小板橋 高之 Takayuki Koitabashi
SERENDIE – stories
STORIES / INTERVIEW
現場の声を新しい価値に。大阪の共創拠点Serendie Street Osakaの現在地
2026.02.27
三菱電機は、データと技術で新価値を創出する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を掲げ、デジタル基盤「Serendie®」の推進やリアルな共創の拠点として「Serendie Street Yokohama」を運営している。その西日本エリアの拠点として誕生したのが「Serendie Street Osaka」だ。開設から2ヶ月で約650名の来場者が訪れている。運営を支えるのは、もともと営業メンバーだった3名。短期間で、どのように社内を巻き込んでいったのか。また、今後新しい拠点としてどんな価値を出そうとしているのか。立ち上げ期のリアルを施設の企画に携わった小板橋高之氏と運営を主導する池田貴臣氏、小関元平氏、山下裕生氏の4名に伺った。
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター Chief Expert
事業企画、マーケティング業務に携わったのち、新規事業や法人営業を担当。DXイノベーションセンター参画後はマーケティングを専門分野として、顧客とのビジネストランスフォーメーション推進、共創空間構築等、顧客接点の拡大に注力中。
池田 貴臣 Takaomi Ikeda
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター 共創推進部
兼 関西支社 事業推進部 総合営業第二課
支社企画業務に携わった後、製造業向け法人営業を担当。2025年のSerendie Street Osaka設立に伴い現職。法人営業を継続しながら同拠点の運営および共創企画業務を担う。
小関 元平 Gempei Koseki
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター 共創推進部
兼 関西支社 事業推進部 総合営業第二課
2024年入社。入社後、ネットワークカメラの代理店営業を担当。その後2025年より共創空間Serendie Street Osakaの運営を中心に、新事業の創出に携わる。製造業向けの総合営業を兼務。
山下 裕生 Yuki Yamashita
三菱電機株式会社 関西支社 事業推進部 総合営業第一課
兼 DXイノベーションセンター 共創推進部
2020年に入社後1年間支社企画業務に携わり、2年目より大型再開発を中心としてデベロッパー、ゼネコン向けの法人営業を担当。2025年10月より共創推進部を兼務しSerendie Street Osakaの運営および共創企画業務をサポート。
より現場に近い距離で、共創を加速させる
——まず、Serendie Street Osakaの概要および、設立の背景から教えてください。
池田:「Serendie Street Osaka」は、三菱電機の共創空間「Serendie Street Yokohama」の理念を元に設立された関西の共創拠点です。場所は関西支社の一角にあります。大きく2つのエリアで構成されており、それぞれに名前もつけています。一つはイベントや説明会などを行うオープンスペース「扇(おうぎ)」。もう一つがお客様とディスカッションを行う会議室「Cube(キューブ)」です。
オープンスペース「扇」。進行中のプロジェクトの紹介などを行う。
来ていただいたお客様には、Serendie関連事業や実際に横浜で行われている共創活動、社内で開発した共創を支援するAIツールについてデモを交えながら紹介します。その後、「Cube」に移り、お客様とどんな共創ができそうかを議論します。議論といっても、アジェンダを消化するような堅苦しいものではなく、お互いにアイデアを出し合うフランクな対話を心がけています。
小板橋:設立の目的を一言で言えば、「共創先を広げ、事業の種を増やすこと」です。共創活動は、できるだけ多くのお客様と接点を持つことが何より重要。これまでは横浜が中心でしたが、物理的な距離がネックとなり、関西およびそれ以西のお客様に深くアプローチしきれていない課題がありました。
関西には三菱電機の事業所や研究所などが多く集まっています。本社機能が東京にあるから、意思決定も東京で行うと思われがちですが、共創において本当に大事なのは「現場の声」。現場の課題をリアルに拾い上げないと、共創は具体的な形になりません。関西およびそれ以西には三菱電機が向き合うべき大切な現場がたくさんあります。
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター Chief Expert 小板橋 高之
小関:Serendie Street Osakaの大きな特徴は、関西支社の中にある点です。物理的に営業部門との距離が非常に近く、横浜以上に営業担当者と密に連携し、お客様の情報を共有し合えるのが大阪ならではの強みだと思っています。
「とりあえず、やってみよう」を体現する
――先行して「Serendie Street Yokohama」が運営されていたとはいえ、拠点をゼロから立ち上げるには色々苦労もあったかと思います。まず何を目標として掲げ、どんな取り組みを行っていたか教えてください。
池田:まず目標に掲げたのが、支社の営業メンバーにSerendieの理解を深めてもらうことです。共創先を広げるためには、お客様に三菱電機の取り組みを知ってもらう、共感してもらうことが必要です。そのための第一歩として、日頃前線でお客様と接点を持つ営業メンバー全員に「Serendieとは何なのか」「我々がどのような目的で活動しているのか」を周知し、理解してもらう活動を行いました。
