体系的な学びとマインドセット変革で、事業を牽引するDX人財へ。三菱電機「DXイノベーションアカデミー」が描く成長ストーリー

2025.08.07

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2025年4月、三菱電機に新たな学びの場が誕生した。「DXイノベーションアカデミー(以下、DIA)」—2030年度までにグループ全体で2万人のDX人財確保を目指す当社の本気の取り組みだ。

この目標の背景には、当社が掲げる「イノベーティブカンパニー」への変革がある。従来のコンポーネント中心のビジネスから、コンポーネントに加えデータを駆使した顧客中心のビジネスモデルへ。その変革を支える人財基盤として、DIAは重要な役割を担っている。

初代アカデミー長を務めるのは、宇宙システム部門で20年以上のキャリアを積み、2024年4月に人財開発センター長に転身した西川孝典さん。「三菱電機は人にやさしい会社だと感じています」と語る西川さんに、DIAについて話を聞いた。

目次

事業変革の核心は「人」。イノベーティブカンパニーへの挑戦

― まず、DIAとはどのような取り組みなのか、簡単に教えてください。

西川:DIAは、三菱電機グループのDX人財を体系的に育成するための機関です。2030年度までにグループ全体で2万人のDX人財確保を目指しており、その実現に向けた人財育成の要となる育成機関として、今年4月に設立しました。

DIAでは、従来のような個人が自由に講座を選ぶスタイルではなく、DXに必要な7つのスキルセットに応じて、初級から上級まで段階的に学べる体系的なプログラムを提供しています。

― DIAを立ち上げた背景について教えてください。

西川:当社は今、「イノベーティブカンパニーへの変革」という新たな方針で、製品から得られるデータを活用してお客さまや社会の課題を解決するソリューションを提供する、より付加価値の高いビジネスへと変革を進めています。

この変革を実現するための3つの柱を立てました。1つ目が「ビジネスモデル変革」、2つ目が「デジタル基盤強化」、そして3つ目が「マインドセット変革」です。

イノベーティブカンパニーへの変革の実現においては、DXを支える人財をしっかり育てていく必要があると考えており、現在約1万人のDX人財を2030年までには2万人まで拡充したいと未来図を描いています。

ただ、これまでコンポーネントを中心とした事業を展開してきた当社において、DX人財育成は簡単なことではありません。その実現においては、単にDXに関する知識を習得するだけでなく、これまでの延長線ではないDXという領域に失敗を恐れずにチャレンジするマインドセットの変革が必要です。

そこで、多様なバックグラウンドを持つ人たちが共に学ぶことで新たな価値を創造するDIAという新たな“学びの場”を立ち上げました。

7つのスキルセットによる体系的育成プログラム

― 三菱電機では「DX人財」をどのように定義されているのでしょうか?
西川:当社では以下の7種類のスキルセットを持つ人財と定義しました。

  • DXマーケティング
  • ソリューションクリエーション
  • データエンジニアリング
  • UI/UXデザイン
  • DXアーキテクチャーデザイン
  • DXエンジニアリング
  • DXクオリティーアシュアランス

西川:アカデミーにおいても、それぞれの分野を専門的に学べる7つのコースを整備し、顧客に近いフロントサイドから開発側のバックサイドまで幅広い領域をカバーできるよう設計しました。

― DIAは具体的にはどのようなカリキュラムになっているのですか?

西川:入門から上級まで4つのレベルを設定しています。入門レベルでは全社員を対象にDXの基本的な知識とマインドを、初級では基礎知識の習得を、中級では専門知識と実践を、上級では次世代リーダー向けの課題解決型講座を提供します。

これにより、これまでDX関連の業務に従事していた人はもちろん、他業務からの職務転換者や新規入社者など、個々人の保有するスキルや知識レベルに応じた幅広い育成を可能とします。

ただし、DIAは単に学習コンテンツを提供するだけではありません。重視しているのは、受講者が納得感を持って自分から学びたいと思える育成環境作りです。

実務に直結するプログラム内容で学びの意味を実感できることを大切にしています。また、段階的な認定制度で個人の成長を可視化します。

さらに、新たにDXに取り組む方が多いと思われる初級講座においては、オンデマンド形式を中心にすることで、学習に対するハードルを下げ、個人のペースで気軽にチャレンジできるように配慮しています。また、コミュニティでの交流を通じて自身の向かうべき方向性や成長を共有することで、継続的な動機づけを行う。こうした総合的なアプローチで、受講者が主体的に取り組み、成長を実感できる場となることを目指しています。

