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知的財産戦略

基本方針

事業を通じた社会課題解決や新たな市場創出を実現するために、知的財産活動と標準化活動を連携させ、事業におけるフロントローディング活動への適用を図るとともに、当社事業を有利に進めるためのルール形成にも取り組みます。このような取組みによって、事業・マーケティング・営業・研究開発を下支えすることで、サステナビリティ経営を実現するイノベーティブカンパニーへの変革を目指します。

サステナビリティ経営に向けた知的財産活動方針

サステナビリティ経営の実現のためには、経済合理性をもって社会課題を解決していく必要があり、個社ですべてを実現することは非常に困難です。そのため、共創の仕組みが必須となり、複数事業者が互いに効果的に連携できるようなエコシステムの構築と運用を進めることになります。

各国の規則・規制への対応に加えて、効果的な共創のためには、標準化やその国のルールが適正に整備されていることが望ましいため、積極的にルール形成に関わっていくべきと考えています。また、エコシステム内においては各社の役割に合わせた知的財産の確保と、それらの知的財産を共創に活用していくためのルール形成も必要になります。

知財・標準化を支える体制と知的財産活動状況

三菱電機グループの知財体制は、各製作所・研究所・関係会社の知的財産部門と、それらを統括する本社の知的財産部門で構成されています。さらに、海外関係会社の知的財産部門と協力しながら現地拠点の知財力強化や模倣品対策を進めています。各国の事業状況を鑑みながら、バランスの取れた知財権取得を目指しています。標準化については、欧州拠点を活用した国際標準化活動を実施しています。今後、欧州だけでなく他地域の三菱電機グループ拠点も活用したグローバルな国際標準化活動の強化を進めていきます。

戦略的な海外出願の増加により、グローバル視点で見たときに強力な特許網が構築されることを目指しています。また、海外売上比率の増加に対応して特許保有数の海外割合も増加させています。

重要テーマの推進

事業環境の変化に対応して、全社横断的な活動が必要となるテーマについては、本社知的財産部門が提案・主導して事業本部・関係会社とともに知的財産活動・標準化活動を推進しています。知財としては、マテリアリティ(重要課題)のうち、「持続可能な地球環境の実現」「安心・安全・快適な社会の実現」「あらゆる人の尊重」の3つの課題から重要テーマを選定しています。

経営戦略を見据えた知財ポートフォリオの変化

イノベーティブカンパニーへの変革には、コンポーネント×デジタル両輪の成長が必要です。このため、ビジネスモデルの変革に合わせたソリューション関連の知的財産を拡大強化していく方針であり、2025年度には特許出願件数におけるソリューション比率を30%まで高める目標を定めています。また両輪成長のためには、コンポーネント関連の知的財産も維持強化していくことが非常に重要です。コンポーネント価値を高めるためのAIの組み込みも強化しており、特許出願件数に対するAI比率としては15%以上を継続することを目標にしています。

グローバルな知的財産権の取得

三菱電機グループでは、今後の事業拡大が予想される新興国へ事業展開に先行して出願し、知的財産活動のグローバル化を加速しています。また、米国、欧州、中国及び東南アジアの各拠点には知的財産活動を担う駐在員を置き、各国の事業拠点、研究所、関係会社の知的財産力の強化と、法規制に関連する政策や標準化動向の情報収集と調査分析を実施しています。

三菱電機グループの知的財産力と知的財産活動のグローバル化を示すものとして、特許庁(JPO)発表の特許登録件数(2024年)で国内第3位に、世界知的所有権機関(WIPO)発表の国際出願上位出願件数(2024年)で世界第7位(国内企業第1位)にランキングされています。

Open Technology Bank

三菱電機グループは、サステナブルな未来の実現に向けて、知的財産を起点にグループ内外の連携を推進する「Open Technology Bank」活動を2021年度より開始しました。従前は企業間の「競争」のために知的財産を活用することが主でしたが(独占実施、他社への権利行使など)、「共創」推進ツールや市場エコシステムを形成する経営資源としても知的財産を積極的に活用します。

社会課題の解決に寄与する事業の「芽」の創出

技術革新のスピードが速まる中、ますます多様化・複雑化する社会課題を乗り越えるには、オープンイノベーションを手段として使いこなし、様々なステークホルダーとの協働により新たな価値をタイムリーに創出する「共創」のアプローチが求められます。
Open Technology Bank活動では、知的財産部門の新たなミッションとして、三菱電機グループの技術の強みを活かした、社会課題の解決に寄与する新たな事業の「芽」の創出に挑んでいます。技術開発と事業開発を推進する手段として、パートナーとの共創を積極的に活用しています。
具体的には、社会課題と保有技術の両面から活動テーマを設定し、事業モデルの仮説を立案の上、パートナー候補企業に連携を打診し、課題の深堀や価値検証を進めながら事業モデルと技術を磨き上げ、事業の「芽」を育てています。本活動を通じて、三菱電機グループでの新規事業や、技術ライセンスの提供や共同実証といった共創事例を複数創出しています。
例えば、これまでOpen Technology Bank活動では、プラスチック資源循環に関する新事業「RaaS*」や、防汚コーティング剤の製造・販売事業といった三菱電機グループにおいて、これまでにない分野の新規事業の立ち上げに成功しています。こうした成果が認められ、2025年、三菱電機グループは経済産業省特許庁の令和7年度「知財功労賞」において、特許庁長官表彰の知的財産権制度利活用優良企業等表彰(オープンイノベーション推進企業)を受賞しました。

