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情熱ボイス【ハーモニックスセーバ篇】第1回 打つ手がなくなった「高調波引込み現象」にどう対応するか情熱ボイス【ハーモニックスセーバ篇】第1回 打つ手がなくなった「高調波引込み現象」にどう対応するか

高周波対策で協力してほしい 高周波対策で協力してほしい

人事異動の挨拶は、たいていは世間話程度で終わるものだ。いきなり込み入った話をするようなことはなく、たわいもない話で顔つなぎするぐらいで済ませることが普通だろう。

しかし2019年4月の人事異動で三菱電機福山製作所から本社の機器計画部へ移った長谷英生が、パートナー企業の指月電機製作所に挨拶で訪れたときは勝手が違っていた。指月電機製作所の担当者は渡りに船とばかりに、長谷に

「ちょっと相談したいことがあるんです」

と持ちかけてきた。必要な情報を揃えるので詳細に説明する場を早急に設けてほしいという。

ただならぬ気配を感じ取った長谷は、その場をすぐ翌週に設定することにした。翌週、再び指月電機製作所を訪れた長谷は、その相談の内容を聞かされることになる。

「高調波対策で協力してほしい」。

高調波対策の限界

高調波とは、交流電源の基本周波数の数倍から数十倍の周波数を持つ電流波形である。50Hzや60Hzの基本周波数にこの高調波が乗ることで波形が歪み、それを受けた電気機器は異常動作などを起こしてしまう。具体的にはモータの異常回転や変圧器の騒音、ヒューズの誤溶断などが起きるとされている。

もっとも高調波の存在は30年以上前から知られており、原因だけでなくその対策方法も明らかになっている。高調波の原因は工場や商業施設、医療機関などに置かれている機械で、特にインバータやUPS(無停電電源装置)、X線装置などが高調波を発生しやすい。その高調波が系統電源に逆流することが原因のため、電力会社はこうした機器を多く使う需要家に対して高調波対策のガイドラインを出し、それぞれの設備から出る高調波を抑える方法を提示している。基本的にはそれで対策ができていたはずだ。

しかし高調波を取り巻く環境が複雑化し、事態が変わった。大きな要因の一つが、家庭用インバータエアコンの急激な増加だ。

「工場などだけでなく家庭からも高調波が出るようになったのです。工場のように高調波を出す側に対策に施すことを、全ての家庭にしてもらうことはできません。高調波が乗ることが避けられない以上、電力を受ける側で対策しなくてはならなくなったのです」と指月電機製作所e-パワーシステム事業統括部担当部長の矢部久博は言う。

現場で相次ぐ直列リアクトルの異常過熱事故

矢部は長谷の前に高調波により発生した事故事例をまとめた資料を広げ、その具体的な内容を説明した。事故はいずれも指月電機製作所が製造し顧客に納入した直列リアクトルが、高調波が原因で異常加熱を起こしたというものだった。

しかし長谷は今ひとつに落ちなかった。直列リアクトル自体、高調波の影響を抑えるための機器だからだ。直列リアクトルは進相コンデンサへの高調波の影響を防ぐ機器である。進相コンデンサは遅れの無効電力を打ち消すことで力率を改善し、電力を有効に活用可能にする機能を持つ。受電設備に取り付けられることが多い進相コンデンサに高調波が乗ると、域内の設備全体に高調波が拡大する恐れがある。それを防止するために、進相コンデンサに接続して使われるのが直列リアクトルだ。

高調波の影響を抑えるはずの直列リアクトルが、なぜ高調波で異常を起こすのか。原因は高調波引込みと呼ばれる現象が起きていることだった。直列リアクトルは、進相コンデンサ使用中は高調波抑制に効果を発揮するが、進相コンデンサを投入した際に電源に高調波が乗っていると、進相コンデンサと直列リアクトルの過渡電流が高調波電流と共振を起こし、大きな電流が継続的に流れてしまう。これが高調波引込み現象と呼ばれるものだ。その結果、直列リアクトルが急速に異常な高温になってしまう。