「4つのつながり」で実現する新しい学びの形

― アカデミーの特長として「4つのつながり」を掲げられていると聞いています。詳しく教えてください。

西川:単なる知識習得ではなく、DXの総合的な学びの場にしたいという想いから、「4つのつながり」をテーマにしています。

1つ目は「業務とつながる」。7つのスキルセットごとに設定した独自のプログラムで、受講者が事業に戻った時に、学んだ知識を実際の業務で活用できるよう、実践的なプログラムを提供しています。

2つ目は「一人ひとりのキャリアアップとつながる」。プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4段階の認定制度を設け、7つのスキルセットごとにレベルを可視化し、受講者のモチベーション向上とキャリアアップをサポートします。

西川:3つ目は「最先端とつながる」。早稲田大学をはじめとする外部パートナーとの連携により、常に最新の技術や手法を取り入れています。

最後が「コミュニティとつながる」。DIAでは、事業の枠を超えた人と人との出会いや交流、多様なバックグラウンドを持つ人々が共に学ぶことで、新しい価値を創造することを目指しています。

西川:来年初旬には横浜に新たな人財育成拠点「横浜イノベーションスタジオ」を開設予定で、リアルな学びの場を通じてコミュニティを育てていきます。

横浜に新たな学びの拠点がオープン

2026年初旬、DXの学びの拠点として「横浜イノベーションスタジオ」がオープン。こちらは単なる研修施設ではなく、三菱電機の学びの“顔”として整備される予定です。

共創空間「Serendie Street Yokohama」を構え、DX推進部門が集結する横浜で事業と密に連携した育成を行うほか、研修・イベント等の実施スタイルの多様化に適した設備を備えます。

― 「横浜イノベーションスタジオ」に込めた想いや、今後期待することを教えてください。

西川:従業員が主体的に学ぶとともに、事業領域、専門性を超えてDXという同じ志をもった仲間が集うことで、喜びや成長を実感できる学びの場となり、ここから三菱電機の新たな学びの文化が創造されていくことを期待しています。

早稲田大学との産学連携が生み出す「理論と実践の融合」

― DIAでは早稲田大学との産学連携による独自カリキュラムも提供されていますが、この連携にはどういった背景があったのでしょうか?

西川:昨年、DIAの立ち上げにあたって、事業に直結する人財をスピード感をもって育成するため、社内に留まらず、社外の最先端の知見と実践を組み合わせた連携を模索していました。早稲田大学はデータ科学センターを中心に、特にDXに関して多くの先進的な取り組みをされており、昨年10月に初めてお話しした際、すぐに意気投合したんです。

早稲田大学も、理系だけでなく文系学生にも広くDXの重要性を認識し、自分事としてDXを学んでもらうという同じ課題感を持たれていました。

また、データサイエンス領域の教育や研究を通じて様々な社会問題の解決を目指しており、理論と実践の組合わせの重要性など、目指すべき方向性が一致していました。早稲田大学データ科学センターの教育プログラムをDIAに組み込み、その成果をフィードバックして双方の価値向上を図るとともに、講演会、交流イベントなどを通じた相互の人財交流を通して、大学と企業が一体となった産学共創の新たな仕組みがDX人財育成を通して構築できるのではないかという、大きな期待をお互いが感じられたことが、スピーディな実現につながったと考えています。

産学連携により、2025年度は3つの講座を開設。当社専用講座のDX人財育成データサイエンス教育プログラム並びにスマートエスイーIoT/AIコース、スマートエスイーDXコースです。理論と実践を同時に学べる画期的なプログラムになっています。

2025年5月19日に開催されたDXイノベーションアカデミーの開講イベントでは、三菱電機の経営陣が一堂に会し、DIAにかける想いを語った。CHRO 阿部恵成常務執行役、CDO 武田聡専務執行役、そしてアカデミー長の西川氏が登壇し、それぞれの立場から人財育成の重要性と事業戦略との連動について熱く語る姿が印象的だった。

イベントでは早稲田大学データ科学センターの松嶋敏泰所長にもご講演いただき、産学連携の意義と今後の展望について説明。会場及びオンラインで1,200人超の当社グループ社員がリアルタイムで参加し、新たな学びの場への期待と関心の高さがうかがえた。

ー 社員の方がアカデミーを受講することで、どのような変化を期待されていますか?

