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2024.03.15

三菱電機を次のステージへと進める変革プロジェクトの活動

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三菱電機を次のステージへと進める変革プロジェクトの活動 三菱電機を次のステージへと進める変革プロジェクトの活動

創立から100年以上経っている三菱電機。その歴史の中でいろいろなことをたくさん経験し、常に変革を起こしながら時代を乗り越えてきた。しかし、そうして築き上げてきた組織風土の中には、皆に誇れる残すべきものもあれば、問題となる改めるべきものもあり、三菱電機は今また変革が求められる時期を迎えている。

その中で生まれたのが「変革プロジェクト」。漆間社長自らのアイデアで発足し、プロジェクトリーダーを務めて進めているこのプロジェクトは、一体、なにをどのように変革していく取り組みなのか、プロジェクトのキーパーソンたちに話を聞いた。

写真左から
前田 俊介さん(インフラBA変革プロジェクトグループ 兼 全社変革プロジェクトグループ)
金元 真希さん(人事部ダイバーシティ推進・人事企画グループ 兼 リワード企画グループ 兼 全社変革プロジェクトグループ)
大山 浩子さん(全社変革プロジェクトグループ 兼 法務・コンプライアンス部)
鈴木 稔也さん(全社変革プロジェクトグループ)

次の100年に向けて、
会社を本気で変えていくプロジェクト

ー はじめに、変革プロジェクト(以下、変革プロ)はどのようなものなのか、お聞かせください。

鈴木:歴史のある企業ですから、残すべきこともあれば、変えるべきこともあります。価値観の変化が激しくなり、多様化する現在の環境では、変えるべきことの中でも特に、いつからか根付いてしまった良くない組織風土を変えなくては未来がない。そうしたことをきっかけに、変革プロがスタートしました。

ー 具体的に、どのような組織風土を目指しているのでしょうか。

鈴木:目標とする大きな柱が三つあります。一つ目が「上にものが言える」ということ。二つ目が「失敗を許容する」ということ。そして最後が「協力して課題を解決する」ということ。それらが可能な組織風土を醸成するのが変革プロのミッションです。最終的にはより良い会社になって、グローバルな観点での競争力を高めていけたらと考えています。

ー 何名の方がこのプロジェクトに参加しているのでしょうか?

大山:変革プロにも2種類ありまして、全社として取り組む「全社変革プロ」と、事業本部や製作所ごとの「事本変革プロ」「場所変革プロ」があります。全社の方には43名、事業本部・製作所の方には約300名が参加しています。

ー 変革プロへの参加は応募制だと伺いました。皆さんも、「我こそは」と手を挙げられた方々だと思うのですが、参加するに至った経緯を教えてください。

鈴木:入社以来、エレベーターの製品開発に携わってきたのですが、その中で、三菱エレベーターの強みは品質と技術だと自負していましたし、そのために必死で働いてきました。ですが、常に順風満帆というわけではなく、品質問題を起こしてしまい悔しい思いをすることもありました。背景を調べてみると長年の間に積み重なってしまった組織風土の問題が一因と分かってきたので、これを正すことで、三菱電機で働くことに改めて自信や誇りを持てるようにしたいと思い、参加を決意しました。

大山:私は元々法務・コンプライアンス部に所属し、各事業における契約や不具合が発生した際の対応のサポートをしていました。そんな中、ある案件で、実は社内には本音を言えず問題や悩みを抱えて仕事をしている方が多くいることや、自分はそうした問題の本質が見えていなかったということに気付かされ強い衝撃を受けました。そうした社内に潜む課題に対して自分にできることがあれば全力で取り組みたいと思っていた矢先に組織風土改革(変革プロ)の募集があり、手を挙げました。

金元:私は直感的に「新しいプロジェクトに挑戦してみたい」と思いました。それと、かねてから所属部門の単位では解決できないような問題に多く直面していて、全社・部門を横断する組織であれば、変革を後押しできると考えたためです。

