアに対してかつてない手段で伝えようと奮闘した若手従業員がいた。彼らが国を超えた仲間たちと一体となり生み出したのが「#BETTERVERSE」という音楽を用いたプロジェクト。前例のない挑戦に込めた思いを松本沙希さん、伊藤優汰さんに聞いた。
目次
前例のないプロジェクト「#BETTERVERSE」はこうして生まれた
―東南アジアで三菱電機の変革への姿勢を伝えることについて、どんな課題認識をされていましたか?
松本:元々東南アジアでは、2024年までサッカー国際大会へ協賛しており、三菱電機グループに対する認知度は高まったと思っています。ただ、当社の変革への姿勢が伝わっているとは言いがたい。「一緒に新たな価値を作り出していきませんか?」という共創パートナーを見つけるには、そもそも当社が変革を目指している姿勢を伝えないといけないと考えたんです。
―東南アジアで変革の姿勢を伝える手段として、なぜ#BETTERVERSEが生まれたのでしょう?
伊藤:当社の変革への姿勢を伝えるにあたって、まずはお客様になってもらいたい、共に仕事をしたい方がどういう人たちなのか。そのターゲットについて議論しました。様々なデータを元に、タイやシンガポールのメンバーたちと丁寧にディスカッションを重ねた結果、現状に満足せず、スピード感をもって挑戦する20~30代の若手ビジネス層を仮想ターゲットに絞り込みました。
松本:タイやシンガポールでは、日本よりマネジメント層が若くて20~30代でも決裁権を持っている方や、会社のリーダーになっている人が多いですね。
―ターゲットは決まった。では音楽プロジェクトをやろうと決めたのはなぜでしょうか?
松本:若手ビジネス層の心に訴えるにはどういう手段が適しているのか。現地のターゲットの価値観や趣味等をプロファイリングして分析していく中で、彼らが流行や芸術に対して感度が高い人たちという事が判りました。そこで、アートや音楽を切り口に、彼らに体験してもらおうと。
―音楽を切り口にするとはチャレンジングですね。変革に取り組む姿勢をどうやって伝えようとしたのですか?
伊藤:企画を考える上で大切にしたのは、こちらから一方的に発信するのではなく、ターゲットの方たちに、三菱電機グループがより良い社会を目指すイノベーターだと伝わるにはどういう方法がベストなのかを判断軸にした点です。当社は機器を売って終わりではなく、その機器から得られたデータなどから新しい価値を生み出しお客様に還元する「循環型ビジネス」を指向しています。#BETTERVERSEでもユーザーの心拍数などのバイタルデータやAIとの会話で得られた考え方などを組み合わせて新しい価値、つまり音楽やミュージックビデオを創出しユーザーに還元する。その一連の流れが循環型ビジネスの目指す姿を示すと考えました。
タイのリアルイベントではドーム内に#BETTERVERSE参加者が作ったミュージックビデオが投影された。
―なるほど、私もやってみましたが「あなたは未来をどんな世界にしていきたいですか」など、音楽を作る目的にしては深い設問がありました。その意図は?
伊藤:設問に対する選択肢は、いずれも当社が社会をよりよくしていきたいという姿勢を表したものになってます。今回のプロジェクトのターゲットは社会をよりよくしていきたいという想いを持った方でしたので、共感を持ってもらいつつ「三菱電機ってこういう企業なんだな」と知ってもらう。制作チームと議論を重ねて、設問や選択肢を改良していきました。
―変革への動機は?の問いに対して入力した答えが、音楽の歌詞として出てきて驚きました。
松本:社会を変えるための動機をお互いにシェアできないかと思って、入力頂いた言葉を音楽に入れるようにしました。SNSに投稿してもらってユーザー同士で共感しあえたらと。
合言葉は「Expectation(エクスペクテーション)」。一体感を作り上げたTシャツ
―企画立ち上げが2025年2月、タイでのリアルイベント実施や音楽アプリをリリースしたのが同年12月。時間がないなかで、意識したことはなんでしょう?
松本:#BETTERVERSEのメンバーはタイやシンガポールの現地従業員を含めて30人ぐらいの国際チームでした。一番大切にしたのは「当事者意識」です。つまり、誰かが決めたのではなく、みんなで決めたプロジェクトだという点です。打ち合わせ一つするのも全員の時間調整が大変で。会議では英語で話すのですが、タイも日本も英語は第二外国語なので、なかなか伝わらず葛藤するときも多々あって、心が折れそうでした。でもそこをふんばって丁寧に時間をかけてやりとりを重ねたおかげで、タイやシンガポールの現場判断で進めてくださいと任せることが徐々に増えた。それがプロジェクト成功の理由だと思っています。
―意識合わせで工夫した点はなんですか?
