ごく普通の映画好き編集部員による試写会レポート

第103回
『母性』

今回レポートをするのは…

※試写会に際しては、入念な感染対策を行った上で、参加いたしました。

編集部員T(男性)

暦上ではまだ秋なのですね。○○の秋といいますが、どこか美術館にでも行って芸術に触れたいですね。
出不精な性格なので、今年も食欲の秋だけになるかもしれません。

編集部員M(女性)

まだとても小さな子猫を保護したことがあります。短期間お世話をしただけでしたが、母性に似た感情がうまれたのを覚えています。
どんな生き物でも、純粋なこどもはかわいいものですね。

M今回のレポートは、11月23日(水・祝)より公開予定の『母性』です。

T湊かなえさん原作の『母性』は累計発行部数120万部を超えるベストセラーとなった作品ですね。私は大ファンなので原作も読みましたが、どのように実写化されたのかとても楽しみにしていました。

M物語の語り部となる母娘を戸田恵梨香さんと永野芽郁さん。共演者には大地真央さん、高畑淳子さんなど実力派が顔をそろえます。

T日本だけではなく、北米最大の映画祭のひとつ、第41回バンクーバー国際映画祭にも正式招待作品としてワールドプレミア開催されたようですよ。

M素晴らしいですね。母性は世界共通のものなので、海外での反応も気になりますね。
では、早速あらすじをご紹介しましょう。

あらすじ

発見された女子高生の遺体。事故か自殺か殺人か、事件の詳細は不明―。この事件の発端とは一体なんなのか。なんの変哲もないと思われていた日常に、音もなく刻まれる深い傷。愛することができない母(戸田恵梨香)と愛を乞う娘(永野芽郁)は、同じ時間・出来事を回想しているにもかかわらず、それぞれの口から語られる内容は次第に食い違っていく。母と娘の「証言」で事件の真相は大きくうねり…。母性に狂わされたのは母か?娘か?
この物語は、すべてを目撃する観客=【あなたの証言】で完成する。

M116分間あっという間でしたね。途中から眉間にしわを寄せ観てる時間が長かったと思います。笑
Tさんは湊かなえ作品の大ファンとのことですが、いかがでしたか?

T湊かなえさんは一つの物事を、登場人物の立場ごとに切り取る表現が面白い作家さんです。同じ事柄でも、その人のバックボーンや性格によって感じ方が全く異なるような描き方をされるので、読んでいてとても興味深いんですよね。
小説以外にも、ドラマや映画など実写化されているものを観てどれも面白かったので楽しみにしていましたが、やはり期待どおりでした。

Mこの作品には、戸田恵梨香さん演じるルミ子、その母である大地真央さん、そしてルミ子の義母を演じる高畑淳子さんの3人の“母” が登場します。その中でも、清佳(永野芽郁さん)の母ルミ子は、まだ唯一“娘”としての立場でもある存在で、そこがこの物語の注目すべき点でもあります。とりわけルミ子と母親の関係は濃密で、無償の愛を注ぐ母とその愛を一身に受け止める娘。とても微笑ましい光景なはずなのに、どこか漂う違和感を感じずにはいられませんでした。

T物語は母と娘の話がメインに語られていましたが、一番近い存在であっても起きうるすれ違いに怖さを感じましたし、母性ってなんだろうと改めて思いました

Mそうですよね。母になれば自然に備わるものと思いがちですが、単純にそうではないということを突き付けられたような気がして、人間の心の闇とか複雑さみたいなものを考えさせられました。

T母性自体が目に見えるものではないからこそ、これまた、見る人によっても感じ方が違う作品なのかなと思いましたし、その余白みたいなものも面白いなと思いました。

Mわかります。映画を観終わったあとは、誰かと内容について話をしたくなりますね。それに登場人物がみんな、少なからず心のねじれのようなものを抱えていて、一人ひとりのことをもっと詳しく知りたくなりました。

T今回はキャストも豪華でそれぞれの演技も魅力的でしたが、中でも怪演ぶりが目立っていたのが高畑淳子さんですよね。

M凄かったですねー。上映中あまりの迫力に圧倒され、ビクッと体が動いてしまうほどでした…笑

Tこの作品も湊かなえさんらしく、心がすこし痛くなる描写がありますが、見終わった頃には『母性』がなるほど、そう言うことか。と、わかるような内容だったと思います。

M私にはまだ、なぜ?どうして?という思いが残っているので、今度は小説を読んでみようかなと思っています。Tさんに勧めていただいた、他の湊かなえ作品も必ず読んでみますね!

T最後の最後まで見ごたえたっぷりの作品だったので、私ももう一度原作を読み返したくなりました。

M秋の夜長にはぴったりですね。

T母と娘、それぞれの視点から語られる物語の先には、いったいどのような衝撃的な結末が待っているのか…。その結末を、ぜひ映画館でご覧ください。

次回もお楽しみに!

2022.11.01