前田:時代もあるとは思いますが、若手のエンゲージメントが低下しているのを感じていましたし、そこに対する危機感もありました。自身も中堅として後輩を引っ張っていく立場になったこともあり、こうした課題を何とかしたいと参加を決めました。また、変革なくして当社の、ひいては日本の製造業の未来はないと思っていたので、経営戦略と連動した組織風土改革を遂行することで、将来に期待を持って仕事ができるようにしたいし、そうした気運を高めたいなと。

ひとくくりにはできない多様な課題がある

ー 変革プロとしての具体的な活動内容をいくつかお聞かせください。

大山:多くの施策を展開していますが、例えばコミュニケーション関連施策では「心理的安全性」の向上や「1on1ミーティング」の推進、業務改善施策では「会議改革」と銘打って会議の在り方の見直しなどを進めています。他にも、自発的な成長を後押しするための新しい機会や場(プラットフォーム)を設けるなどしています。当社は事業の幅も広く、様々な専門性や知見を有した人たちが社内にたくさんいますので、各人が自身の得意分野について講師となって、従業員同士が学び合い、教え合い、つながり合う、そんな主体的な活動を促しています。

ー グループ会社を含めて約15万人の方が在籍しているともなれば、今までと違うやり方に変えることは、簡単なことじゃないですよね。

大山:そうなんです。職種も多岐に渡りますし、そもそも三菱電機だけでも製作所などの拠点が20以上あります。拠点ごとに独自の風土があったり、システム環境が異なったりもするため、例えば「業務関連の連絡手段をメールからイントラネットへの掲示に変えます」となっても、なかなかすんなりとは進まなくて……。

鈴木:拠点によって抱えている課題も全然違うんです。事業的な好・不調によっても左右されますし、支社や研究所のように製作所とは環境の異なる拠点もある。なので、風土の課題と言ってもひとくくりにはできません。そのあたりを踏まえてしっかりとヒアリングし、各拠点の課題を確認していくことも大事です。

前田:私は、元々の所属が電力・産業システム事業本部だったので、今はその事業本部の組織風土改革を主に担当しています。その中で、全社変革プロが提唱する心理的安全性や1on1といった施策を推進する際には、しっかりとその施策の目的などを情報伝達していますし、必要であれば随時補足説明や部門に応じたカスタマイズを加えながら展開しています。

ー 2021年10月に変革プロが発足して、2年半が経とうとしています。その中で、目に見えて変わった部分はありますか?

金元:「〇〇殿」がなくなったことですね。

ー どういうことでしょう?

金元:社内の人とのメールのやり取りで使う敬称は「〇〇さん」が多いと思うんですけど、当社では「〇〇殿」だったんです。よく考えたらちょっと違和感があるんですが、それが社内ルールだったんです。昨年、まずはクイックにできることから始めよう、ということで、敬称を「さん」にすることを会社のルールブックで推奨したんです。それは随分浸透してきたように感じます。

鈴木:たしかに、みんなが当たり前に、さん付けするようになりましたね。

前田:役職で呼ばないことにもなりました。

鈴木:私も課長をやっていた時は、みんなからずっと「課長」と呼ばれていたんです。全然名前で呼んでもらえない(笑)。そこにすごく距離を感じていたので、今ではみんなから名前で呼んでもらえて嬉しいですね。

ー 名前で呼ばれると、グッと距離が縮まる感じがしますよね。それがコミュニケーションの促進にもつながっていきそうな気がします。

鈴木:お互いに構えてない感じがしますよね。壁が取り払われるような。

金元:あと、服装のカジュアル化も推進しました。見た目からカジュアルになることで、会社全体の雰囲気が柔らかくなったと感じます。もちろん、安全規定やお客様対応などの制約もあるので、あくまでTPOに応じて対応できる部門・人たちに限られますが……。

前田:服装の変化をコミュニケーションのきっかけにしようという企画でしたが、実際に雑談が生まれやすくなったと感じています。私もいつもはこんな感じのカジュアルな服装なんですけど、たまにバチッとスリーピースのスーツを着ていくと「あれ、今日何かあるんですか?」と絶対に声をかけられる。話しかけやすい柔らかい雰囲気づくりと、話しかける話題作りの両方の効果があったと思います。鈴木さんのバッジもその一例ですよね?

