特集論文
高性能省エネルギーモータ
“スーパーラインプレミアムシリーズSF-PR形”
2014年11月公開【全3回】
名古屋製作所 長谷川裕之 磯谷拓郎 尾本雄亮
第2回 製品の特長
3. 製品の特長
先に述べた技術でIE3効率基準値より高いプレミアム効率モータSF-PR形を実現した。次にこの製品の特長について述べる。
3.1 幅広いラインアップ
プレミアム効率モータSF-PR形は、脚付・フランジ・屋外などをラインアップしており、新たにブレーキ付モータSF-PRB形も拡充した(図2)。ブレーキ付モータでは、非常停止などの制動目的や搬送装置などの保持目的で使用されており、より広い用途での省エネルギー化に貢献する。

図2. 幅広いラインアップ
3.2 4定格でのIE3効率実現
プレミアム効率モータSF-PR形では、損失を平均39%改善し、IE3効率基準値より高い効率を実現している(図3、図4)。

図3. 損失低減率(SF-JR形→SF-PR形)

図4. 効率比較(SF-PR形、SF-JR形とIE3基準)
これによって、国内省エネ法に対応した標準3定格と米国EISA法に適合した1定格の合計で4定格対応を実現している。
ここでの定格数は、モータ電源電圧と周波数の組合せ数を指し、プレミアム効率モータSF-PR形の定格名板を図5に示す。

図5. SF-PR形の定格名板
3.3 取付寸法の互換性
当社は従来、三相モータの外装構造部材(フレーム)として、枠番号225Sまでの全機種に鋼板フレームを採用している(図6)。

図6. 三相モータの構造
一般に三相モータのトルクは、円筒形回転子の外径の2乗に比例し、回転子積層鉄心長に比例する。鋼板はアルミと比較して強度面で優れており、鋳物と比較して製造面でも優れているため、フレーム厚を薄くできる。その結果、回転子の外径を大きくすることができ、必要な積層鉄心長を短縮し、三相モータの小型化が可能となる。また、鋼板フレームに鉄鋼素材を採用することで磁性体となり、鋼板フレーム自体に磁気を通すことができ、高効率化に寄与できる。当社は、鋼板フレームの製造ラインとして、10台の多間接ロボットを配置する溶接セルを採用し、工程が複雑な鋼板フレームの生産性向上を実現している(図7)。
これらの取組みの結果、プレミアム効率モータSF-PR形でも、業界最小級の全長を実現している。

図7. 鋼板フレームの製造ライン
3.4 保護装置の互換性
一般的に三相モータの高効率化によって始動電流が増加する傾向にあり、標準効率モータからプレミアム効率モータへの更新時に保護装置の変更が必要となる場合がある。
プレミアム効率モータSF-PR形では、始動電流抑制の回転子溝形状を採用しているため、保護協調部品の当社製ブレーカとの組合せで、標準効率の三相モータと同一容量を選定することができ、保護装置を変更することなく既設の標準効率モータSF-JR形からプレミアム効率モータSF-PR形への更新を可能としている。
3.5 インバータ駆動定トルク連続運転範囲の拡大
三相モータをインバータで低速運転するとき、冷却能力が低下するため、従来高効率モータ“SF-HR形”の定トルク連続運転範囲は1:10(6~60Hz)であった。プレミアム効率モータSF-PR形では定格速度における温度上昇が低減されているため、当社製インバータのアドバンスト磁束ベクトル制御との組合せによって1:120(0.5~60Hz)での定トルク連続運転範囲を拡大、広範囲の変速運転を可能としている(図8)。

図8. 定トルク連続運転範囲の拡大
製品紹介

高性能省エネルギーモータ “スーパーラインプレミアムシリーズSF-PR形”
日本国内IE3相当のトップランナー基準と米国EISA法に対応しているプレミアム効率モータ SF-PR形。