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#017
画像 地球観測衛星
これは、
「いぶき2号」じゃ。「温室効果ガス観測技術衛星」ともいって、地球の気候変動の原因となる温室効果ガスの観測をしておる。この人工衛星も三菱電機製じゃ。
ここが便利!
大気中に含まれる二酸化炭素に加えて、メタン、水蒸気、一酸化炭素の濃度のデータを取得できるんじゃ。
ここがスゴい!
大都市など大規模排出源を集中して観測する機能の強化のほか、雲のない地域を自動的に探して観測することもできるぞ。
研究生 エコちゃん

今回も人工衛星ですねっ。この「いぶき2号」は地球の周り全体の温室効果ガスの観測をするんですか?

博士

そうじゃ。そのため、 「ひまわり」のようにいつも同じところから地球の一部分を観測するのではなくて、地球の周りをぐるぐる回っているんじゃ。

研究生 エコちゃん

ぐるぐる回るって、どのくらいの速さで飛んでいるのかしら。

博士

「いぶき2号」は地上613kmの高さのところを秒速7.6kmの速さで飛んでおり、約98分で地球を一周するんじゃ。1日で地球を15周もするんじゃよ。

研究生 エコちゃん

わぁ~っ、速っ! 飛んでいる高さも「ひまわり」は地上36,000kmなので、「ひまわり」に比べるとずいぶん地球に近いところを飛んでいるんですね。

博士

人工衛星は目的によって、さまざまな軌道で飛んでいるんじゃよ。「いぶき2号」は地球全体を観測するために、地球の周りを飛びながら観測する地域を少しずつずらしていき、6日でまた元の場所に戻ってくるんじゃ。

研究生 エコちゃん

あの~、でもそもそも、温室効果ガスの濃度って、人工衛星で観測する必要があるのですか? 温室効果ガスが発生するのは地上なので、地上で観測するだけで十分な気がするんですけど。。。

博士

地上でもいろいろ観測は行われておるが、地点の数が少なく地域も限られてしまう。さらに観測センサの種類や性能にばらつきがでてしまう。それを人工衛星ならば地球のほぼ全域にわたって、ひとつのセンサで観測できるので、正確にしかも均一にデータを取得できるんじゃ。こんな感じじゃ。

画像 いぶき2号

「いぶき2号」が観測した二酸化炭素濃度(2019年9月)

研究生 エコちゃん

へぇ~っ、人が住んでいないようなところや海の上まで、ばっちり観測できるんですね。

博士

さらに、気候変動のリスクを算出・予測する上では、地上だけでなく上空までを含めた温室効果ガスの平均濃度を算出することも重要なんじゃよ。「いぶき2号」は、発電所や石油・天然ガス田・ごみ処理場などの温室効果ガスの大規模排出源を観測ポイントとして設定して詳しく観測したり、一酸化炭素を観測することで、二酸化炭素の発生源を把握することもできるんじゃ。

研究生 エコちゃん

「いぶき2号」、すご~い! この人工衛星は、地球の温暖化防止に向けた取組になくてはならない存在ですね。

博士

“温暖化”じゃと..? 最近は、のんびりと暖かくなっているような”温暖化”ではなく、”気候変動”、さらには”気候危機”という言葉も使われるようになっており、この問題への国際的な取組は待ったなしじゃ。「いぶき2号」は、気候科学と気候変動に関連する政策に貢献するというミッションのもと、その観測データは無償で広く一般の方々にも公開されておる。「いぶき2号」は今後、もっともっと多くの人にとって、だいぶ気に(いぶき2)なる存在になってくるぞ。

研究生 エコちゃん

博士、、、寒い!? 。

いぶき2号

「いぶき2号」は、欧米に先駆けて打上げられた世界初の温室効果ガス観測専用の衛星「いぶき」(GOSAT:2009年1月打上げ)の後継衛星です。三菱電機は、「いぶき」において担当した衛星システムの開発・製造に加え、高性能な観測センサーの開発・製造、地上設備の構築、打上げ後の衛星の管制運用をトータルで担当しています。

スペック

高性能な観測センサーにより、温室効果ガスの濃度分布測定精度向上に貢献

世界の温室効果ガス計測の基準となる実用測定精度の確立を目指し、観測センサーの高性能化を実現します。
さらに、有効データが取得できない雲を避け、自律して雲の無い領域を指向・観測するインテリジェントポインティング機能を新たに搭載し、飛躍的な有効観測データ数の向上に貢献します。

観測センサー

観測対象に一酸化炭素を追加、さらにPM2.5などの監視にも活用

温室効果ガス観測センサーに新たな観測波長域を追加したことにより、「いぶき」の観測対象(二酸化炭素・メタン・酸素・水蒸気)に加えて、一酸化炭素も観測します。さらに、雲・エアロソルセンサーへの観測波長域追加により、微小粒子状物質(ブラックカーボン、PM2.5等)を推計し、大気汚染監視に貢献していきます。

「いぶき」の観測対象

いぶき2号による2019年2月3月、2020年2月3月の一酸化炭素濃度の全球分布 (大気全体平均)

トータルシステムの提供により、データ品質向上に貢献

衛星システム・観測センサーの開発・製造のほかに、衛星データの処理等を含めた地上設備の構築、打上げ後の衛星の管制運用もトータルで担当することで、トータル観測システムとしてデータ品質の維持・向上に貢献します。

取材協力
写真

三菱電機株式会社
衛星情報システム部 技術第一課
山名 克尚

研究生 エコちゃん

「山名さん、地球観測衛星「いぶき2号」の開発・設計に携わって印象に残ったことを一言お願いします。」

写真

いぶき2号には高性能な観測センサーを2つ搭載していますが、性能が大きく向上する一方で過酷な環境を受ける衛星に搭載するためには、とても慎重に設計・開発する必要がありました。
打ち上げ時の振動でも壊れないように耐えられるか、軌道上の熱環境でもちゃんと性能を発揮できる温度範囲に保てるかなど、高性能がゆえにその条件も厳しく、何度も何度もセンサをどう配置するか、条件の設定をどうするかなどを多くの関係者と調整しながら設計したことが印象に残っています。
多くの苦労はありましたが、その甲斐もあって無事に目的の観測を継続できており、開発冥利に尽きるのと同時に今後も順調に活躍することを願っています。