直列リアクトルは内蔵の温度センサで高温を感知すると、保護のために進相コンデンサを切り離す機能を持っており、機械的な故障に至ることはほぼないものの、条件によっては保護しきれず故障することもあり得る。実際他社製品では短絡事故につながったとの情報もあった。また故障はなくとも進相コンデンサの制御が利かなくなり、力率改善という本来の機能を果たせなくなる。それが高調波引込み現象の大きな影響なのである。

こうした事故は以前からなかったわけではない。一般的な直列リアクトルは、進相コンデンサの容量の6%のリアクタンスを持つ。高調波引込み現象の拡大に対応するにはこのリアクタンスを引き上げるのが有効だ。実際、指月電機製作所ほか各社が、6%とは別に13%の直列リアクトルをラインアップし、特に高調波が顕著な大都市圏では13%の直列リアクトルを使用して効果を発揮してきた。

ところが前述の事故事例は、いずれも13%の直列リアクトルを導入している現場で起こったものだったのである。まさに「打つ手がなくなった」状態であり、それが長谷に至急の相談を持ちかけた理由だった。

エネセーバをベースに開発できないか?」

打つ手がない中でも指月電機製作所には一つのアイデアがあった。三菱電機グループの東洋電機(当時)が持つ「エネセーバ」をベースに、対策機器を開発できないかというものだった。

東洋電機のエネセーバは、変圧器への励磁突入電流を抑制する開閉器である。変圧器のオン時に流入する大きな電流を抑制できるようにすることで、変圧器の日常的な電源オフによる節電を可能にする装置だ。エネセーバはこの機能を機械的な接点により実現している。

指月電機製作所はこのエネセーバの仕組みに着目。同じ仕組みを使って高調波が入ってきたときに、それを逃がす機器ができるのではないかと考えた。しかし指月電機製作所は東洋電機とは直接的な関係は薄いので、その調整役として三菱電機に立ってほしい。それが長谷への依頼だった。

エネセーバ TES-GB2形

ただ指月電機製作所は、最初から東洋電機のエネセーバに対策を決め打ちしていたわけではない。実はもう一つアイデアがあった。自動力率調整装置に使われている真空電磁接触器(VMC)を応用することだった。VMCは開閉回数などの面でエネセーバより大きく優れており、それを搭載した自動力率調整装置ならば三菱電機自身が開発・製造している。三菱電機に協力を依頼するのであれば、三菱電機の製品を使うのが筋であり、話もスムーズに済むだろう。

しかし指月電機製作所は敢えてエネセーバの仕組みの方を志向した。

「高調波引込み現象防止機器をVMCで実現するならVMCの2台相当を制御する必要があり、コスト的に見合うのかという疑問がありました。それに対しエネセーバの機構はシンプルで、顧客に受け入れられやすい機器を実現できると考えたのです(指月電機製作所e-パワーシステム事業統括開発部 開発課 電力開発グループ主事の池永光大郎)。

VMCを持つ三菱電機に、他社の技術を使った開発のとりまとめを依頼することなどできるのだろうか。指月電機からの依頼を長谷は快諾した。ソリューションの構成要素が自社であろうが他社であろうが関係ない。優先すべきは高調波引込み現象という問題に最適なソリューションをつくることなのだ。

「分かりました。今度、一緒に東洋電機に行って話をしてみましょう」。

長谷はさっそく東洋電機も交えた検討の場を設定することにした。しかし本当に開発が可能かどうかは東洋電機の判断次第である。

三菱屋内用高圧交流負荷開閉器 ハーモニックスセーバ

高調波引込み現象防止機能付開閉器

高調波による電圧ひずみ率の高いところでは、投入時に進相コンデンサに高調波引込み現象が発生し、直列リアクトルの異常過熱やヒューズの不要溶断などの事象が発生するケースがあります。
この問題を解決するため、高調波引込み現象を防止する製品を追加ラインナップしました。

変圧器の励磁突入電流を抑制する開閉器 励突抑制開閉器(エネセーバ)

励磁突入電流対策は新たなステージへ!

省スペース化のニーズに対応した小形品を新たにラインアップ(TES-GB1形)。
使いやすさとコンパクト化を追求し、電気の安定供給のためにエネセーバの進化は続きます。

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