阿良田 剛 Tsuyoshi Arata
SERENDIE – stories
STORIES / EVENT REPORT
三菱電機が創る、データとAIによる自分らしい働き方。
CEATEC 2025
2025.12.24
2025年10月にデジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2025」が開催された。三菱電機は「『働く』を自分らしく。~Serendieで生み出すイノベーション~」というテーマで出展。「オフィス×ウェルビーイングデモエリア」、「工場×ウェルビーイングデモエリア」、デジタル基盤Serendie®の関連事例エリアと特別展示、合わせて4つのエリアで展示をした。
デジタル基盤「Serendie®」を活用した、一人ひとりが自分らしく働ける未来とは。展示されたソリューションを紐解きながら、三菱電機が見据えるウェルビーイングの未来像と、それを実現するテクノロジーに迫る。
三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター
「CEATEC2025」三菱電機ブースSerendie企画統括者
松本 沙希 Saki Matsumoto
三菱電機株式会社
ブランドコミュニケーション部・CXコミュニケーショングループ
「CEATEC2025」三菱電機グループ ブース全体統括担当
坂野 佑樹 Yuki Sakano
三菱電機株式会社
モビリティソリューション事業推進部
モビリティソリューションマーケティンググループ
サブグループマネージャー
及川 桐葉 Toyo Oikawa
三菱電機株式会社
モビリティソリューション事業推進部
事業企画グループ 課長代理
岩根 義忠 Yoshitada Iwane
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部
エンタープライズ技術本部 自動車・製造グループ
第四ソリューション部 ソリューションアーキテクト
斉藤 辰彦 Tatsuhiko Saito
三菱電機株式会社
AI研究開発センター 言語処理技術グループマネージャー
中谷 優太 Yuta Nakatani
三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター 共創推進部
山口 由莉子 Yuriko Yamaguchi
三菱電機株式会社
ソリューションビジネス戦略企画部 SB戦略企画グループ
温かいテクノロジーで、個性が活きるオフィスを
「オフィス×ウェルビーイングデモエリア」では、二つのソリューションが紹介されました。一つ目は、心とテクノロジーが共鳴する快適なオフィス空間ソリューションです。
センサーが非接触で脈などの生体情報から、「集中度」「眠気度」といった状態を推定、数値化し、空調の温度や照明のシーンの変更、搬送ロボットによる飲み物の提供や会話を行います。
集中度を測定するのは非接触型センサーの「エモコセンサー ユニット」。
元々家庭用エアコン「霧ヶ峰」に搭載されている技術です。エモコセンサーユニットが取得する生体データをクラウド上で分析し、そのデータをデジタル基盤Serendie®と連携させることで、空調や照明など他のハードウェアとの連携を可能にしました。
「オフィス全体の環境を均一に整えるのではなく、働く一人ひとりの状態に合わせて最適化したいという思いから本ソリューションの開発に至った」と話すのは、ソリューションビジネス戦略企画部 SB戦略企画グループの山口さん。
今後はオフィス以外にも、エモコセンサーの技術を応用したいと続けます。
「教育現場での生徒の集中度測定、劇場での観客の反応の可視化など、エモコセンサーの技術は多様な場面に応用が効くと思います。そうしたソリューションを通じて、新しいデータを集め、また次のソリューションにつなげる。そうした循環をつくりたいと思います」
二つ目は、立ち話から生まれる共創アイデア提案ソリューションです。このソリューションは同時発話を話者ごとに分離、高精度でテキスト化できる音声分離サービス「waketekoo」と立ち話を記録、要約し、「記憶の復活」によって業務を効率化する「Serendie SPOT」という二つの技術によって実現しています。
