和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。

和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

能登の自然が育んだ、世界に発信するスイーツ文化 ~パティシエ・辻口博啓さん インタビュー~能登の自然が育んだ、世界に発信するスイーツ文化 ~パティシエ・辻口博啓さん インタビュー~

編集部
石川県七尾市の和菓子屋「紅屋」の三代目として生まれた辻口さん。幼い頃はどんなお子さんでしたか?
辻口さん(以下 敬称略)
厨房で親父や職人さんが働いてるのを見るのが好きでね、幼稚園の頃には見よう見まねで饅頭をこねたりしてました。「将来和菓子屋を継ぐんだ」という想いは物心ついたときからあったので、小学校に入ってからは「僕の考えたお菓子」や「お店の設計図」をノートにせっせと描きこんでいました。ときどきポエムも書いたりしてね。ロマンチストだったんですよ(笑)
編集部
和菓子屋の「若」が、どうしてパティシエの道に?
辻口
きっかけは、小学3年生のとき友だちの誕生会で出会ったショートケーキでした。本物の生クリームを食べたのはそれが初めてで、あまりのおいしさに衝撃を受けたんです。そのとき、友人のお母さんがこう言ったんですよ、「辻口くんの家には、こんなおいしいものはないでしょう?」と。悔しかった。でもそれ以上に感動が勝っていて、自分もこんなケーキを作って人を喜ばせたいと心から思った。以来、将来の夢は僕の洋菓子と親父の和菓子でみんなを幸せにするお店をつくること、に軌道修正されました。結局、「紅屋」は僕が東京で洋菓子修業を始めた矢先に潰れてしまい、継ぐことは叶わなかったんですが……。
編集部
七尾は、夢のスタート地点でもあり、パティシエとしてのルーツでもあるんですね。辻口さんにとっての故郷の味とは?
辻口
七尾は自分の基礎を作ってくれた町。子どもの頃食べたもの、見た風景、触れた文化のすべてが今のクリエイションに活かされています。なかでも想い出に残るわが家の味といえば、「めった汁」ですね。納豆や豆腐、サツマイモ、にんじん、ごぼう、じゃがいもなど冷蔵庫にあるものを鍋に入れて味噌で煮込む、文字通りの滅多煮です。これは郷土料理でもありますが、うちのオリジナルでもありますね。母の作るものはなんでもうまかった。コロッケなんかも絶品でした。ただ、ホットケーキを焼くのだけは僕のほうが上でしたね。何度も試行錯誤を重ねて、最高のレシピをモノにしてましたから。
編集部
その頃から修業は始まっていたわけですね。そんな故郷を離れたのは18歳のとき。東京に出てあらためて気づいた故郷の魅力はありますか?
辻口
まず水と食べ物の鮮度が違う。うちは井戸水を使っていたので、東京の水道水はとにかく合わなかった。また母の実家は牛舎や畑を持っていて、新鮮な肉や野菜がいつでも食べられたし、海で魚を獲ったり山できのこ狩りしたりと、手を伸ばせばいつでも自然の素材があった。近所の魚屋で売ってる魚も、びっくりするほど安くておいしいんです。そういう環境で育ったから、素材の質や鮮度へのこだわりは人一倍。いい素材をいかにおいしいスイーツに仕立て上げるかが、パティシエの仕事だと思っています。
編集部
珠洲(すず)の塩や加賀棒茶など、能登の素材も積極的にスイーツに採り入れられていますね。
辻口
オリジナリティを極めようとすれば、必ずルーツに突き当たります。僕の場合は、それが七尾であり能登だった。能登は、日本ではじめて世界農業遺産に認定された場所で、白米千枚田や珠洲(すず)の揚浜塩田などの伝統農法をはじめ、能登大納言や中島菜、沢野ごぼうなど土地を代表する食材も豊富です。そうした守っていかなければならない農法や作物を、スイーツを通じて広く伝えていきたい。その根底には、世界大会で戦う上で掲げてきた「和をもって世界を制す」というコンセプトがあります。もともとスイーツっていうのは和製英語。日本で生まれたスイーツを日本の文化として世界に示していくのが僕の目標なんです。
編集部
スイーツ文化の普及や人材育成を目的に、近年は「スイーツ育」にも力を入れられています。これはどんな教育なんですか?
辻口
簡単に言えば、スイーツを通じた食育です。料理でもビジネスでもそうですが、大切なのはゴール(出来上がり)をイメージし、そこから逆算して段取りを組むこと。お菓子作りなら、まず手洗いをして材料を計量し、火入れなどの準備をする。手を洗わないと食べ物に菌がついてしまうし、優先順位を間違えると、生地ができたのにオーブンの予熱が間に合わずしぼんでしまうといった失敗につながります。さらに後片付けも重要。ただしまうだけでなく、きちんと元のところに戻さないと次に使う人が困る。こうした一連の流れを通して物事の順序や行動の意味を学べると同時に、自分の手でスイーツを作りあげる達成感や、完成したスイーツで人を喜ばせたときの感動が自信を生む。スイーツ作りには子どもの成長を促す要素がたくさん詰まっているんです。
編集部
大人も学びたい素敵なコンテンツですね。
辻口
食育もスイーツ育も基本は家庭にあるので、親御さんにこそ意識していただきたいですね。誕生日やクリスマスなどに一緒にケーキを作ることで親子の絆を深めながら、衛生観念や素材選び、段取り、計算力、片付けなどを学び、素材の生産者への感謝の気持ちを育んでほしい。そうした体験の積み重ねが、命の尊さや生きる力を養っていくんです。何よりスイーツ作りって楽しいし、おいしくできればみんなを笑顔にできる。こんなに幸せな人生の教材はないと思いますよ。
編集部

本日は、お忙しい中ご協力いただきまして、ありがとうございました。
スイーツ育を始めとする辻口さんの活動については、以下のウェブサイトに詳しく載っています。

辻口博啓 official web 
http://www.h-tsujiguchi.jp/新しいウィンドウが開きます

パティシエ辻口博啓さん

1967年、石川県七尾市に和菓子屋の長男として生まれる。高校卒業後上京し、パティスリーで修業。90年全国洋菓子技術コンクールでの最年少優勝を皮切りに多くの大会で受賞、97年にはパティスリーの世界大会「クープ・ド・モンド」飴細工部門で個人優勝。98年「モンサンクレール」オープン。現在コンセプトの異なる12ブランドを全国に展開。一般社団法人日本スイーツ協会代表理事。石川県観光大使。三重県観光大使。金沢大学非常勤講師。産業能率大学客員教授。

第一回 中部・北陸 中部・北陸の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~第一回 中部・北陸 中部・北陸の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~