世界には建国や独立を大々的に祝う国がたくさんあります。独立記念日などは、その国に暮らす人々が自由を手にした喜びの記憶を語り継ぐための祝祭でもあります。

インドネシアの祭事といえば、8月17日の独立記念日を欠くことはできません。そしてインドネシアでのお祝いに欠かせないごちそうが「ナシ・トゥンペン」です。

国の伝統食にも指定されていて、独立記念日のような国民的祭事から、結婚式や誕生日などの個人的なお祝いまで、さまざまなシーンで振る舞われます。インドネシアの人々にとっては、日本のお赤飯にも近い感覚なのかもしれません。

以前、マレーシアの回で「ハリ・ラヤ・プアサ（Hari Raya Puasa）」という断食明けのお祭りを紹介しましたが、国民の8割以上がイスラム教徒というインドネシアでも、断食明けにはお祝いが行われ、そのときにもナシ・トゥンペンが振る舞われたりするのだそう。

インドネシアは、世界最多の島しょからなる島国。首都ジャカルタのあるジャワ島や観光でも知られるバリ島ほか、1万3000以上の大小の島で構成されています。

ナシ・トゥンペンはジャワ島を起源とした、1000年以上前から続くお祝い料理です。円錐を模した黄色いごはん（ナシ・クニン）は島の霊峰を意味し、特別な意味を持つ頂上部分はその日の主賓に振る舞われたりもします。

まわりに敷き詰められたさまざまなおかずにもそれぞれ意味があります。例えばじゃがいも、さつまいも、ピーナッツなどの塊茎（かいけい）が表すのは土中からの恵み。その他、野菜は地面からの恵み、牛などは地上の動物を表し、海老などの海産物は海を表しています。

本来は大勢で分かち合うナシ・トゥンペンは10人前などはまだ小さい方。現地では20～30人前以上のボリュームがあってこそ「らしい」と言われる、まさに祝いの食。祭りの来る日が待ち遠しくなりますね。