「これまで捨てられていた立ち話というデータを価値に変える。まさにSerendie®が目指すデータで新たな価値を共創するコンセプトを体現したソリューションです」
そう話すのは、DXイノベーションセンター 共創推進部の中谷さんです。
中谷さんはさらに、「今後は生産性を高めるオフィスレイアウトの設計や、チームビルディングへの貢献も目指したい」と将来の展望を語りました。
効率化という文脈において、一人ひとりの感情や何気ない立ち話などは、ともするとおざなりになりやすい要素です。しかし、人が人らしく働くためには欠かせないもの。今回展示された二つのソリューションは、オフィスにおいてより人らしく、創造的に働くためにテクノロジーができることを示唆したものと言えるでしょう。
共創が生んだ、自ら進化する工場
「工場×ウェルビーイングデモエリア」では、アマゾン ウェブ サービス(AWS)との戦略的協業に向けたMOU締結により実現した、「AIで自律的に進化する未来の工場」のデモンストレーションが披露されました。未来の工場の一例として、産業用ロボットによる自転車フレームの模擬塗装を実演。AWSクラウド上での稼働状況の可視化(デジタルツイン)、デジタル空間での生産ラインのシミュレーション、クラウドAI/エッジAIを活用したトラブルシューティングなどが紹介されました。
このソリューションは、主に三つの技術で構成されています。
一つ目が、3Dシミュレーター「MELSOFT Gemini」。生産性の高いライン構築や装置仕様、制御プログラムなどの検証をデジタル上で行うものです。
二つ目が、エッジデバイスで動作する製造業向け言語モデル。限られたハードウェアリソースでも高速に推論処理を実行できるため、故障対応など即時性が求められるケースでも作動します。 また、ネットワークから独立したクローズドな環境でも動作するため、セキュリティが重視される施設や、通信が不安定な海外拠点など、これまでクラウドAIの導入が難しかった環境でも高度なソリューション展開を可能にします。
そして三つ目が、デモの根幹を支える「AWSクラウド上での稼働状況の可視化(デジタルツイン)」。シミュレーションデータや実機の稼働データをクラウド上で効率的に処理・分析し、AIモデルの学習やソリューション全体の最適化に活用しています。
このソリューションの実現には、三菱電機の共創空間「Serendie Street Yokohama」の存在が大きかったと、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社でソリューションアーキテクトを務める岩根さんは話します。
「まず、キックオフをSerendie Street Yokohamaで行ったことで、プロジェクトの方向性が初期段階で固まり、ほとんどブレませんでした。その後も、何度も対面で集まりました。リモートで話すのと、実機を前にしながら話すのでは、進捗に大きな差があることを実感しましたね。一つのモニターを見ながら問題を一つひとつ潰していく作業などは、特に対面で進める価値を感じました」
AI研究開発センター 言語処理技術グループマネージャーの斉藤さんは、このエッジAIの言語モデルを、今後は鉄道や宇宙など他分野へも展開したいと語ります。
「今後は、工場熟練者のノウハウや知見を活用したNeuro-Physical AI®の開発を進め、より安全で働きやすい工場環境づくりを目指していきます。さらに、Serendie®に集まってくるデータを学習させることで、製造業の様々なシーンにおいて、新たな価値を生み出していきたいと考えています」
新たな価値を創出する、モビリティソリューション
Serendie®関連事例エリアでは、データ活用によって生まれる様々な施策が展示されました。その中から、モビリティの切り口で業務の自動化やカーボンニュートラルに取り組む、モビリティソリューション事業推進部の展示を紹介します。
一つ目は、リゾート施設内にて、配車から車両運行までを完全無人で実現する自動運転サービス「xAUTO」。二つ目は、広大な物流倉庫の敷地内においてトレーラー牽引車両を完全無人で自動運行させる「HubPilot」。三つ目は、電動車両の充電を最適化するエネルギーマネジメントサービス「HubCharge」です。
