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情熱ボイス【ハーモニックスセーバ篇】第3回 偶然見つかった実証試験の場所情熱ボイス【ハーモニックスセーバ篇】第3回 偶然見つかった実証試験の場所

総合力抜きには成し得なかった 総合力抜きには成し得なかった

高調波は「電気の公害」とも呼ばれる。公害の対策機器を提供しようというなら、実際の公害に対する効果を実証しなければ顧客への説得力に欠けるだろう。

新製品の開発では、開発段階で顧客に実際に使ってもらうフィールドテストを行うこともある。同じ方法が長谷の頭によぎったが、すぐに首を振った。それは高調波で今も悩まされている顧客のシステムを「おとり」にするようなものであり、到底お願いできるものではない。

どこで最終的な実証実験を行うのか。関係者が頭を悩ませていたところ、常峰がふと思い出したように言った。

「あ、ひょっとしたらあそこで実験できるかも」。

産総研での実証試験

常峰が「あそこ」と呼んだのは、福島県郡山市にある産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所だ。常峰はその1年ほど前、業界団体の活動でこの研究所を見学したことがあった。その名の通り再生可能エネルギーの研究を行う施設であり、電気関連で多様な実験設備を持つ。そこならば実際の環境に即した実証実験ができるかもしれない。

矢部が問い合わせると確かに「実験可能」という。2020年11月、プロジェクトメンバーは開発中の高調波引込み対策機器をトラックに積み、同研究所を訪れた。系統電源を模した環境に、高調波を乗せて現場で高調波引込み現象が起こる環境を再現。そこに対策機器をつないで実証実験を繰り返した。

そこでの試験は、いずれも満足のいく結果であり、高調波引込み現象を止められることは実証された。最初の検討から1年半余りを経て、ようやく製品化が確実になったのである。これまで「新型エネセーバ」というコードネームで呼ばれていた対策機器は、製品化を前に「ハーモニックスセーバ」という名前が付けられた。

「あなたが動画に出ればいいじゃない

「高調波引込みという現象自体が十分認知されていない。どう説明すればいいのか、難しいものになると予感した」(山下)。

高調波引込み現象に多少通じているユーザでも、直列リアクトルで解決できると思っていることは少なくない。しかし直列リアクトルが効果を発揮するのは進相コンデンサの使用時であり、進相コンデンサの投入時は直列リアクトルでは防ぐことができない。ハーモニックスセーバはそれを補う役目を担い、直列リアクトルと組み合わせて高調波対策を向上させる機器という位置づけだ。そこで山下は直列リアクトルとの「名コンビ」という表現で、ハーモニックスセーバの役割を明確にすることにした。

ハーモニックスセーバの開発は順調に進み、初お披露目は2021年5月の「電設工業展」(JECA展)に設定された。新製品の披露には格好の場だが、抵抗投入による高調波引込み現象防止という新しい切り口を理解してもらうためにはどうすればよいか。山下はJECA展の担当者と相談し、高圧配制機器の分野では初めての「オンライン動画」を活用することにした。高調波引込み現象を防止する波形・メカニズム等をイメージ動画で紹介することで、この現象を容易にご理解いただけるのであれば、やってみる価値はあるだろう。

ところがその動画に出てくれる人物がなかなか見つからない。山下は社内をあちこち駆け回ったが、動画は初めての取り組みということもあって、どうしてもみんな腰が引けてしまう。見つからないことに悩んでいる山下に上司は言った。

「山下さんが出てみては?
ハーモニックスセーバの売り方をずっと考えてきたんだから、
山下さんが適任だと思うよ」

結局動画には発案者の山下が自ら登場することになった。動画を披露するはずだった2021年のJECA展はコロナ禍で結局中止になったが、今も製品紹介映像として活用されている。

総合力抜きには成し得なかったプロジェクト

2021年6月、ハーモニックスセーバは発売された。2年に渡った開発の過程で、東洋電機は「三菱電機社会インフラ機器株式会社」(MPUE)に社名を変更。ハーモニックスセーバは三菱電機の「e-F@ctory」の一つに正式にラインナップされ、高調波引込み現象防止という新たなソリューションとして提供が始まっている。

「複数の会社の連携による開発プロジェクトを取りまとめるのは、初めての経験だった」と長谷は振り替える。原因を的確に分析した指月電機、解決に結びつく独自技術を持っていた東洋電機(現:MPUE)、そしてそれらを取りまとめてソリューションに昇華させた三菱電機という三社による総合力抜きには、成し得ない課題解決だった。

高調波引込み現象のように多様な要因が複雑にからみ合った問題は、もはや一つの会社で解決まで結び付けることはできない。解決に真に必要なのは、さまざまなリソースを組み合わせて総合力として発揮させることだ。会社の枠組みを超えた総合力から生み出されたハーモニックスセーバは、新しい時代のソリューションの生み出し方を象徴している。

MPUE氷上工場にて。右から:MPUE山下氏、常峰氏、三菱電機 長谷氏、指月製作所 矢部氏、池永氏

三菱屋内用高圧交流負荷開閉器 ハーモニックスセーバ

高調波引込み現象防止機能付開閉器

高調波による電圧ひずみ率の高いところでは、投入時に進相コンデンサに高調波引込み現象が発生し、直列リアクトルの異常過熱やヒューズの不要溶断などの事象が発生するケースがあります。
この問題を解決するため、高調波引込み現象を防止する製品を追加ラインナップしました。

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