西川:技術やスキルの習得はもちろんですが、それ以上に重要なのはイノベーティブでチャレンジングな考え方やマインドへの変化です。学んだことが事業に戻ったあとに広がっていく、そんな波及効果を期待しています。

従来の各事業で完結していた製品作りから、より広い事業間連携やサービスにチャレンジしていく。そうした新しい風土や文化を、DIAでの学びを通じて創り上げていきたいと考えています。

「人を大切にする会社」が描く、一人ひとりに寄り添う能力開発支援

― 求職者の方にとって、DIAはどのような魅力があるでしょうか?

西川:新卒の方なら入社後のキャリア形成が気になるでしょうし、経験者採用の方も、即戦力としてこれまでの経験をどう活かして会社に貢献するか悩まれることもあるかと思います。

そうした不安に対して、我々は体系的なプログラムで入社後のキャリアや能力開発をサポートしていることを知っていただきたいです。

実際、DIAに限らず三菱電機にはさまざまな施策があります。私自身、入社当初は三菱電機に対して「固い会社」というイメージを持っていましたが、実際は人事施策やコミュニティ活動など、従業員を支える仕組みが充実していて、本当に「人にやさしい」会社だと感じています。

― 今後、アカデミーはどのように展開していく予定ですか?

西川:DIAは4月に立ち上げたばかりでまずは、DIAの価値を多くの人に感じてもらい、成功体験を味わってほしいと思っています。受講者の皆さんがDIAで獲得したスキルやマインドが実際の事業に繋がれば、周りの人もDIAを受講してみようとなり、それによって更にDIAが広がり、進化・発展していくという良いループを作りたいですね。

現在1,100人ほどの方に参加してもらっていますが、受講者が本当に何を求めているのか、我々が何を提供できるのか、常に現場感を大切に、フィードバックを重ねながら新たな施策を展開していきます。

2030年のDX人財2万人確保は大きな目標ですが、それも通過点かもしれません。DX自体も変化が速いため、私たち自身も新しいことにチャレンジしていくマインドを持ち続け、DXイノベーションアカデミーも常に進化していきます。DIAがDXを通して、新たな“挑戦”の風土を醸成する場になればと考えています。

― 最後に、三菱電機に興味を持っている求職者の方へメッセージをお願いします。

西川:三菱電機は家電から宇宙まで、幅広い製品を扱う大きな会社です。そして、そのすべてを支えているのは「人」です。

人財開発センターでは、DXに限らず一人ひとりに寄り添った学びの場やコンテンツを提供していくことで、入社後の学びやキャリア形成をしっかりサポートする環境を構築してきました。

今後も個人の成長が会社の事業発展につながり、それが最終的に社会貢献につながる。そうした大きなビジョンのもと、多様なキャリアを実現できる会社を目指しています。DIAのような充実した学びの場があり、失敗を恐れずチャレンジできる風土があり、何より一人ひとりを大切にする企業文化がある。その三菱電機で、自分らしく成長しながら社会に価値を提供する—そんなキャリアに共感いただける方に、当社の持つ多様な可能性を感じていただけたら、これほど嬉しいことはありません。

INTERVIEWEE

三菱電機 人財統括部グローバル人財部人財開発センター長/DXイノベーションアカデミー長

西川 孝典

2002年に三菱電機 鎌倉製作所へ入社。宇宙システム部門にて、観測衛星システムの企画提案・設計開発・運用を担当。その後、本社 宇宙事業部にて観測ソリューションや宇宙防衛連携による新規事業を推進。2021年からは鎌倉製作所の宇宙部門全体の経営管理や事業企画を担当。2024年より人財統括部グローバル人財部にて人財開発センター長、2025年4月よりDXイノベーションアカデミー長を務め、三菱電機グループの技術力強化と人財育成をグローバルに牽引している。

西川 孝典

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