鈴木:前田さんに教えていただいてね(笑)。このバッジが何気ない会話のきっかけになったりもするんです。それまではスーツ一択だったので、カジュアル化は意外にも大きな影響を与えていると感じます。

金元:男性比率が高い会社なので、その見た目や雰囲気が変わると、社内の雰囲気も大きく変わるんです。

ー 接しやすくなることで風通しも良くなりますし、雑談から大事な話に進むこともありますしね。

鈴木:クイックに始めたことですが、大きな変化につながっていると思います。

一歩ずつ、少しずつ、変化してきた会社の風土

ー 変革プロでの活動を通じて学んだことや得た経験などあれば、教えていただけますか。

金元:私は2022年度から、変革プロと兼務しつつ人事部で働いています。なので、人事にまつわる変革プロの施策に関わっているのですが、その中の一つに、人事処遇制度を刷新する施策があります。20年ぶりに変えるということに加えて、従業員は三菱電機単体で約3万5千人。職種や業種、事業も様々で、製造現場の人からオフィスワーカー、研究者もいるなど、考慮すべきことが多く、とても大きなプロジェクトです。

ー 多様な働き方をしている従業員を対象とした人事処遇制度の変革というのは、非常に難しそうですね。

金元:制度改定を検討し始めると、ここを変えたらあっちもこっちも変えないといけない、というように、なかなか収拾がつかないんです。これだけの従業員がいれば一つの町や市くらいの規模ですし、パンドラの箱を開けたなっていう感じで(笑)。会社ってこういう仕組みで回っているんだとか、人事部にもこんな苦労があるんだっていうのは実際に担当してみないとわかりませんでした。なので、変革プロの活動に関わることで、制度を作る側の気持ちも理解できて、いい勉強になっていますね。

ー 具体的にどのような制度に変えるのかについて、可能な範囲で構わないので教えていただけますか?

金元:一人ひとりの“自律的キャリア開発支援”と“成長につながる適正な評価の実現”という2つのコンセプトを軸に制度改定します。変革プロの活動の中で従業員にヒアリングした結果見えた大きな課題の一つに「そもそも何が評価されているのかがわからない」というものがありました。20年前に作られた現行制度が必ずしもダメなものではないのですが、長年同じ制度で運用する中で、制度主旨が正しく伝えられない・伝わらなかったり、解釈が曖昧になったり、現在の価値観とマッチしない部分が出てきたため、改めて制度コンセプトから見直しました。

ー ありがとうございます。苦労も多いように感じますが、その中で充実感や達成感を感じる瞬間などもお伺いしたいです。

大山:この仕事でいろいろな従業員の方とお話することを通して、組織の問題や課題を特定して、それを解決できないかと取り組むわけですが、その中で「変革プロのおかげで会社が変わってきた」といった声をいただけたりします。そのように言っていただけると、この仕事をやっていてよかったなと心の底から思います。それと、2023年の夏に従業員の皆さんに向けて「1年前と比較して当社の風土がどう変わりましたか?」とアンケートを取ったんですが、約4割の方が良い方向に変わっていると答えてくださって。それを多いと見るか、少ないと見るか、という捉え方の違いはありますが、私たちの中では、この1年で約4割もの人がポジティブな実感を持ってくれているんだとわかった時は、すごく嬉しかったです。

鈴木:特に2023年度になってから、各地の製作所や支社を訪問してお話をさせていただく中で、「風通しが良くなったよ」とか、「1on1やっていますよ」とか、「ある作業がすごく楽になった」とか、そういう話が出てくるようになったんです。小さな変化ですけど、本当に嬉しいですよ。

前田:辛いことと嬉しいこととで比べたら、圧倒的に辛いことの方が多いです。やはり万人に受け容れられる施策というものはないですし、どうしても不満の声の方が目につきやすいので。でも、2人と同じく、感謝の声をいただけると励みになります。また、こうした新しい活動を通じて社内外にいろんなネットワークが増えるので、そこから得られる新たな視座などは、学びとして非常に良かったと思います。

