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おにぎりの感触は、まるでかまどごはん。(石川県産コシヒカリを試食)

まいもん処「いしり亭」(かまど職人)

森山 外志夫 さん

1980年代から、七尾マリンシティ構想に基づくまちづくりを推進。「小さな世界都市・七尾」の実現を目指して活動中。
その拠点として、まいもん処「いしり亭」を経営。自らかまどの前に座り、日々おいしいごはんを振る舞っている。

かまどごはんにこだわる理由は?

もともとは、ここ七尾でまちづくり活動をしていて、その一環で生まれたのが「いしり亭」。「いしり」っていうのは魚醤のことで、能登は三大魚醤のなかでも生産量日本一を誇る。なかでもうちでは、メギス(ニギス)を使った臭みの少ない魚醤を出してるんだよね。じゃあ、自慢のいしり料理をおいしく食べてもらうにはどうすればいいか。その答えが、かまどごはんだった。俺は子どもの頃から七輪で米を炊いてたからね、直火炊きのごはんのうまさはよく知っていた。それで古い商家からかまどを譲り受けて、店のごはんを炊くようになったんだよね。うちのかまどごはんはうまいよ。どんな食事も、ベースにあるのはごはんでしょ? ごはんがおいしければ、食は進むし、お客さんも笑顔になる。相乗効果で七尾のいしりも有名になるというわけ(笑)

かまど炊きの醍醐味は?

かまどは火入れ時が勝負。ごはんのかたさややわらかさ、もちもち感なんかも、ここで決まる。最初は新聞紙や消し炭、細かい薪をくべて約5分弱火でチョロチョロ。釜からボコボコと湯気が出たら、大火力を約5分キープ。中の水気が飛び、蓋の振動が収まったら火を引いて30分蒸らす、というのが大まかな段取り。でもね、毎日一定の炊き上がりなんてないんですよ。その日の天気や気温、湿度によっても味は変わる。だから毎日が一期一会の真剣勝負。そこがまたおもしろいんだよね。最初の頃は分刻みでメモをとって研究していたけど、最終的に頼れるのは自分の直感。計算尽くでやっても自然には勝てないから。それだけにおいしいごはんができたときの喜びはまたひとしお。夏も冬も雨風雪の日もずっと炊き続けているのは、お客さんの「おいしいね」っていう声が聞きたいからなんだよね。

「本炭釜」で炊いたごはんのご感想は?

ああ、これはいけるね。俺はうちのかまどごはんが最高だと思ってるけど、このごはんはうちでかために炊いたときの食感によく似てる。外側がかたくて中がしっとりっていう炊き上がりは、まさにかまどごはんの特長で、このごはんにはそれがきちんと再現されている。しかも噛めば噛むほど、もちもちした食感と甘みも出てくるから、食べごたえもある。よく噛んで食べるっていうのは、健康にもいいんだよね。まさに俺の好きなタイプの炊き上がりだよ。いや大したもんだ。よくぞ電気炊飯器で、ここまでかまどごはんに近づけたね。すごい技術力だよ。

冷めたときのお味は?

え、これうちのかまどで炊いたごはんじゃないの? 一瞬、そう思ったぐらい、かまどの味を彷彿とさせるね。電気炊飯器で炊いたごはんって、時間が経つとベタベタした感じになるイメージがあったけど、これはまったく違う。むしろ炊きたてのときよりも、ぐっとしっとり感やもちもち感が増していて、お米の特性がよく出ている。おにぎりにしたら最高だよ。なんにせよ、家で手軽にこんなにうまいごはんが炊けるっていうのは嬉しいことだね。お米は日本人の原点。瑞穂の国なんだから、お米は毎日おいしく味わいたい。「本炭釜」なら、かまどがなくても絶品ごはんが楽しめると思うよ。

焼きめし RECOMMEND

森山さんが考えるこのごはんの一番おいしい食べ方は?

このごはんでつくる焼きめしはうまいと思うよ。ふつうのごはんだと炒飯もベチャッとなるけど、これは米がよく立っているから崩れないし、歯ごたえのよさをより楽しめるはず。