この報告書は、環境報告書と社会報告書を単純に合併したものではない。軸足は環境側にあるが、社会性に関する記事から受ける印象は昨年よりも強い。これは、ありのままの報告であり、弱みも見せ、過去の事実をさらし、近い将来の目標まで発表している。本報告書は、三菱電機の今を伝える点で興味を持って読めた。結論を言えば、昨年よりも記載内容が充実し、重点の異なる読者に伝える情報量は増えた。しかし、ページ数の制限からか、部分的には文字が小さかった。以下は個別のコメントである。
基本理念、行動指針に創業時からの引継ぎがあるとの説明箇所は、企業の根幹が変わらない、社会の公器の役割が堅実維持されたことを示している。株主価値のみが社会に認められない証左ともいえようか。
ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスおよび情報セキュリティーの部分は、体制を確立し、維持することが重要である。開示した失敗は、良薬に代える宣言と読もう。そして、維持できている年数が記載されることを期待する。
環境設備、環境計測設備、環境適合製品の記事は、三菱電機の技術力を感じさせる。多くの品がライフサイクルアセスメント、グリーン調達あるいは3Rの考え方で、製造、使用、廃棄・リサイクルまでを考慮されていることが理解できる。また、二酸化炭素の削減は、製造段階と輸送などでの成果報告がある。今後とも先行企業を継続し、業界を牽引されたい。
多くの人に使いやすいデザインをという家電製品の「ユニ」であるが、併せて訴求の「エコ」に負けた感がある。大きく見やすいというが比較対象がなく、説明の絵も文字も小さい。ここでは理解してもらうことが重要であろう。来年度は明確な事例をいくつか提示してもらいたいものである。
海外の事業活動について、今回はタイ国の会社を紹介している。グローバル企業が、なぜタイ国しか取り上げないのか疑問であるが、職場コミュニケーション、環境負荷の低減、財団への寄付などの記事は、現地訪問したように3社の状況を理解できた。
環境マネジメントシステムの取り組みを紹介したページには、ISO14001規格の改訂(2004年版)をクリアし、更新審査で適合判定を受けたことが書かれている。この審査は規格の要求事項を包括的に継続して満足する、環境マネジメントシステムが適切に実施され維持されていなければならない更新審査である。総合電機製造業であるから、そのオフィス業務は、工場に資源・エネルギー節約を指示し、グリーン購入を促進し、設備投資の資金も握る。決して「紙・ごみ・電気」ではない。この記事は、多くの文字があるだけに、事実はオフィス職場の取り組みは旗振り役を泣かせただろうと行間を読んでしまった。
環境会計は、ガイドラインに沿ってのデータが表示されているが、数年間の比較がないと判断が難しい。
わが国では環境報告書が先行、今も各社の個性が発揮されている。後追いの社会報告書も各様である。2つの合併編集とは、事務局の腕比べと心得られたい。



