2026.03.31
FTV Labsとの協業で進めるフィールドサービスの高度化
現場の声から始まった共創
エレベーターやエスカレーターは、都市機能を支える重要な社会インフラである。その安定稼働を維持するため、三菱電機はグローバルで保守サービスを展開している。一方で、保守業務の高度化や業務効率の改善は、各地域で共通する課題となっている。
こうした背景のもと、三菱電機はシンガポールのスタートアップであるFTV LABS PTE. LTD.への出資と協業を決定。保守作業員向け業務支援アプリ「KEGMIL」の実証と実装に取り組んできた。
オープンイノベーションという第一歩
本プロジェクトを担当したビジネスイノベーション本部の川中さんは、投資の背景について次のように語る。
「エレベーターやエスカレーターの保守業務は、安全性だけでなく、日常の利便性や快適さを支える重要な業務です。一方で、高齢化する労働力や既存業務プロセスの非効率といった課題にも直面していました。」
KEGMILは、作業指示の受信、進捗確認、技術者の派遣管理などを一つのアプリで行える仕組みを備えている。川中さんは、「現場業務をよりスムーズにし、スピードを高められる可能性を感じた」と振り返る。
数あるスタートアップの中でFTV Labsを選んだ理由については、「東南アジアでの実績、業界理解、そして多国籍企業のDXを推進できるチーム力が決め手だった」と説明する。特に、事業部門との継続的なコミュニケーションを重視する姿勢が、協業の土台となった。
現地法人との連携や実装において発生する課題
三菱電機のビルシステム事業とKEGMILの橋渡しを担当した三菱電機ビルソリューションズの我妻さん は、現地法人との連携を進める上で、現場でのコミュニケーションを重視したという。
「それぞれ立場の異なる関係者に、できるだけ合理的にメリットや効果を伝え、コンセンサスを得る事を重視しながら進めました。」
現場での協議を重ねながら進めていっても、お客様の期待値と技術的な課題が発生することもあった。双方のメリットを伝えつつ、妥協点を探るなどバランサーとしての立ち回りが事業を前に進めてきた。我妻さんは「全員の最大公約数を取るための会話を非常に長い時間をかけておこなった」と話す。
実証で確認された業務改善効果
シンガポールの現地販売会社で保守業務に従事する LEE JENN JAIさんは、導入の過程を次のように振り返る。
「民間と公共部門では報告形式や要件が異なります。追加の管理機能も必要となり、システムは当初より複雑になりました。」
そのため、FTV Labsとの間で複数回の議論やワークショップ、試作テストを重ね、運用に適した設計へと改良を続けた。
POC(概念実証)では、保守作業員の割り当て計画作成にかかる工数を約90%、関連業務を約50%削減できることを確認。また、従来は最大5分を要していた作業を5クリックで完了できるようになった。さらに、技術者の位置情報を活用することで、管理者がリソース配分を把握しやすくなった点も評価された。
LEE JENN JAIさんは「多くの試行錯誤を経て、運用要件を満たす形に到達しました。」と語る。
技術と信頼が支える長期的な価値
今回の三菱電機の共創パートナーであるFTV LabsのCEO Kelvin Ongさんは、今回の協業を通じて得た学びをこう語る。
「三菱電機との提携は、当社の運営基準を大きく引き上げました。企業規模のミッションクリティカルな業務を支えるには、設計やテスト、導入のすべてにおいて高い規律が求められます。」
また、Kelvin Ongさんはオープンイノベーションについて次のように述べる。
「真の共創は、双方の組織が深く関与し、共有された成果に責任を持つことで実現します。困難に直面したときに、互いに信頼し、問題を解決し続ける姿勢が重要です。」
三菱電機のエンジニアリング力とグローバルな事業基盤、FTV Labsのソフトウェアと業務設計力を組み合わせることで、より信頼性の高いフィールドサービス運営を目指している。
グローバルで広がる可能性
川中さんは今後の展開について、「協業はシンガポールにとどまらず、他地域への展開も視野に入れている」と語る。さらに、エレベーターやエスカレーター以外の現場保守分野への応用可能性も検討している。
三菱電機は、各地域の現場で培った知見とパートナー企業の技術を組み合わせることで、新たな価値創出を進めている。本プロジェクトは、その取り組みの一例である。
オープンイノベーションは、単なる技術導入ではなく、現場とともに課題を整理し、実装までやり切るプロセスである。三菱電機は今後も、グローバルな事業基盤を生かしながら、志を共有するパートナーとの共創を通じて、持続的な価値創出に取り組んでいく。
*掲載されている情報は、2026年3月時点のものです。