和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。その地域の産物を使い、独自の調理方法で作られてきた郷土料理には、日本の食文化の素晴らしさがたくさん詰まっています。「和食とは何か?」に迫った和食シリーズ企画第一弾に続き、今回は、日本全国の郷土料理を通して、食卓の未来について考えます。本企画は、産経新聞社様のご協力により、過去に産経新聞料理面に掲載された郷土料理から一部をご紹介しています。

和食シリーズ企画 第二弾 郷土料理を楽しもう

そこにしかない旬の素材を味わう豊かさ ~料理研究家・管理栄養士 村田裕子さん インタビュー~そこにしかない旬の素材を味わう豊かさ ~料理研究家・管理栄養士 村田裕子さん インタビュー~

編集部
料理研究家、管理栄養士として幅広くご活躍され、これまでに出版された料理書は70冊以上にも上るのだとか。お料理への情熱を仕事にしようと思われたのは、いつ頃、どんなきっかけからですか?
村田さん(以下 敬称略)
子どもの頃から料理は大好きだったんですが、本格的に勉強し始めたのは、大学で食物学を専攻してからですね。レベルの高い調理実習や栄養学を学んだり、東京で食べ歩きをすることが楽しく、ますます料理の世界に憧れるようになりました。それで料理書籍の編集に関わりたくて、卒業後は出版社へ。配属されたのはファッション雑誌の編集部でしたが、取材で世界各国の食文化に触れる機会も多く、料理への思いがどんどん募り……最終的には10年勤めた会社を退職して、フリーで料理本の編集を手がけ始めたんです。で、編集しているうちに、今度は自分で研究したいという欲にかられて(笑)
編集部
料理研究家になるために、どのような準備をされましたか?
村田
これまで見たもの食べたものだけでなく、もっと広い世界を知りたいと思い、まずはイタリアの料理学校に行きました。そこで学ぶうちに、原点はフレンチにあると気づき、フランスへ。そして何より日本人がデイリーに楽しめる食文化を学ぶために、京都でみっちり和食の修業も。東京では宮内庁赤坂御所大膳課の故・渡辺誠先生に師事し、皇室に伝わるフランス料理やテーブルマナーのほか、中国料理、エスニック料理、モロッコ料理など本当にいろいろなことを教えていただきました。先生のお言葉は、今でも心に残っていますね。
編集部
いくつかご紹介いただけますか?
村田
ひとつは、「器用な人間にはなるな」という助言。80%の成功で満足する器用な人間ではなく、失敗を恐れず100%の全力で立ち向かえ、という意味です。食をなりわいとする者の覚悟を教えられました。また、「自分が向き合っているものだけがすべてではない」ということも。基本的にお料理のレシピは全国どこでも手に入れられる食材で、だれもが作れることを前提としていますが、その一方で、たとえば京都に行けば京野菜も身近にある。そういうことに目を向けないと、料理の世界も広がっていかないというわけです。
編集部
地方独特の食材といえば、ご出身の岡山にはどんなものがありますか?
村田
それはもういろいろ!たとえば特産の黄ニラやにんじん葉は、岡山ならではの地の味覚。黄ニラは栽培や流通がむずかしく、にんじん葉は時期が非常に限られているので、東京ではなかなかお目にかかれませんが、岡山ではスーパーでもふつうに売っています。にんじんの若い葉っぱはとてもやわらかく、おひたしやかき揚げにしてもおいしいんですよ。また瀬戸内に面した岡山は、藻貝やイイダコ、シャコなど海の幸にも恵まれています。藻貝は郷土料理のばら寿司には欠かせませんし、シャコはおやつに出てくるほど身近でしたね。なかでも私が大好きなのは、アナゴの稚魚!生のまま酢醤油でいただいたり、酢味噌和えにしたり、ペペロンチーノパスタに入れたりと、旬には大活躍の食材です。
編集部
海・山の幸に、旬の食材も多彩な地域なんですね。こうした素材を使った岡山の郷土料理といえば?
村田
やっぱり、ばら寿司でしょうね。野菜や魚介がたっぷり入った岡山のちらし寿司です。うちのばら寿司は、にんじんやごぼう、れんこん、高野豆腐、干ししいたけ、藻貝、焼きアナゴ、サワラの節目、ガラエビなどがぎっしり詰まった具だくさんの一品。お彼岸や盆暮れ、ひな祭りや節句、お誕生日に遠足、お客様がいらしたときなど、ハレの日には必ず出てくる料理だったので、子どもの頃には「えー、またあ?!」なんて言っていましたが、今でも忘れられない故郷の味です。
編集部
こうした地元の食材や料理を広く伝えるために、新しい活動を始められたそうですね。
村田
はい。2013年に東北から始まった食べもの付きの情報誌『食べる通信』が注目されていますが、3月には岡山から『備中食べる通信おんころりん』が創刊されました。創刊号では、イイダコやアシナガダコ、手摘み島ヒジキなど瀬⼾内の海産を、約20ページの読み物とセットにしてお届けしました。今後は企画に参加させていただく予定ですが、創刊号では「東京から見た岡山を聞く」というコーナーに登場させていただきました。インターネットで購入できますので、ぜひご覧になってみてください。
編集部
家庭料理のレシピを広めるだけでなく、故郷の味の継承にも力を入れていらっしゃる。村田さんにとって、郷土料理の魅力とはなんでしょうか。
村田
食べるとほっとする、子どもの頃の想い出や今の自分をつくってくれたものと向き合えるのが、郷土料理のよさ。年を重ねるごとに、その感慨は深まっていきますね。岡山の食材は東京でも手に入りますが、地元で食べるものとはどこか違う。その土地のその季節に食べることでしか味わえない味があると思うんです。食材だけでなく、お醤油やお味噌だって地方によって千差万別。そんな土地土地から発展した郷土料理が、日本の食文化をつくってきた。そう考えると、自分の故郷はもちろん、いろんな地方の郷土料理に触れることでさらに豊かな食体験を楽しめるのではないでしょうか。

料理研究家・管理栄養士
村田 裕子さん

岡山県出身。日本女子大学家政学部卒業。食物学科食物学専攻。出版社で10年間雑誌の編集に携わった後、フリーで料理書の編集を手がける。世界各国で料理を学び、料理研究家に。1995年より『STUDIO IDEA』主宰。和・洋・中のジャンルを問わず実践的なレシピをTV、書籍、雑誌、新聞などで幅広く紹介するほか、食品会社・調理器具メーカーの商品開発にも携わる。また「毎日の元気は食生活から」をモットーに、管理栄養士としても活躍。

第八回 中国 中国の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~第八回 中国 中国の郷土料理を作ってみよう! ~三菱調理家電による再現レシピ~