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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

生物多様性 生物多様性

生きものたちの豊かな個性と多様性、そしてそのつながりのことを言います。地球上の生きものは約40億年という長い歴史の中で、さまざまな環境に適応して進化し、分化・絶滅を繰り返し、現在3,000万種の多様な生物が生きています。これらの生命はそれぞれに個性があり、全て直接的に、間接的に関わり合って生きています。

私たちの暮らしは、食料や水、酸素など、生態系からの恵み(生態系サービス)によって支えられています。たとえば、果物や野菜をいただくためには、ミツバチや昆虫によって受粉して実がならないと食べられません。ミツバチは花の蜜や花粉を食べます。そのミツバチはカマキリ、蜘蛛(クモ)、カエルなどに食べられ、それらは鳥や動物に食べられます。人間ももちろん、はちみつや野菜、動物をいただきます。こういった食べたり食べられたりする生物のつながりを「食物連鎖(しょくもつれんさ)」と言い、すべての生物が壮大な生命の環の中にあります。

つまり、ひとつの生物種が消えるということは、その生物とつながる多くの生きものの命も危くなるということを意味します。つまり、生物の多様性を保全することは、わたしたち自身を守ることでもあるのです。

*この記事は2019年8月の情報を元に掲載しています。

イラスト:食物連鎖

「人間だけでは生きていけない」という当たり前だけれど忘れがちな事実 「人間だけでは生きていけない」という当たり前だけれど忘れがちな事実

酸素や水の供給、食べ物から木材、医薬品、エネルギーまで、人間は自然の恵みがあるからこそ生きていける存在です。スーパーマーケットで売られている食品もすべて自然の産物です。森がなければ二酸化炭素を吸収できず、酸素も作り出せず、木材の利用もできません。このように私たちの命と暮らしの基盤となっている生物多様性ですが、残念なことに恩恵を受けている人間の活動によって損なわれつつあるのも事実です。

恐竜の大量絶滅があった白亜紀末など、これまでも自然現象や隕石などの外的な影響で起こった絶滅はありましたが、人間の活動によるものはありません。「自然状態で起こった絶滅はいずれも数万年から数十万年の時間がかかっており、その絶滅速度は年に0.001種程度であった」と考えられていますが、「現在の人間活動によって引き起こされている種の絶滅は、過去とは比較にならない速度で起きており、1975年以降、1年に40,000種と急激に上昇し続けている」とされています。*1

また、2019年には「今後数十年で、およそ100万種の生物が絶滅するおそれがある」*2との報告もされています。

*1: 国立環境研究所 環境展望台「生物の多様性」
https://tenbou.nies.go.jp/learning/
note/theme2_1.html

*2: 国際連合広報センター
国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に
https://www.unic.or.jp/news_press/
features_backgrounders/33018/

グラフ:種の絶滅速度

種の絶滅速度(環境省)を加工して作成
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h22/pdf/1-3.pdf

生物多様性を脅かす4つの原因って?-シロクマの場合 生物多様性を脅かす4つの原因って?-シロクマの場合

前項で見たように、生物多様性がここ100年で急激に失われています。その主な原因は
(1)地球温暖化(気候変動)
(2)自然環境の破壊と汚染
(3)資源の過剰な利用
(4)外来生物
と言われています。

地球温暖化の影響について北極圏に住むシロクマで見てみましょう。シロクマは、主な食糧源としているアザラシを氷の上から狙います。それが温暖化の影響で北極の氷は40年前と比べて3分の2となり、氷が溶けだす時期も早まっています。氷が少なくなったことで氷から氷へ泳ぐ距離も長くなり、体力も消耗します。十分な栄養がとれないシロクマは子供を産む数も減少し、たとえ産んだとしても母熊の母乳が足りず育たないという事態も起きています。また、悲しいことですが、最近では飢餓のため死んでしまうシロクマも増えています。

現在地球上に生存するシロクマはわずか26,000頭。「有効な地球温暖化対策がとられず最も地球温暖化が加速した場合、今世紀半ばまでには、夏季の北極海の海氷がほぼ消失する可能性が高い」*1とも予測されており、シロクマが絶滅する危機がまさに目の前に迫っているのです。

また、(4)の「外来生物」は、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって持ち込まれた生物種のことを指します。たとえば子供たちも良く知っているアメリカザリガニは、1920年代に食用として試験的に持ち込まれて以来、数を増やし、水草や稲の苗を食べたり、希少な水生昆虫なども食べてしまい、大きな被害をもたらしています。身近な生物でも元々あった生態系に大きな影響を与える外来生物は自然に放したりしないよう注意が必要なのです。

*1: 首相官邸 総合海洋政策本部「我が国の北極政策」平成27年
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/
dai14/shiryou1_2.pdf

写真:シロクマ

溶けだした氷にやっとたどり着いたシロクマの親子

マウンテンゴリラの生存に私たちが使う携帯電話が関わっている? マウンテンゴリラの生存に私たちが使う携帯電話が関わっている?

私たちが便利に使っている携帯電話も実は生物多様性に影響していることをご存知でしょうか。携帯電話やパソコンに使われている希少な金属「レアメタル」は、世界のさまざまな場所で採集されて製造に使われます。

その中のひとつ、「タンタル*1」が採れる場所の一つが、アフリカのコンゴ、ルワンダの熱帯雨林にあります。絶滅危惧種のマウンテンゴリラが暮らすこの森で、彼らが間もなく絶滅する恐れがあるとする報告書を国連が2010年に発表しました。

ここでは希少な金属「タンタル」を巡ってゲリラ組織などが森を切り倒して採掘を行ない、度重なる紛争が起き、ゴリラの生息地の森が破壊されると同時にゴリラが密猟される事件も発生、マウンテンゴリラは絶滅の危険性が最も高い種類に分類されました。

しかし、近年の密猟対策や獣医師の活動などにより保護が進み、2018年には1,000頭を超えるまでに回復しました。

遠い世界だと思っていたゴリラの生存と私たちの暮らしはつながっています。パソコンや携帯電話などいらなくなった機種も廃棄せず、しっかりリサイクルすることがマウンテンゴリラの命を守ることにつながるのです。

*1: レアメタルの一種。携帯電話やノートパソコンの小型コンデンサーの材料として使われるほか、ゲーム機用の需要も高まり、高値で取引されている。