*Recycle as a Serviceの略称

三菱電機グループ内連携の強化

幅広い分野で事業を手がける総合電機メーカーとして、家電から宇宙まで、多種多様なフィールドで豊富に技術資産を保有することは、三菱電機グループの強みの一つです。保有する技術や知見を自在に掛け合わせることで、社会が必要とするインパクトある新たな価値を創出するべく、グループ横断での統合ソリューション開発の加速や、さらなる技術シナジーの追求に向け、部署の垣根を越えた社内技術連携を推進しています。
例えば、技術の掛け合わせを促進するため、約7万件もの保有特許をカテゴリー別に整理した技術マップを社内公開して技術の可視化を進めるとともに、社内技術連携に際するルール整備やインセンティブ設計を進めています。また、社内でのニーズとシーズのマッチングを加速させる施策をデジタル・リアルの両面から進めています。循環型 デジタル・エンジニアリング企業として社内技術資産を最大限に活用することで、多くの社会課題の解決に挑みます。

国際標準化活動の強化

国際標準化は、デジタル化によって製品やサービスが企業や業種の枠を超えてつながっていく産業構造の変化に対して、ルール形成によりグローバル市場を拡大・獲得するための手段として、その重要性が高まっています。三菱電機グループでは、競争優位性を確保し、事業活動を通して社会課題の解決に貢献し続けるために、国際標準化活動によるルール形成に積極的に取り組んでいます。

国際標準化機関の要職を担い、世界の活動をけん引

ルール形成による市場優位性確保を狙った活動を強化すべく、国際標準化機関の要職を含む約1,200名が国際標準化活動に参画しています。世界の国際標準化活動をけん引することで、多様なステークホルダーと一緒に社会課題の解決に貢献し、2024年度は、産業標準化事業表彰において、内閣総理大臣表彰と、イノベーション・環境局長表彰の2件を受賞しました。

所属・氏名

研究開発本部 杉浦 博明

機関

IEC

役職

TC 100 /TA 2(色彩の計測と管理)テクニカルエリアマネジャー

所属・氏名

情報技術総合研究所 永井 幸政

機関

IEEE*

役職

802.19(ワイヤレス共存)ワーキング・グループ幹事

*Institute of Electrical and Electronics Engineers

国際標準化戦略と取組み事例

三菱電機グループでは、複数の事業を横断するテーマについて重点プロジェクトを設定し、データを活用して新たな価値を生み出す統合ソリューションの提供に向け、事業戦略及び開発戦略と連動した、知的財産活動と一体の国際標準化活動を推進しています。

詳細は、下記のPDFにてご覧いただけます。

人財育成・表彰制度

三菱電機グループでは、知財・標準化の実務能力卓越化を目的とした社内資格制度を運用しており、それに向けた教育プログラムも実施しています。資格制度については、担当職務に合わせた4つの資格と、それに合わせた教育制度を設けています。これらに加え、知的財産アナリストの資格についても認定制度を設けています。

社外表彰

三菱電機グループの知的財産/標準化分野における実績は社外からも高い評価を受けています。

知的財産

標準化

2025年度情報通信技術賞 TTC会長表彰受賞者
永井 幸政【リビング・デジタルメディア事業本部/IoT・ライフソリューション新事業推進センター】

2023年IEC(国際電気標準会議)1906賞
令和5年IEC-APC(IEC活動推進会議)議長賞
中根 和彦【先端技術総合研究所】

令和6年IEC-APC(IEC活動推進会議)議長賞
三好 淳之【知的財産センター】

令和6年度産業標準化事業表彰・内閣総理大臣表彰
堤 和彦【開発本部】

令和6年度産業標準化事業表彰・イノベーション・環境局長表彰(産業標準化貢献者表彰)
吉岡 省二【防衛・宇宙システム事業本部】

令和5年産業標準化事業表彰・産業技術環境局長表彰(奨励者表彰)
奥田 悟祟【先端技術総合研究所】
馬場 丈典【FA-European Development Center】

一般社団法人 電子情報技術産業協会 2023年度半導体標準化専門委員会功労賞
久留須 整【高周波デバイス製作所】

知的財産の尊重

三菱電機グループでは、自社・他者の知的財産を尊重することを「倫理・遵法行動規範」に明記し、実践しています。 各種教育施策により他者権利尊重の意識を高めるとともに、製品開発の各段階に応じて他者特許調査を実施するなどの対応をルール化しています。また、他者による三菱電機グループの権利の侵害を防止する活動にも積極的に取り組んでいます。特に模倣品対策では、関係業界団体との連携、国内外の政府機関への働きかけなど、多様な活動を展開しています。