具体的には、全16部門、およそ250名の従業員を対象に1日の中で10時から17時までの枠を確保し、私たち3人が日替わりで説明会を開き続けました。また、横浜の協力も得て、全社への発信やメディア対応なども並行して行いました。
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター 共創推進部 兼 関西支社 事業推進部 総合営業第二課 池田 貴臣
山下:結果として、社内からはSerendieについて「教えてほしい」「何かできないか」という問い合わせをたくさんいただくようになりました。また、具体的に動き始めた案件もいくつか出てきました。
――徐々に進捗しているんですね。逆に、2ヶ月経って見えてきた課題にはどのようなものがありますか。
池田:これまでの企業活動で形成されてきた固定観念の壁を実感しました。社内の従業員やお客様と対話していく中で「何かを新しく作ろうとすると、とにかく時間や負荷がかかる」というイメージが共通して壁になっていると感じています。担当者個人としては「とりあえず試しにやってみればいいのに」という前向きな発想を持っていても、組織として進めるのが難しいイメージがある。社内外に対してそうしたイメージを覆す活動ができるかどうかが今後の課題だと感じています。
山下:「とりあえず、やってみる」の空気を醸成することは、私たちの重要なミッションだと考えています。日々の忙しい営業活動にプラスして新しいことをやるのは、現場にとって腰が重いことです。なので、自分たちからもっと個別具体的に支社の営業とコミュニケーションをとり、サポートして一緒にやっていくことが必要だと考えています。
また、成功体験づくりも大事だと考えています。成果の大小ではなく、形になったという感覚を現場に持ってもらえるようにしたいですね。
三菱電機株式会社 関西支社 事業推進部 総合営業第一課 兼 DXイノベーションセンター 共創推進部 山下 裕生
発想力と言語化力で、AIには出せない価値を
――次の一手のため、具体的に考えていることについて教えてください。
池田:お客様に対してはもう一歩踏み込んだ具体的な提案を出すことが大事だと考えています。
最初のヒアリングの時点でAIが出す仮説は、方向性は良くてもアイデアの具体性はまだ低い。そこから具体的な共創活動につなげるために必要なのは発想力と言語化力だと考えています。AIの回答は聞き方一つとっても変わってきます。誰でもできる質問をして出たアイデアを実行するだけで事業ができるなら、おそらく皆さんがイメージするような巨大テック企業があらゆる事業で覇権を握っていると思います(笑)。そこで、三菱電機の経験やデータに裏付けされたAI活用をする。さらに、そこから三菱電機だからこそできる発想を形にしてお客様へ提案することが次の手として必要だと考えています。
会議室「Cube」の中にはフランクに話すためのバースペースがある。
小板橋:現場で実際に課題を抱えていらっしゃる方を巻き込むことも必要だと考えています。実際に悩みを抱えているのも、データを持っているのも現場だからです。現場を巻き込んで、初めて解決策が具体的になります。Serendie Street Osaka開設を契機に現場の巻き込みにも力を入れていきたいですね。
小関:社内向けの施策では、営業の意見を吸い上げる仕組みをつくりたいと考えています。これまで三菱電機は作ったものありきの営業でした。つまり、自社製品の仕様次第で、お客様の要望に応えられるかが決まってしまう。
一方、Serendieで生み出す事業はお客様の課題起点で生まれるもの。事業の種は、営業担当者が日々の活動で拾ってきた、まだ形にならない要望の中にあります。それを集める仕組みがあれば、こちらから営業の方に提案するアイデアを逆算してつくることができます。そうすることで、「Serendieに頼れば、既存製品では解決できない要望も形にできるんだ」という実感を持ってもらうことにつながると考えています。
三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター 共創推進部 兼 関西支社 事業推進部 総合営業第二課 小関 元平
ここに来れば、何かできるという拠り所へ
――最後にSerendie Street Osakaを今後どのような場所にしていきたいか。皆さんの思いをお聞かせください。
池田:利用者から信頼され、「ここへ来れば何かが実現する」という期待感を持ってもらえる場所にしたいです。理想は、単に親しみやすいだけでなく、具体的な成果を予感させる拠点です。大阪発のアイデアを起点として、横浜でプロトタイプを製作するような成功事例を創出する。こうした目に見える事例を積み重ねることで、拠点の価値を証明していきたいと考えています。
小関:数多くの企画をつくり、それらの企画を次の提案へとつなげたいです。各ビジネスユニットの従業員が些細なアイデアを気軽に持ち込んだり、お客様が「実現したいこと」を相談できる環境を構築したい。多様な立場の人々がアイデアを持ち寄り、形にしていける場所を目指していきます。
山下:横浜とは異なる価値や形を持った共創拠点にしたいですね。大阪には、研究所や製作所、営業拠点が物理的に近いという特徴があります。彼らと一緒に、お客様を巻き込んでいくことで、Serendie Street Osaka独自の価値を生み出していきたいと思います。
小板橋:この場所の目的は、お客様との共創活動を数多く生み出し、それをもとに横浜でのスクラム活動を通じてプロトタイプ製作、そして事業化へとつなげることです。そのために最も重要なのは、この場で多くのお客様と対話を重ね、互いのアイデアをぶつけ合いながら共創の芽を育む機会をつくること。
そのために「まずはやってみて、間違えたら直せばいい」という挑戦を許容する文化を根付かせたい。大阪ならではの機動力とお客様との距離感の近さを最大限に活かし、新しい事業の種を育みながら横浜との連携が強化されることを強く期待しています。