松本:「Expectation(エクスペクテーション:期待)」をチームのキーワードにしました。つまり、三菱電機グループへの期待値をあげてもらう。だから出張で対面会議をした時に「Expectation」と胸に大きく書いたTシャツをもっていってみんなで着て「Expectation!」と叫んで、ゴールを共有したり(笑)。「本社が決めたことならそれでいいんじゃない」と言われるのが一番いやだったんです。「みんなの地域でやる話だし、みんなと一緒にやろう!」と。
―Tシャツで一体感を作り上げていったんですね!リアルイベントと音楽アプリは12月に同時開催でしたが、スムーズにいきましたか?
松本:色々ありましたよ。開催直前に実施したプレスデー当日にシステムがシャットダウンした時は焦りました。でもプロジェクトメンバーが走り回って原因を究明してくれて、臨機応変に対応することができました。
伊藤:アプリ関係でもドームにミュージックビデオが投影されないとか、不適切な言葉をはじく設定を厳しくしたために、「Passion」や「Joyful」のような言葉まではじかれるなど現地で設営して初めて出るトラブルも多々ありました。言葉については、その場で設定を書き換えてもらうなど対応力が鍛えられましたね。
挑戦で得られたこと イノベーティブを続けるために
―リアルイベントの手ごたえはいかがでしたか?
伊藤:タイで人気のデジタルアートイベントに参加させてもらう形でしたが、イベント全体10日間で約37万人を動員しました。その中で三菱電機ブースを体験して下さった方は1万3000人。18時から23時という限られた時間の中で行列もでき、想定をかなり上回りました。
松本:SNSに「楽しかった!」とか「音楽作ったよ」などと体験を載せてくれる方がめちゃくちゃ多かったです。仮想ターゲットとしていた若いビジネス層の方たちが来場され、バシバシ写真を撮って下さっているのを見て「あぁ、よかったな」と思いましたね。
―従来の三菱電機のイメージを超えた「(良い意味での)らしくない」イベント、不安はなかったですか?
松本:ありましたよ。予期せぬトラブルや問題が日常的に発生するので、結構ヒリヒリする感じでした。でもやりがいの方が大きかった。会社がイノベーティブカンパニーへの変革を掲げる中、従業員一人ひとりが変わらないと、っていうところもありましたし。
―一緒に苦労したメンバーにはどういう思いをお持ちですか?
伊藤:僕は正直、敷かれたレールを歩くのが好きな人間で、自分の意思決定が正解かどうかを気にするタイプなんですけど(笑)、今回は前例がないイベントをタイやシンガポールのメンバーを巻き込んで作り上げることができました。タイで1年間OJT研修生として過ごされたご経験を踏まえながら、正解がない施策に対して意思決定していた松本さんは、イノベーティブカンパニーを体現した従業員の一人じゃないかなと思います。
松本:嬉しくなっちゃいますね(涙)。私は元々イノベーティブな人間ではなく、ここまで自分の意思で仕切ってやるのは初めてかもしれないなと思うぐらいチャレンジングでした。でもみんなで苦しんで、みんなでハッピーになれたという点がプロジェクト全体として本当に幸せで、メンバーには感謝の気持ちでいっぱいです。
―今回の経験を今後にどうつなげていきたいですか?
伊藤:正解がない仕事でも意外と自分たちがいいなと思ったものを形にしていいんだと。今までやってきたことを踏まえながらも、自分の考えや直感を信じて、一歩踏み出せる自信がついたかなと思っています。
松本:もっとグローバルな施策をやりたいですね。一つのチャレンジが仲間との結びつきによって無事成功したと思うので、自信にもなりました。多少のトラブルどんと来いっていうマインドになって、どんなに文化が違うメンバーでも仲間と共に乗り越えられる。次のチャレンジに対するモチベーションというか、応援材料になるなと思いました。
伊藤:例えば三菱電機グループにこういうイメージを持ってもらいたいなどの目標があった時、国によって文化・価値観が大きく異なる現地の方に、いかに興味関心をもってもらって期待値につなげるかというローカライズのやり方、ノウハウの部分を経験できました。そのノウハウは今後、他の国での施策でも活かせると考えています。
INTERVIEWEE
三菱電機 ブランドコミュニケーション部 CXコミュニケーショングループ
松本沙希
#BETTERVERSEの実務的とりまとめ担当。2018年入社。2024年7月まで1年間タイでのOJT研修の後、サッカー国際大会スポンサーや企業展示会を担当。
INTERVIEWEE
三菱電機 ブランドコミュニケーション部 ビジネスコミュニケーション2グループ
伊藤優汰
#BETTERVERSEのアプリ開発担当。2021年入社。普段は家電や住宅用設備品のコミュニケーションなどを担当。元々海外の仕事をしたいと思っていた。
- 掲載されている情報は、2026年2月時点のものです。
制作: Our Stories編集チーム