各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進

生きものの棲みかとなる屋上緑地を管理

稲沢ビルシステム製作所

稲沢ビルシステム製作所(三菱電機ビルソリューションズ)は、2007年に竣工した第15工場の屋上全体を緑化しています。この緑地は定期的に草刈りをして管理しており、周辺からのカルガモなどの飛来・営巣が確認されています。

また、近年では施設の建て替え時に周囲の植栽を地域在来種に植え替えるなど、地域の環境と調和した工場づくりに努めています。

事業所所在地

〒492-8682 愛知県稲沢市菱町1番地

主な取扱製品

エレベーター、エスカレーター、ビルマネジメントシステム

主な取組みテーマ
  • 屋上緑地を整備 [B-4-(1)]
  • 建て替えなどの機会に在来種を導入 [B-4-(4)]
  • 周辺地域での外来種駆除、生物多様性保全活動に協力 [A-2-(3)]

[ ] 内は取組みテーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。

稲沢ビルシステム製作所の活動の方向性

取組みの特徴
  • 周辺環境と調和した緑地管理

稲沢ビルシステム製作所の活動テーマ

屋上緑地(草地)を維持管理

事業所周辺はほとんどが水田の広がる「市街化調整区域」ム 事業所周辺はほとんどが水田の広がる「市街化調整区域」

稲沢ビルシステム製作所は広い平地の中にあり、水田や宅地に囲まれています。こうした中で2007年、敷地内の第15工場の竣工時に屋上緑地を整備しました。屋上緑地の面積は約5,500平方メートルありますが、建物への荷重の影響から、導入できる土の量が限られることもあり、その多くは草地としています。また、当初は落葉低木や花の咲く草などをバランスよく導入していましたが、これらも徐々に周辺でよく見られる種に置き換わっていきました。この自然の変化を重視し、植え替えなどはせずに管理しています。

現在の屋上緑地にはススキなど丈の高い種もあることから生きものが身を隠しやすい環境になっているとみられ、周辺の水田から飛来したと考えられるカルガモやケリなどの野鳥が毎年、この草地を営巣や採餌に利用していることが確認されています。稲沢ビルシステム製作所では、こうした生きものが引き続き草地を利用できるよう、屋上緑地をいくつかのエリアに分けて順番に草刈りをし、草丈の高い部分が残るよう工夫しています。

サッカーコート1面分の広さを有する屋上緑地。木曽三川をイメージに取り入れて設計されたサッカーコート1面分の広さを有する屋上緑地。木曽三川をイメージに取り入れて設計された

主に草地と低木からなる緑地主に草地と低木からなる緑地

毎年数組が営巣・産卵しているカルガモ。ヒナの成長後、周辺の水田に移動していると思われる毎年数組が営巣・産卵しているカルガモ。ヒナの成長後、周辺の水田に移動していると思われる

屋上緑地で毎年確認されるケリ屋上緑地で毎年確認されるケリ

屋上緑地で確認されたヒバリ屋上緑地で確認されたヒバリ

また、施設の建て替えなどの機会には、周辺の植栽を見直し、地域在来種を導入するようにしています。同じ稲沢市内にある、2017年に建て替え竣工した従業員寮「オーシェル」では、アラカシ、ユキヤナギやコウライシバなどを植樹しました。このほか、事業所敷地内の芝地などでも、周辺環境に配慮して、除草剤の使用量を極力抑制しています。

寮周辺に地域在来の樹種を導入寮周辺に地域在来の樹種を導入

社員が集まる休憩スペースなどからも導入した在来樹種を確認できる社員が集まる休憩スペースなどからも導入した在来樹種を確認できる

地域の生物多様性保全にも協力

化学肥料を使わないなど、ホタルに配慮して管理されている水田化学肥料を使わないなど、ホタルに配慮して管理されている水田

地元・稲沢市で自生ヘイケボタルの保全に取り組んでいるNPO法人「祖父江のホタルを守る会」の活動に賛同し、定期的に水田での除草活動などに参加しています。その際には従業員の家族も一緒に参加するなどして、環境活動の幅を広げています。

