2024.06.10
#世界で働く従業員の声 #ブログ #北アメリカ #アメリカ 様々な「違い」をプラスに変えて、社会に役立つ研究を
世界各国にある三菱電機グループの拠点で働き、多様な文化と環境の中で生活をする従業員の方々は、どのような思いを持って日々を送っているのだろうか。今回は、三菱電機の海外OJT研修でアメリカに派遣された長谷亮さんに、1年の研修期間での経験や感じられた思い、そしてこれからについて、ご自身の言葉で綴っていただいた。
目次
日本の職場とは違う仕事に挑戦できる日々
海外赴任前は、情報システムの基盤(計算機、ネットワークなど)の構築技術に関する研究を担当していました。具体的には、電力や鉄道などの社会インフラをはじめ、様々な分野で必要不可欠な情報システムの基盤を、正確かつ素早く構築するための自動化技術を研究していました。
赴任先のMitsubishi Electric Research Laboratories(MERL)では、機械学習のセキュリティに関する研究開発を担当しています。機械学習は画像分類や文書生成などで注目されていますが、分類や生成の精度を劣化させる攻撃があります。MERLでは、攻撃に対する防御手法を研究しています。「それって、赴任前の研究と全然違うのでは?」と思えますが… その通り! 実は海外OJT研修制度は、単に海外で仕事するだけでなく、赴任前とは違う内容に挑戦することも趣旨なのです。
今回の赴任先であるアメリカでは、新しい技術が次々と生み出されており、「日本の職場とはどんな違いがあるのだろう?」と興味がありました。実際、コミュニケーションの仕方をはじめ様々な違いを見つけて、気づきを得ています。この記事では、そんな違いや気づきの一部をご紹介できればと思います。
チームとしてより良い研究を目指す環境
MERLのオフィスは、アメリカ・マサチューセッツ州のボストン近郊、ケンブリッジにあります。ケンブリッジは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの大学があることで有名な街です。気候としては、夏は涼しく、冬はとても寒いのが特徴です。
MERLのオフィスには、快適な研究環境が整っています。それぞれの研究者が部屋を持ち、集中して作業に取り組めるほか、他の研究者を呼んで議論することもよくあります。作業に疲れたら、オフィス内のカフェテリアでコーヒーや紅茶を飲んで、ほっと一息。
MERLオフィス外観
MERL内のカフェテリア
ソファが並んだリラックス空間
MERLではリモートワークが可能なので、柔軟な働き方ができます。意外だったのは、週3日は出社することが推奨されていること。対面でのコミュニケーションも重視していることが分かります。実際、ランチやコーヒーブレイクなどで同僚と雑談する中で、たまたま次の研究のアイデアが出てくることもあり、面白いです。
職場では「チームメンバーが意見を出しやすい雰囲気」を感じました。メンバーが互いに積極的に知見を出し合い、チームとしてより良い研究にしていく流れができています。これは、コミュニケーションの文化的な違いが関係しているように思いました。こちらでは、立場(上司と部下、先輩と後輩など)に関係なく、対等な目線で話し合っている印象を持ちます。例えば、MERLには大学からインターンの学生さんがやってきますが、インターンも立派なチームの一員で、対等に意見を出し合います。
異文化コミュニケーションを楽しむために日々精進
以下はよくある平日の一日の流れです。個人作業の割合も多いですが、個人作業の合間も同僚とのチャットやメールが飛び交っていて、コミュニケーションは活発です。
1日のタイムスケジュール
7:00
起床、朝食、支度
8:30
通勤(バスを利用)
9:30
始業、メールチェック
10:00
同僚の部屋に立ち寄り、研究の議論
10:30
実験用のプログラム開発
12:00
昼食
13:00
関連研究の論文を読む
14:00
チームメンバーとの会議
15:00
実験、プログラム改善の繰り返し
18:00
終業、帰宅
19:00
夕食
20:00
オンライン英会話レッスン、英語学習
21:00
