Factory Automation

特集論文

高性能省エネルギーモータ
“スーパーラインプレミアムシリーズSF-PR形”

2014年11月公開【全3回】
名古屋製作所 長谷川裕之 磯谷拓郎 尾本雄亮

第1回 高効率化の技術

1. まえがき

世界の総発電量は約21.4兆kWhで、産業用モータによる電力使用量は総発電量の46%を占めていると言われている。近年の地球温暖化や将来予想されている化石燃料の枯渇に対して、モータ高効率化の更なる推進が喫緊の課題となっている。
このような状況下で、三相モータの効率基準値を国際的に統合し、標準化することを目的としてIEC 60034-30によって効率クラスが規格化された。あわせて、効率試験方法も国際的に統一化され、各国で法規制化が進んでいる。
日本国内でも省エネ法が施行され、2015年度からトップランナ基準値(IE3相当)で法規制されることを受け、プレミアム効率モータSF-PR形を開発・発売した。
プレミアム効率モータSF-PR形は、モータの各損失を徹底的に低減し、1台のモータで国内省エネ法と米国EISA法の法規制に対応し、取付寸法や保護装置の互換性を維持した製品である。ブレーキ付モータSF-PRB形もラインアップに追加し、幅広い用途に対応している。また、プレミアム効率モータSF-PR形を当社工場に導入し、ほぼ設計値どおりに消費電力量が12%削減することを確認した。

2. 高効率化の技術

2.1 損失分析

三相モータは、電気エネルギー(入力)を機械エネルギー(出力)に変換する機械であり、エネルギー変換の際、その一部が損失として三相モータ内部で消費される(図1)。
入力と出力の比を三相モータの効率ηで表し、損失が小さいほど効率ηが高く、モータの高効率化が実現可能である。
三相モータの発生損失は銅損(一次銅損及び二次銅損)、鉄損及びその他(機械損及び漂遊負荷損)に分けることができる。次に、損失低減について代表的な項目を述べる。

図1.入出力と損失の関係
図1. 入出力と損失の関係

2.2 一次銅損低減

銅損とは、電気エネルギーが導体の電気抵抗によって熱エネルギーに変わる損失である。
特に一次銅損は巻線抵抗に大きく依存するため、スロット面積の拡大が有効であるが、一方で磁路を減少させることになる。
プレミアム効率モータSF-PR形では生産技術の革新によって、限られたスロット面積で巻線占積率の向上をさせることで、巻線導体断面積増加を達成し、一次銅損の低減を実現した。

2.3 二次銅損低減

二次銅損は、回転子導体の電気抵抗による損失であり、回転子溝形状に大きく依存する。回転子溝形状を大きくすることで二次銅損の低減を達成できるが、始動電流の増大とすべりの減少が懸念点となる。
プレミアム効率モータSF-PR形では回転子溝形状の最適化を実施し、始動電流の増大やすべりの減少を抑制しつつ、二次銅損の低減を実現した。

2.4 鉄損低減

鉄損とは、鉄心の磁場が変化することによって発生する損失で、ヒステリシス損と渦電流損がある。ヒステリシス損は、磁性体のヒステリシス減少によるもので、周波数及び磁束密度に依存する。渦電流損は、三相モータの鉄心で起こる電磁誘導の際に発生する渦電流によってエネルギーを消失する現象である。
鉄損は、低損失鉄心材料や最適なスロット形状の採用によって低減可能であるが、低損失鉄心材料は飽和磁束密度が低下する。
プレミアム効率モータSF-PR形では鉄心材料とスロット形状を最適化し、モータ全体としてバランスを取ることで鉄損の低減を達成した。

2.5 機械損低減

銅損と鉄損の低減によってモータの温度上昇が低減するため、外扇ファンの小型化が可能となる。ただし、外扇ファンを小型化することはモータの温度上昇を増大させ、巻線抵抗を増加させることになる。
プレミアム効率モータではモータ全体のトータル損失が最小となる小型の外扇ファンを採用することで機械損の低減も実現した。

製品紹介

高性能省エネルギーモータ “スーパーラインプレミアムシリーズSF-PR形”

高性能省エネルギーモータ “スーパーラインプレミアムシリーズSF-PR形”

日本国内IE3相当のトップランナー基準と米国EISA法に対応しているプレミアム効率モータ SF-PR形。

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