和食シリーズ企画第3弾

これからの和食を考える。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化。 未来へつなぐために、今できること。

第1回 しょうゆ
「もの知りしょうゆ館」へ
工場見学!

料理をおいしくする、風味豊かなしょうゆ。どうやってつくられるのか知っていますか?
キッコーマンの工場見学に参加し、現代のしょうゆのつくり方を教えて頂きました。

千葉県野田市にある、キッコーマンのしょうゆ工場。敷地内にある「もの知りしょうゆ館」では、一般向けの工場見学ツアーも行っています。現代のしょうゆづくりを見ることができるということで、さっそく案内して頂きました。

「わぁ、大きい!」

まず驚いたのは、タンクの大きさ。高さ7mもの「もろみ貯蔵タンク」は1Lの換算で約33万本分のしょうゆもろみを貯蔵できるそうで、しょうゆ館の窓の向こうに立ち並びます。この圧倒的な生産量のおかげで、私たちが毎日食卓でしょうゆを使うことができるんですね。

「でもしょうゆは工業製品と違って、大豆と小麦という自然の原材料を使い、微生物の発酵によってつくられる生き物ですから、どれも同じ品質でつくるためにはきめ細かな管理が必要です」とガイドの方。実際、工場の中をのぞくと、さまざまな製造工程に工夫がなされています。

緻密に設計されたしょうゆづくりの技

まずしょうゆづくりは、原料である大豆、小麦を発酵させるところから始まります。

「発酵に使われているのはキッコーマン菌という、当社独自の麹菌で、これは昔から守られてきた門外不出のものです」

キッコーマン菌

しょうゆ館ではキッコーマン菌の拡大写真も紹介され興味津々。製麹室(せいきくしつ)は麹菌が元気に働けるように、少し蒸し暑い温度、湿度で管理されているそう。ここでできたしょうゆ麹は、食塩水を加えた“もろみ”となって先ほど見た大型タンクで半年間ほど発酵・熟成されます。長期におよぶ熟成が、しょうゆのおいしい風味を生み出すんですね。見学では、熟成の段階ごとにもろみの色と香りが変化するのを実際に見て、嗅ぐことができます。

圧巻だったのは、最後の仕上げ、もろみを搾るところ。いわゆる圧搾です。この工程では、熟成したもろみを三つ折りの長い布に包み、折り重ねて、最初はもろみの重さで自然にしょうゆがにじみ出るのを待つそうです。

キッコーマン菌

「いきなりギュッと押し出すと雑味が混じってしまうので、決して急いではいけません。じっくり時間をかけて待つのが、おいしいしょうゆをつくる基本です」

こうして出来たしょうゆは「生しょうゆ」と呼ばれますが、火入れと呼ばれる加熱処理によって殺菌、風味を整え完成します。最近では火入れをせずフィルターで微生物を取り除いた生しょうゆも製品化されています。

おいしい一滴にこめられたもの

工場見学を通してわかったのは、現代のしょうゆづくりは機械化されつつも、醸造の基本的な部分である製麹発酵・熟成、圧搾は、時間をかけて自然の働きが活かされているということでした。

「ゆっくり、待つ」

それは工程の説明でしばしば耳にした言葉です。醸造の基本は、自然の働きを待つこと。その自然の力を最大限引き出すための環境を、機械化してきたのは現代人の知恵。自然と知恵とが織りなすおいしい一滴には、醸造文化が継承されているんですね。

キッコーマンもの知りしょうゆ館(野田工場) 新しいウィンドウが開きます

2016.11.01