ごく普通の映画好き編集部員による試写会レポート

第86回
『浅田家!』

今回レポートをするのは…

※2020年6月より当面の間、おすすめ映画ブルーレイソフトのレビューとなります。

編集部員R(女性)

2年連続になりますが、春はおうち時間を楽しんでいます。おうちから見える新緑を横目に、こんな時だから、年末以来の大掃除をしてみようと思っています。

編集部員S(女性)

最近、部屋を片付けていたら、古いアルバムがたくさん出てきました。懐かしさのあまり捨てることもできないので、アプリでデジタル化して保存し始めました。かなりの量があるので、まだまだ終わりが見えません…。

S今回のレポートは、2020年10月に公開された『浅田家!』です。

R実在する写真家・浅田政志氏の写真集を原案に作られた映画で、二宮和也さん、妻夫木聡さん、菅田将暉さんなどの人気俳優が出演していることでも話題になりましたね。

S公開時には、かなりメディアでも取り上げられていたので、気になっていた作品です。では、早速あらすじをご紹介しましょう。

あらすじ

幼いころから写真を撮るのが大好きだった浅田家の次男・政志(二宮和也)は、家族全員を巻き込んで、それぞれが “なりたかった職業” “やってみたかったこと” をテーマにコスプレし、その姿を撮影したユニークな家族写真で、写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞する。受賞をきっかけにようやく写真家として軌道に乗り始めたとき、東日本大震災が起こる― 。かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった被災地で政志が目にしたのは、家族や家を失った人々の姿。政志は津波で泥だらけになった写真を洗って、家族の元に返すボランティア活動に励む。そんな政志の前に「家族写真を撮ってほしい」という一人の少女が現れる。それは、津波で父親を失った少女の願いだった。

Sタイトルにもなっている浅田家ですが、とてもユニークな家族でしたね。

R実話が元になっているということで、こんな家族もあるのかとほのぼのとした気分になりました。

S子供の頃からの写真を撮ることが好きだったという浅田政志(二宮和也)ですが、写真家を目指して専門学校へ進むも、その後は定職に就くわけでもなく自堕落な生活を送っていました。ところが、あることがきっかけで家族写真を撮ることになります。

Rそれが、ただの家族写真じゃないんですよね。家族揃ってのコスプレ写真。自分だけならまだしも、家族全員を巻き込んでの撮影。なんだかんだいいながらも、全員ノリが良いんですよね。

Sそれを集めた写真集が話題となり、権威ある賞を受賞し、政志はプロの写真家として歩み始めます。全国の家族を撮って回ったり、個展を開いたり、ようやくやりたいことを見つけたように見えました。しかし、そんな矢先、東日本大震災が起きてしまいます。

Rここから、政志の人生がガラっと変わりましたね。以前、撮影をした家族のことが気になって、被災地に行ったら、偶然にも写真洗浄のボランティアをしている小野陽介(菅田将暉)に出会います。

S私は最初、菅田将暉さんだと気付きませんでした。いつものようなオーラがまったくなくて、被災者の中に馴染んでいましたから。役者として、そこまでなりきれるって、すごいと思うんですよ。

R東日本大震災の津波で泥だらけになった写真を洗浄し、元の持ち主に返す、そんなボランティアがあったんですね。今回の映画で初めて知りました。

S政志も自然とボランティアに参加することになり、その活動を通して震災で父親を亡くしたという少女に出会います。そこで、少女に家族写真を撮って欲しいと頼まれます。しかし、家族の絆を知ったからこそ、軽々しくシャッターを押せない。でも少女の思いには応えたい。その心の葛藤を描いたシーンでは、胸が締め付けられて切なくなりました。

R特典映像の中で、中野量太監督が「いつか東日本大震災を題材に映画を作りたいと思っていたが、なかなか難しくて実現できなかった。でも浅田さんの写真洗浄の活動を通してなら僕らしく描けるのではないか?」と言っていました。まさに、家族の絆、写真の持つ力をこの映画を通じて感じることができたように思います。

S特典映像で知ったのですが、浅田さんの息子さんが子役として出ていたり、他にも知り合いの方が数多く出演しているんですよね。だからよりリアリティを感じるのかもしれません。映画の中で使われている家族写真は、浅田さんが実際に俳優さんたちを撮影されたものだそうです。

R細かいところまで、こだわって見事にオリジナルの写真通りに再現されてましたね。俳優さんのポーズや表情を細かく調整しながら何度も撮影を繰り返して、仕上がりにかなりこだわってました。写真一枚にかける想いの深さを感じます。

S人が失ったものを補えるのは記憶だけで、その記憶を確かなものにしてくれるのが写真。ただ想い出を残すだけでなく、時には今を生きる力になる。困難な時代だからこそ、見るべき映画のように思います。

R特典映像もたっぷり。なかなか見られない撮影風景や出演者のインタビューが盛りだくさんです。当たり前の日常の大切さをあらためて感じる、心温まる作品となっていますので、ぜひ、ご覧ください。

次回もお楽しみに!

2021.05.13