ユーザーと三菱電機の共創が課題を解決
通常のロボットでは成し得ない制御精度を実現
2026年4月
事例のポイント
- 1. カメラの映像をもとにロボットの動作をリアルタイムで補正
- 2. 熟練技術者と同等の加工時間を実現
- 3. 多様な視点を持った人材の共創でイノベーションを創出
株式会社ヨコオ 富岡工場

ヨコオは車載用や社会インフラ用のアンテナ、電子機器用のコネクタ、医療用の先端デバイスなどの開発・販売を手掛けるメーカーだ。創業100年を超える老舗企業で、その製造拠点の一つに群馬県富岡市の富岡工場がある。
富岡工場では2023年から、半導体検査用プローブの製造の自動化に取り組んでいる。同工場が作るプローブは超小型で、髪の毛の半分以下という極細の金属チューブの中にバネと端子を組み込んでいる。加工精度が数ミクロンというこのプローブを、現在は熟練技術者による手作業と専用の組み立て設備により行っているが、技術者の育成には時間がかかる。またプローブは200種類以上にも及ぶため、製品ごとに専用の設備を用意するのは困難だったという。


ヨコオは、長さ1mm以下の部品を熟練技術者による手作業や専用装置で組み立てることで、超小型のプローブを製造している。
そこで同工場ではロボットを活用し、自動化を進めながら多様な製品に柔軟に対応できる設備開発に挑むことになった。しかし、問題は数ミクロンという微細な加工がロボットで可能かということだった。同工場でのプローブ製造は5ミクロン以下の制御を必要とする一方で、ロボットの制御精度は通常30ミクロン程度。「ロボットの一般的な使い方では成し得ません」と、生産プロセス革新本部 革新推進部 上席技師の小堀雄司氏は話す。小堀氏は、以前所属した大手メーカーでロボットの導入プロジェクトを担当し、生産の完全自動化を成し遂げた経験がある。その小堀氏でも、プローブの生産自動化は一筋縄ではいかないことを予感したという。

株式会社ヨコオ 生産プロセス革新本部 革新推進部 上席技師 小堀雄司氏
そこで、以前のプロジェクトでロボットを導入した三菱電機に相談。その中で浮上したのが、カメラのデータをロボットの動作にフィードバックするというアイデアだ。一般的なティーチングと違い、カメラの映像をもとにリアルタイムでロボットの動作を補正することで、制御精度を高めようという考えだが、「ロボットの限界以上の性能を引き出す」(小堀氏)ことになるため、その実現は容易ではなかった。
実現は果たして可能か。小堀氏が三菱電機のロボット・センサ部に考えをぶつけたところ、返ってきたのは「できると思います」という返事だった。「実現性が定かでないものに挑戦してくれることに感動しました」と小堀氏は言う。そこから三菱電機のラボでの共創活動が始まった。
ロボットの高い剛性が実現の決め手

ヨコオと三菱電機の技術者による共創活動で課題解決に挑んだ。
三菱電機には社外にも開かれた共創活動のためのラボがある。そこでヨコオの技術者と三菱電機の技術者が日々実験と検証を重ねていき、できあがったシステムが、2台のカメラを組み合わせたフィードバック機構だ。
2台のカメラが交互に撮像し、産業用PC(IPC)を介してロボットの動作にフィードバック。ロボットのわずかなズレをリアルタイムで補正していくというものである。「ロボットの高い剛性が決め手になりました。いろいろ試して検討しましたが、基準を満たすことができたのは、三菱電機のMELFAだけでした」(小堀氏)。


2台のカメラが交互に撮像し(左)、そこから得られた情報をロボットの動作にフィードバックする(右)。
2台のカメラが交互に撮像し(上)、そこから得られた情報をロボットの動作にフィードバックする(下)。
しかしヨコオと三菱電機の共創活動は、これで終わりとはならなかった。「プローブは、熟練技術者ならば25秒で組み立てます。ロボットで自動化するならば、せめて50秒を切らないと意味がありません。それに挑戦したいと思っています」(執行役員生産プロセス革新本部長 兼 CTC/FC/MD製造統括の赤尾剛氏)。

株式会社ヨコオ 執行役員 生産プロセス革新本部長 兼 CTC/FC/MD製造統括 赤尾剛氏
両社の技術者たちは共創活動を続行。単に自動化するだけでなく、人の作業レベルに追い込むための研究に取り組んだ。その結果、ワンサイクル34秒という速さを達成し、熟練技術者と同等に近づくことに成功した。

さらなる共創活動で熟練技術者と同じレベルのサイクルタイムを実現。
成功の鍵となったのは、共創活動の中で三菱電機が提供した最新技術だ。開発中の高速撮像や高速ビジョン技術を投入し、これまでにない精度や速度を実現するとともに、位置情報を読み取って予測することで制御の安定性も向上させている。
「信頼できるパートナーの存在が不可欠」
生産プロセス革新本部 革新推進部 次長の鹿子悟史氏は「ヨコオのものづくりのDNAは『ないものは作る』です。そのためには信頼できるパートナーの存在が欠かせません。今回、三菱電機と一緒に共創活動に取り組むことで、世界で初めてのものづくりを目指すことができました」と一連の活動を振り返る。また小堀氏も、活動の鍵は「異なる背景の人たちとの共創」にあると語る。「多様な視点を持った人が協力することで、限界の先にあるイノベーションが見えてくると考えています」(小堀氏)。

株式会社ヨコオ 生産プロセス革新本部 革新推進部 次長 鹿子悟史氏
共創活動により実現したロボット制御システムは、まだ試作段階にあるが、ヨコオでは今後、量産ラインへの展開も進めていくという。
製品・ソリューション紹介

株式会社ヨコオ
- 創業:1922年9月1日
- 事業内容:車載通信機器、回路検査用コネクタ、電子機器用コネクタ、医療機器、電子検査用治具マイクロウェーブ通信機器、セラミックス、社会インフラ用システム
- URL:https://www.yokowo.co.jp/
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