ー 変革プロの仕事を通じて、社外の人とも接点が増えるんですね。

前田:同じように組織風土改革に取り組む会社は多く、そうした方々と交流させていただいたりするんですよね。

鈴木:私たちは21年度から始めましたが、 それよりもっと早くから取り組まれている企業もあるので、そちらにお話を伺いに行って、自分たちの考えている勘どころについてお話ししたり、先行して取り組まれた経験からの学びや異なるアイデアをもらったりするという交流があるんです。また、最近は逆に当社の取組みについて教えて欲しいという相談をいただくことも増えました。

「もっと素晴らしい明日」を目指す、
三菱電機の本気の変革

ー お話を伺っていますと、多くの従業員を抱え、多くの企業と接点がある三菱電機の風土が変われば、社会全体に与えるインパクトも大きいと感じました。三菱電機が変わることは、ひいては日本全体を変えていくことにつながるような気がします。

金元:私もそれをモチベーションに変革プロの活動に取り組んでいます。社内だけを見ると、ちょっとした変化かもしれませんが、長期的に考えると、与えるインパクトは大きいはずですよね。

大山:漆間さんが変革プロに対して、「自分たちの職場を自分たちでよくできるという気運を高めていくことが必要だ」とおっしゃっています。私はこの言葉にとても共感しています。この気運が高まって、みんなが自分たちの職場を自分たちでよくできるようになれば、もっとクリエイティブな仕事ができるでしょうし、自分の働きやすさも追求できる。そうしたら、もっと三菱電機が世界に貢献できると思うんです。

前田:日本はこれから先人口がもっと減っていくのは間違いないし、GDPで言えば一人当たりの平均では東南アジアの国々に追いつかれそうな状況が今です。資源を持たない日本が製造業で勝てなければ、外貨を得られないし、食料も買えないし、エネルギーも供給できない。だから、やっぱり一人ひとりが意識して、生産性をどんどん上げていき、企業価値も上げていくことが、ひいては国の発展につながっていくだろうと思います。変革プロの活動を通じて、我々が成功体験を積んでいき、それを包み隠さず色々な会社とシェアしていくことで、日本の製造業全体をさらに発展させられたらいいなと個人的には思います。

大山:変革プロがスタートした当初から、漆間さんたち経営陣はトップから、私たちはボトムから変えていこう。両側から組織風土改革を進めていこうと一体となって活動しています。漆間さんはお忙しい中でも、いつも「何か困っていることはないか」とケアしてくれますし、一緒に考えてくれます。そこも本当にありがたいと感じていますし、だからこそ我々も本気で変えたいと思って取り組むことができています。

鈴木:私たちはトップとボトムの融合を目指していて、それによって化学反応が起きて、変革が進むと思っています。漆間さんをはじめとする役員の方々には、22年度は年間300回ほど、23年度は上期だけで既に300回以上、従業員と話し合う場を設けていただきました。そこまでして、トップの方々が自分のメッセージを私たちに伝えようとしている。大山さんが言ったように、本気なんです。

ー 最後に、今後の展望を聞かせてください。

鈴木:今は変革活動を三菱電機単体から始め、徐々に一部の関係会社に広めている状況です。この輪をグループ全体の約15万人に向けてどう広げていくかが課題ですね。それが三菱電機グループを根本から変えることにつながると思います。

大山:先ほどもお話したように、自分たちの職場を自分たちで良くしていけるという気運を高めていかないといけないなと。そのためには、私たち「変革プロ」のメンバーだけではなく、多くの人に自分ごと化してもらい、「自分たちで変えていいんだ」「自分たちで声をあげて変えなきゃ」と思ってもらうことが必要です。今後は、そうした仲間を一人でも多く増やしていって、輪を大きくしていけたらと思っています。

掲載されている情報は、2023年12月時点のものです。

制作: Our Stories編集チーム

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