Factory Automation

特集論文

次世代FA電子マニュアル “e-Manual”

2017年4月公開【全3回】
名古屋製作所 天野貢次
三菱電機エンジニアリング(株) 長尾大輔
CDS(株) 舞田浩子

第1回 製品概要

1. まえがき

 近年、液晶・半導体分野などのFA製造事業では海外の市場規模が急速に拡大しており、FA市場が海外へシフトしていく中、顧客から見た価値の変化(ハードウェアの性能から使いやすさ・サービスへ)も起きている。このような状況の下で、 “技術サービス” は製品購入の判断にも大きく影響している。その一方で、海外の顧客に対しては国内同様の手厚い技術サポートが届きにくい部分もある。このような中、製品マニュアルはシステムの立ち上げやトラブルの早期解決に影響する重要な技術サービスの位置付けにあり、顧客満足度や製品展開にも大きく影響する。
 従来、FA製品は機種数が多く、また高機能化によって、マニュアルの冊数やページ数が増大している。そのため、紙やPDF(Portable Document Format)マニュアルでは必要な情報を探すのに多大な時間がかかる問題があった。
 今回開発したe-Manualは、これらの問題を解決するため、マニュアル群のデータベース化とIT技術の活用によって先進的な使いやすさと圧倒的な検索性の向上を実現して、システムの立ち上げやトラブルシュート時間の大幅な削減を可能とした。これによって、e-Manualは、多大な生産ラインや装置の立ち上げ・トラブルシュートなどの場面で製品をより使いやすく支援していくグローバル市場において三菱電機FA製品の有力な技術サービスとなっている。

2. e-Manualの特長

2. 1 いつでも簡単に最新マニュアルを入手

 e-Manualは、生産ラインや装置に使用している三菱電機のFA製品のマニュアルを、いつでも簡単にダウンロードしてその場で閲覧できる。また、機能・仕様追加などでマニュアルが改定された場合でも簡単に最新バージョンの照合ができ、常に最新情報へ更新して閲覧できる。

2. 2 スピーディな情報検索

 e-Manualは、マニュアル群をデータベース化しているため、確認したいFA製品を指定するだけで該当する製品マニュアルが全て表示され、マニュアル構成などを意識せず簡単に所望のマニュアルを閲覧できる。また、欲しい情報をキーワードで指定するだけで、格納されている全マニュアルの横断検索ができるため、多くのマニュアルを1冊ごとに探して調べる必要がなく、素早く欲しい情報を入手できる。
 FA製品固有の仕様であるエラーコードや命令などに絞り込んだ特定検索もできる。

2. 3 マニュアルを使いやすいようにカスタマイズ

 e-Manualは、設計時の設定方法や現場での保守・トラブルシュート時など、良く確認する情報をブックマーク登録したり、顧客の生産ラインや装置で必要な情報をメモとして記録するなど、顧客ごとの環境に応じて使いやすいようにカスタマイズができる。登録した内容はマニュアルが改定されても継承されるため、いつまでも情報を有効に活用できる。

2. 4 エンジニアリングツールと連携した情報支援

 e-Manualは、エンジニアリングツールとの情報連携インタフェース機能を実装しているため、マニュアルに記載されているFA製品のサンプル制御プログラムを簡単にエンジニアリングツールへコピー&ペーストでき、FA製品の試使用動作を簡単かつスピーディに確認できる。また、エンジニアリングツール上でプログラミング作業を行う時にも、命令の使い方などをその場で検索・表示でき、プログラミングを簡単に行えるよう支援している。

2. 5 タブレット端末対応による現場作業の支援

 e-Manualは、設計時からトラブルシュート・保守までをトータルでサポートするパソコン(Windows(注2))版とともに、現場作業時(トラブルシュートの一時診断や保守などの時)に手軽に情報を確認できるタブレット端末(Android(注3)、iOS(注4))版がある。装置などで使用しているFA製品のマニュアルを現場に何冊も持ち運ぶ煩わしさをなくして、タブレット1つで該当製品に関する必要な情報を現場で確認できるようにしている。

  • (注2) Windowsは、Microsoft Corp. の登録商標である。
  • (注3) Androidは、Google Inc. の登録商標である。
  • (注4) iOSは、Cisco Systems, Inc. の登録商標である。

2. 6 データ構造改善によるマニュアル制作の効率化

 e-Manualでは、リソースとなるマニュアルの原稿データを構造化言語XML(eXtensible Markup Language)で記述するため、テキスト差分管理の容易化による多言語翻訳作業の効率化や1ソースからマルチ媒体(印刷物、PDF、e-Manualファイル)への生成が可能であり、マニュアル制作の効率化を実現している。

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