趣味など、リラックスする時間を過ごす
23:00
就寝
こちらで生活していると、いろいろな人と話す機会があります。街でアイスを食べていたら、知らない人から「そのアイス美味しそう、どこで買ったの?」と聞かれたり、バス停にいる人と世間話が始まったり。また、こちらにはアメリカ出身の人ばかりではなく、私を含めいろいろな国の人が住んでいます。この観点からも、相手の立場や背景に関係なく、コミュニケーションをとりやすい文化があるように思います。
ボストン周辺の風景
ボストン市街で見つけた美味しいアイス
英語学習は、地道な積み重ねが大事だと痛感しています。通勤中や家事の合間にリスニングや単語の勉強をしたり、英語でアニメや映画を見てみたり、日常的に無理ない範囲で学習を取り入れています。英語試験のTOEFL iBTでは、赴任前は120点満点中84点で伸び悩んでいましたが、赴任後半年ほど経って受験したところ、105点までアップできました。今は、近隣の学校の社会人向け講義で、効果的なビジネス文書の書き方を学んでいます。赴任直後の状態では英語の講義についていけませんでしたが、今はなんとかなっているので、地道に勉強して力をつけることが大切だと感じます。
人とのつながりを広げることの大切さ
研修を通して、困った時ほど関係者と相談することが大切だと思いました。赴任直後は、研究内容も知らない用語が多く、同僚が話している英語も中途半端にしかわからず、自分の英語にも自信が持てませんでした。そんな時ほど、自分の理解で合っているか確認したり、不明点を細かく教えてもらったりなど、積極的なコミュニケーションが大切だと気づきました。次第に英語でのコミュニケーションにも慣れ、今は自信を持って議論に参加できるようになりました。赴任前は知らなかった研究分野でしたが、今は知識も増え、アイデア出しにも貢献できるようになりました。丁寧に教えてくれた同僚には本当に感謝しかありません。
MERLでの経験を通し、国内外問わずたくさんの人とのつながりを広げ、協力して仕事をしていきたい、と思うようになりました。赴任前は、比較的専門が近い人と一緒に仕事することが大半でした。MERLに来てみて、専門の異なる研究者がそれぞれの知識を活かし、協力して研究の質を高めている姿を見て、とても刺激を受けました。
また、外国で生活してみて、「違い」を楽しめるようになった、と感じます。外国でしばらく生活していると、気候、食事、交通事情などで違いが鮮明にわかり、戸惑います。でも、「この違いには、どんな良い側面があるのかな?」と、楽観的に考えてみることにしました。すると、外国の良さ、加えて母国の良さにも改めて気づき、違いをプラスの方向に捉えられるようになりました。
職場のチームメンバー
私は研究者として、社会の役に立つ技術を研究していきたいと考えています。異文化を経験してみると、実際に役に立つかどうかは技術を使う国や人によって変わってくるはず、と改めて思います。いろいろな人と話し合いながら、社会の役に立つ技術を探していきます。
海外での仕事は、職場・私生活ともに「常識」が通用しない環境に身を置くことで、視野を広げる良いチャンスだと思います。最近では、オンライン会議や翻訳ツールなどが充実し、現地に行かずとも海外の人と仕事しやすい環境は揃っています。ただ、現地で生活して、一緒のチームに入って仕事してみてこそ、文化やコミュニケーションなどの細かい違いがわかると感じます。このような経験はきっと、グローバルな場面で様々な人と接する際、違いをプラスに変える原動力になってくれると思います。
それでは、またどこかでお会いしましょう!
PROFILE
Mitsubishi Electric Research Laboratories (MERL)
長谷 亮
機械学習技術のセキュリティに関する研究開発を担当しています。
2016年
三菱電機入社、情報技術総合研究所 情報システム構築技術部 情報システム高信頼設計技術グループ 配属
2021年
情報技術総合研究所 IoTシステム基盤技術部 クラウドシステム構築技術グループ 配属
2023年
現職
- 掲載されている情報は、2024年4月時点のものです。
制作: Our Stories編集チーム