各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進

在来種の比率増に向けた取組みを推進

群馬地区

群馬地区では現在、2つのアプローチによる生物多様性保全に取り組んでいます。

その一つが、敷地内の外来植物を減らし、在来植物の比率を高める活動です。建物の更新などの機会に植え替えを実施するほか、2018年には、在来種の苗木を育てる「ふるさとガーデン」を設置。苗木の植え方を工夫するほか、活動の意義を説明する看板も設置し、従業員への環境教育や工場見学者への情報発信に役立てています。

もう一つの取組みとして、生物多様性をテーマに据えた地域との交流にも注力しています。社会貢献活動と連動した生きもの観察会などを行うほか、地域のNPO法人などの活動に担当者が参加し、情報収集や関係づくりなどを進めています。

事業所所在地

〒370-0492 群馬県太田市岩松町800番地

主な取扱製品

給湯システム機器(ヒートポンプ式電気給湯機、電気温水器)

主な取組テーマ
  • 建て替えなどの機会に在来種を植栽 [B-4-(4)]
  • 「ふるさとガーデン」を設置 [B-4-(1)] [B-4-(3)] [C-7-(1)]
  • 社会貢献活動と連動した生きもの観察会などを実施 [C-7-(1)]

[ ] 内は取組テーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。

群馬地区の活動の方向性

取組の特徴
  • 植え替えにより敷地内の在来植物の比率を増加
  • 在来種の苗木を構内で育て、将来の植樹を目指す一方、従業員への環境教育にも活用
  • 近隣の休耕地を保全する取組みとあわせて生きもの観察会などを実施

群馬地区の活動テーマ

在来種の植栽を進めるとともに、従業員教育にも活用

群馬地区の担当者
製造管理部 群馬地区の担当者
製造管理部 群馬地区の担当者

群馬地区の敷地内には、古い設備や建物も残っています。これらの建て替え・更新を機会と捉え、外来植物から在来植物への植え替えを行うことにしました。2017年から徐々に取組を進めています。

さらに2018年6月には「ふるさとガーデン」を設置し、県木や市の花など地域に縁深い樹木から、クロマツ、レンゲツツジ、ヤマボウシの3種類の苗木を育てています。これらの苗木は、ただ育てるだけでなく、従業員が生物多様性への興味や理解を深められる“教材”として、見せ方にも工夫を凝らしています。

季節ごとに姿を変える「ふるさとガーデン」と周辺の芝地は、従業員の目を楽しませる憩いの場でもある

季節ごとに姿を変える「ふるさとガーデン」と周辺の芝地は、従業員の目を楽しませる憩いの場でもある

季節ごとに姿を変える「ふるさとガーデン」と周辺の芝地は、従業員の目を楽しませる憩いの場でもある

塀の更新などにあわせて在来種を植栽

地震対策などの観点から、敷地を囲む塀を段階的に更新しています。これにあわせて塀の内側に植え込みをつくり、在来の樹木や草花(イチイやツツジなど)を採り入れています。また、事業所南側のエリアでは、「ふるさとガーデン」で育成した苗木を移植しています。苗木の育成には時間がかかるため、外部からの在来種導入とバランスを取りながら取組みを進めています。

更新前更新前

更新後更新後

「ふるさとガーデン」で在来種の苗木を育成

事業所敷地内に「ふるさとガーデン」を設置し、在来種の苗木を育成するとともに、従業員などに取組みの意義を発信する場として活用しています。

ガーデンは全部で3つの花壇からなっています。発芽から3年未満の苗木を植える「ファーストガーデン」、発芽後3~5年が経過した苗木を植える「セカンドガーデン」、そして発芽後5~7年が経過した苗木を植える「サードガーデン」です。成長段階の異なる苗木を並べることで、樹木の成長スピードや種類ごとの形状の違いなどを、目で見て感じ取れるように工夫しています。あわせて、取組みの趣旨を説明する看板も設置。従業員や工場見学者への情報発信にも活用しています。

苗木の種類と成長段階が一目でわかるように工夫

正門脇のスペースにクロマツなどを移植 正門脇のスペースにクロマツなどを移植 正門脇のスペースにクロマツなどを移植 正門脇のスペースにクロマツなどを移植

8年以上育った苗木は構内に移植することを原則としており、経過時間に応じて植え替えなどの手入れを行っています。これまで2021年、2023年と2か所で移植を実施しました。特に2023年の移植では、ふだんから従業員や工場見学者の往来が多い正門脇のスペースを移植先に選定しました。