これらのソリューションは、三菱電機の既存技術によって支えられています。例えば、xAUTOの導入先であるリゾート施設内の道路には、独自の交通ルールがあります。そこで、航空管制や鉄道の運行管理システムで培ったノウハウや技術を応用。複数車両の運行状況をリアルタイムに管理し、衝突を回避しながら最適な配車を行うことで、完全無人の自動運転サービスを可能にしました。
HubPilotは、米国の大型物流倉庫内で従来ドライバーが手動で運用していたトレーラー牽引車両の運転業務とトレーラーの接続業務を、完全無人の自動運行で実現します。これを可能にしているのが、敷地内のインフラに取り付けたセンサーと、車両側の自動運行制御技術の組み合わせです。インフラ側でトレーラーとその牽引車両の正確な位置情報を把握し、車両側がそれをもとに自動走行しています。インフラのセンサー技術と車両の自動運行技術、双方を持つ三菱電機だからこそ実現できたソリューションです。
HubChargeは、物流事業者や交通事業者の車両の電動化に伴う充電業務の効率化や電力料金の最適化を叶えます。充電タイミングや同時充電車両台数など、顧客ごとに様々な制約や条件があり、実現の難易度は非常に高いですが、三菱電機が持つ高品質な電力制御技術を生かし、運用に則した充電の最適化を実現します。また、再生可能エネルギーを最大限活用することが可能なため、カーボンニュートラルへの貢献も期待できます。
「各サービスの運用で得られる車両運行データ、顧客データなどをSerendie®に集約し、データ活用することでサービス品質と機能を改善し、提供価値を継続的に向上させていきたい」
そう話すのは、モビリティソリューションマーケティンググループ サブグループマネージャーの坂野さんです。
「将来的には、サービス運用から得られる人流や運行データを、Serendie®上の他分野のデータと掛け合わせ、港湾や駅周辺、公道などへのソリューション展開も考えていきたいです。また、サービスの提供がゴールではなく、長期的な対応を視野に入れたLTV(ライフ・タイム・バリュー)向上も検討しています。例えばxAUTOの自動運転車両を利用するリゾートの宿泊客に対し、施設内のイベント情報や施設周辺のおすすめ情報などパーソナライズされた情報を提供することで、リゾート運営者と連携したB to B to Cのビジネスモデルをつくることも可能でしょう。サービス間のシナジーを通じて、モビリティに留まらない価値提供をしていきたいですね」
ウェルビーイングを通じ、ワクワクする社会へ
今後、Serendie®を通じて、どのようにウェルビーイングというテーマに向き合っていくのか。Serendie®関連の出展を取りまとめたDXイノベーションセンターの阿良田さんはデジタルの掛け合わせを進めていきたいと語ります。
「三菱電機は今まで空調機器やFA機器などのコンポーネントを納めることで、快適な空間づくりや働きやすさに貢献してきました。これから先は、コンポーネントに溜まったデータを活用することで、一人ひとりにとっての快適さを追求したいと考えています。また、実世界の情報を扱う技術、いわゆるフィジカルAIも私たちの注力領域の一つです。コンポーネントとAIの様々な組み合わせを通して、価値提供をしていきたいですね」
また、出展コンセプトの設計を担ったブランドコミュニケーション部の松本さんは、三菱電機は一人ひとりが自分らしくワクワク働ける社会を実現する企業だと期待を持ってほしいと話します。
「『私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、 活力とゆとりある社会の実現に貢献します』という企業理念を掲げています。活力とゆとりある社会を働く人の視点で切り取ると、今回のテーマである「『働く』を自分らしく。」につながると考えています。今回の展示では、個人のパフォーマンスの最大化や組織全体の生産性の向上を支援するデモンストレーションを行いましたが、一人ひとりが自分らしくワクワク働ける社会、ひいては企業理念に掲げる社会の実現を目指したいですね」
テクノロジーにより単純作業や定型業務を代替していく時代において、人に求められる役割は、より「人らしい」創造的な領域へとシフトしていくでしょう。AIやロボットに期待される役割とは、作業を効率化するだけでなく、そうした人が楽しく創造的な仕事に集中できる時間をつくること。すなわち「人が人らしく働ける」環境の支援にあるはずです。そんな未来の働き方を、三菱電機ならではの技術で実現していきます。