担当者の声

稲沢ビルシステム製作所は現在、構内の緑地整備を中心に活動しています。整備、維持管理の実作業は子会社である三菱電機ライフサービスが担っていますが、丁寧な対応もあって、野鳥が飛来しやすい屋上緑地などを保てています。

しかしながら、近年は生きもの調査を実施できておらず、生息の実態が分からない部分も多くあります。遠からず現状を把握し、今後の活動に役立てたいと思います。

また、近年は地域のNPOと連携し、従業員が家族とともに参加できるイベントも開催しています。このような活動が環境マインド醸成にもつながればと思います。

製造管理部 製造管理課 柳本 丈弘

マネジメントの声

稲沢ビルシステム製作所の特色でもある屋上緑化は2007年に実施されたものです。当時は屋上に太陽光パネルを導入するのが主流だったはずですが、多角的な視点で環境施策について考え、「緑地」というかたちを選んだと聞いています。「将来、よりよい環境を実現するために」というこの考え方は、今後の活動でも受け継いでいくべきものだと思っています。こうした考えから、近年では自然共生サイトへの登録も一つの目標としています。

そのためには、生物多様性保全への考え方を一人ひとりに意識してもらうことが必要です。屋上には安全管理上、従業員が普段から立ち入ることはできませんが、今後ライブカメラの設置などは検討していきたいと思っています。従業員がもっと気軽に活動について知り、関われるような仕掛けがあれば、生物多様性への意識も広めやすくなるのではないでしょうか。

また、地域への情報発信も必要です。例えば、毎年8月に敷地内で実施している「SOLA fes.(夏まつり)」イベントには一般の方も多く来場されますから、こうした機会を活かした情報発信もあわせて進めていきます。

製造管理部 部長 根岸 弥士(写真右)

製造管理部 製造管理課長 奥田 耕司(写真左)

自然共生サイト:「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のこと。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM」として国際データベースに登録される

稲沢ビルシステム製作所の活動の方向性

以下は三菱電機グループの各事業所による生物多様性保全活動の方向性を示した一覧表です。
稲沢ビルシステム製作所の活動がどの方向性に当てはまるのかを、色で示しています。

鳥類などの棲みかとなる屋上緑地(草地)を維持管理

活動の方向性
  • A 生きものへの
    負の影響を低減する
  • 1.「開発圧※1」「外来種圧※2」の抑制  ※3
  • (1)生きものに対する影響把握
  • (2)外来種管理
  • 2.「希少種」「固有種」への注意喚起と保全
  • (1)構内生物リストの公開
  • (2)希少種、固有種の保全
  • (3)周辺の保全課題への協力
  • 3.農薬影響の管理や、緑地・天然資源の保全
  • (1)生きもの殺傷の抑制
  • (2)水や土壌等の天然資源への配慮
  • B 生きものとの
    より豊かな共生を目指す
  • 4.機能緑地の設定
  • (1)緑地管理の体制
  • (2)飛翔性生物の利用地の整備
  • (3)「みどり+生きもの」優先地の整備
  • (4)事業所周辺への「みどりの連続性」の提供
  • (5)事務所周辺の生物多様性保全活動への貢献
  • 5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの
    脱却
  • (1)植生の多様化・多層化
  • (2)植物などの特性に合致した緑地管理
  • (3)地域への貢献・配慮
  • C 働く中で従業員が
    自然との関係を取り戻す
  • 6.生態系サービスの職場での積極的享受
    (休憩所、フロア)
  • (1)文化的サービスの享受・場づくり
  • (2)供給サービスの享受・場づくり
  • 7.「無関心」「無関係」状態から、
    「全員が関係ある」状態へ
  • (1)理解と行動促進の教育
  • (2)職場・業務での関係創出

※1開発圧:棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること(サプライチェーンでの開発を含めて)、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。

※2外来種圧:その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。

※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。