地域との交流を通じた保全活動に注力

群馬地区では、敷地内の環境を整える活動だけでなく、地域全体の環境保全につながるような活動にも注力しています。

例えば、群馬地区周辺の休耕地を活用した活動を2021年から継続しています。群馬地区の周辺は広い範囲に畑が広がっている一方、休耕地となっている土地も多く、雑草などが繁茂して周辺の畑や緑地環境に影響を与えることが地域の課題となっていました。そこで、休耕地の一部を借り受け、社員が草刈りなどを行うとともに、一部の畝(うね)で実際に農作物を育てています(2023年度は3畝)。この畑において、従業員とその家族を招いて収穫イベントを例年実施しています。また、収穫イベントに合わせて、子どもたちに生きものへの興味を持ってもらえるよう、畑の周りに生息する生きものの観察を行っています。

2023年は10月に実施し、54名の方に参加いただきました。今回は前年の状況を踏まえて育成する品種とその数を増やすほか、SNSでの事前告知も複数回実施。当日は冒頭でまず畑の生きものについて説明したほか、着ぐるみを着て特徴的な生態を実演するなど、子どもたちが理解しやすいよう内容を改善しました。さらに、収穫したサツマイモから特に大きなものを探してもらうなどエンターテインメントの要素も取り入れ、より楽しく学べるプログラムとしました。子どもたちはバッタやイモムシ、カナヘビなど様々な生きものを捕まえてアプリで種類を確かめ、従業員の説明に耳を傾けていました。

子どもたちとともにサツマイモを収穫子どもたちとともにサツマイモを収穫

捕まえた生きものの種類を確認捕まえた生きものの種類を確認

銀座ミツバチプロジェクト主催
「イモリンピックIMOLYMPIC2023」で優勝

2023年11月、NPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」が主催する「イモリンピックIMOLYMPIC2023」に参加しました。同団体では屋上緑化を目的として、全国のパートナーとともにビルの屋上などでサツマイモを育て、芋焼酎をつくる「芋人」プロジェクトを以前から実施しています。イベントはこれに関連して2018年から開催されているもので、全国から参加者が集まり、育てたサツマイモの重量を競います。

担当者が持参したサツマイモは重量が2,500グラムあり、「畑部門」での優勝を飾ることができました。これを含めた各団体の収穫物の一部は、「芋人」プロジェクトの一環として、オリジナルの芋焼酎に加工、販売されます。

今後もこうした外部の機会を積極的に活用し、環境保全に関わる団体などとの交流につなげるとともに、従業員への発信などにも役立てていく予定です。

収穫イベント(上記)の参加者とともに選んだ最も大きなサツマイモ収穫イベント(上記)の参加者とともに選んだ最も大きなサツマイモ

イモリンピック2023表彰式の様子イモリンピック2023表彰式の様子

賞状とトロフィー(移植ごて)、芋焼酎を授与賞状とトロフィー(移植ごて)、芋焼酎を授与

こうした取組と並行して、2023年度以降、地域の環境保全に取り組むNPO法人などの活動に生物多様性保全活動の担当者が参加する機会を積極的に設けています。各団体との関係づくりや情報収集につなげ、将来的には、希望する従業員による定期的なボランティア参加なども検討していきます。

地域のNPO法人による環境保全活動に協力

2023年度は以下2件の活動に参加しました。今後もこうした取組みを続けながら、地域の環境への貢献のあり方を検討していきます。

モニタリングのため水質などを調査モニタリングのため水質などを調査

「新田環境みらいの会」による石田川・矢太神水源の調査活動(2023年6月)
新田環境みらいの会は、群馬地区がある太田市を中心に活動しているNPO法人です。豊かな水環境を守るべく、遊水地の状況の調査や保全・整備計画の検討などに取り組んでいます。

同団体において、群馬地区の排水先である石田川の矢太神(やだいじん)水源の環境調査をすることになり、生物多様性保全活動の推進担当者が活動に参加しました。

急斜面での保全活動

カッコソウ自生地の保全活動(2023年9月)
群馬県環境アドバイザーと地元の方が行っている「カッコソウ」の保全活動にも参加しました。カッコソウは国内でも群馬県内の桐生市・みどり市(鳴神山周辺)のみに自生していることで知られるサクラソウの仲間です。

他の参加者と意見を交換する中で、急斜面での活動が必要で負荷が大きいこと、このため活動している方の高齢化などが継続の課題となっていることなど、活動現場の実感も伺いました。

マネジメントの声

ゆくゆくは全員参加の活動に育てていくため、今後も活動内容を見直していきます。

群馬地区の活動の主体は従業員ですので、業務と並行して続けられることが大前提です。内容や発信をブラッシュアップしながら、参加者の数を拡大していくことが重要と考えています。

直近では畑での活動がこれに該当します。すでに総務部門と相談・協力し、新入社員の研修カリキュラムに農作物の世話を組み込むなどの活動を実施していますが、基本的には生物多様性保全活動の担当者が業務に当たってきました。さらに参加者を増やすべく、苗を植える際にもイベントを開催するなどしてもいいかもしれません。

また、ふるさとガーデンでの取組にも今以上にスポットを当てたいと思っています。活動自体は継続していて、2023年には過去に移植したヤマボウシに無事に花がつくなど、着実に進展しています。しかし、従業員の注目は集めにくい活動なのも事実です。

これについては、まずは従業員の樹木への興味を喚起するような発信をしたいと考えています。例えば、所内にある通りの多くは、植え込みの樹種に由来する植物の名前を冠しています。こうした情報を積極的に発信したり、移植した植物の近況を伝えたりすることで、従業員が目を向けるきっかけになるかもしれません。そこからゆくゆくは全員参加の活動につなげていきたいです。

製造管理部 部長 冨永 尚史

従業員へのさらなるアピールにつながる“仕掛け”を検討したいです。

群馬地区の活動は、個々の担当者の熱量に支えられてきたと感じています。それ自体はよいことなのですが、人事異動などの影響で活動が途切れてしまうリスクは否めません。なにより地区としての活動ですから、もっと広い範囲の従業員に活動を広げていきたいという想いを持っています。

そうした意味で、活動内容のアピールは重要かと思っています。例えば今回、イモリンピックでの優勝のニュースを所内のチャットツールで共有したところ、意外なほど多くの反応がありました。多くの従業員が興味を持ってくれるきっかけになったということです。他の活動についてもこのように、従業員の興味を惹くような工夫をしていきたいと思います。例えば、カッコソウの保全活動への参加などは、カッコソウ自体がどのような植物なのかや、その希少性について発信することで興味を持ってもらえるかもしれません。

さしあたってはイモリンピックに関連して、今回の芋焼酎を購入する際に好きな名称でラベルを貼っていただけるのことでしたので、「馬電芋人」と命名しました。従業員との対話のきっかけになるといいと思っています。

製造管理部 製造企画課長 西野 裕久

担当者の声

私は2020年度に生物多様性保全活動の担当となり、これまで主に地区内での活動に注力してきました。しかし、自然豊かな群馬県で活動するのですから、その特性をもっと活かしたいという想いがあり、2023年度は近辺で環境保全に取り組むNPO法人に連絡をとって、群馬地区外に視点を広げての活動を新たに進めました。

この活動状況を社内で共有したところ、「工場外でも活動しているの、どの辺り?」「とても綺麗な花みたいだね、今度咲く頃に見てみたいな」といった声が届き、従来よりも多くの従業員が興味を持ってくれたことを肌で感じました。またNPO法人の方にも「今度この保全活動があるのですが、ご協力お願いできますか?」と声をかけていただけるようになり、今後の活動の土台となる“きっかけ”ができたと感じています。

群馬県に根付く地元企業として、今後も積極的に地域の環境保全活動に参加し、その中で生まれる地域の方との交流、結びつきを、次なる取組みに活かしていきます。ゆくゆくは地区の従業員から参加者を募集するなど、社内向けの環境教育や野外教室にも紐づけたいと考えています。群馬地区として環境保全活動への関心を高め、活動の輪を地区全体へと広げていきたいと思います。

製造管理部製造企画課 光山 達紀

群馬地区の活動の方向性

以下は三菱電機グループの各事業所による生物多様性保全活動の方向性を示した一覧表です。
群馬地区の活動がどの方向性に当てはまるのかを、色で示しています。

周辺地域との調和に配慮し、在来種の比率向上を目指す

活動の方向性
  • A 生きものへの
    負の影響を低減する
  • 1.「開発圧※1」「外来種圧※2」の抑制  ※3
  • (1)生きものに対する影響把握
  • (2)外来種管理
  • 2.「希少種」「固有種」への注意喚起と保全
  • (1)構内生物リストの公開
  • (2)希少種、固有種の保全
  • (3)周辺の保全課題への協力
  • 3.農薬影響の管理や、緑地・天然資源の保全
  • (1)生きもの殺傷の抑制
  • (2)水や土壌等の天然資源への配慮
  • B 生きものとの
    より豊かな共生を目指す
  • 4.機能緑地の設定
  • (1)緑地管理の体制
  • (2)飛翔性生物の利用地の整備
  • (3)「みどり+生きもの」優先地の整備
  • (4)事業所周辺への「みどりの連続性」の提供
  • (5)事務所周辺の生物多様性保全活動への貢献
  • 5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの
    脱却
  • (1)植生の多様化・多層化
  • (2)植物などの特性に合致した緑地管理
  • (3)地域への貢献・配慮
  • C 働く中で社員が
    自然との関係を取り戻す
  • 6.生態系サービスの職場での積極的享受
    (休憩所、フロア)
  • (1)文化的サービスの享受・場づくり
  • (2)供給サービスの享受・場づくり
  • 7.「無関心」「無関係」状態から、
    「全員が関係ある」状態へ
  • (1)理解と行動促進の教育
  • (2)職場・業務での関係創出

※1開発圧:棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること(サプライチェーンでの開発を含めて)、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。

※2外来種圧:その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。

※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。

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