Factory Automation

特集論文

次世代FA電子マニュアル “e-Manual”

2017年4月公開【全3回】
名古屋製作所 天野貢次
三菱電機エンジニアリング(株) 長尾大輔
CDS(株) 舞田浩子

第2回 製品特長(上)

3. 従来マニュアルの課題

 FA製品のマニュアルは、情報量の多さや高性能・高機能化に伴った機能追加などの改定によって、情報の検索性や最新マニュアルの照合・入手の容易性など、顧客から、システムの立ち上げやトラブルシュート時間の短縮に向けた改善要望があり、マニュアルサービスとして次の課題があった。

3. 1 最新マニュアルの入手容易性の向上

 FA製品の高性能・高機能化に伴い、マニュアルの改定や新規追加などが度々行われるため、顧客はメーカーホームページ内で該当製品のマニュアルを探したり、現在所有しているものが最新バージョンなのかを確認する煩わしさがあった。したがって、最新マニュアルを簡単に入手できる手段が必要である。

3. 2 情報検索性の向上

 従来、FA製品のマニュアルは、紙媒体又は電子化されたデータの形式(≒紙媒体)で提供されていた。また、FAシステムは多くの製品で構成されており、それらを構成する個々の製品は多くの機能を持つという特徴がある。さらに、1つの製品に関する情報が複数のマニュアルに分冊されて記載されている場合があり、顧客はFAシステムを構築する際に大量のマニュアルを所有することになる。
 このようなマニュアル群から所望の情報を取り出すことは、顧客にとって負担が大きいという問題があり、これらの問題を解決するために、大量のマニュアルから所望の情報を素早く入手できることが必要である。

3. 3 カスタマイズ性の向上

 顧客の装置の特性などに応じて、使用しているFA製品のマニュアルへノウハウ情報を書き留めたり、トラブルシュートや保守時によく確認する内容などに付箋を使用して次回からすぐに確認できるようにするなど、顧客がマニュアルを使いやすいようにカスタマイズしているケースが多い。しかし、従来のFA製品マニュアルは紙媒体又は電子化されたデータの形式(≒紙媒体)で提供されているため、マニュアルが改定された場合に、旧マニュアルに記録された情報が廃棄されてしまい、製品のライフサイクルに沿った有益な情報資産として残せなかった。そのため、顧客が記録した情報は、マニュアルが改定されても継承できる手段が求められている。

3. 4 エンジニアリングツールとの情報連携強化

 FA製品を使用するに当たり、各パラメータの設定やプログラミングなどにはエンジニアリングツールを使用する。その際、プログラミングの命令などを必要に応じて顧客が仕様を確認できるように、マニュアルに記載されている命令仕様の説明部分を抜粋したエンジニアリングツール専用のヘルプファイルを作成して提供していた。これは、従来の電子化されたマニュアル(≒紙媒体)でもエンジニアリングツール上から直接参照できる仕組みがないため新たに作成する必要があり、余計な工数がかかっていた。
 また、マニュアルにはFA製品の使用方法を示したサンプル制御プログラムが記載されているが、これらを作成するには記載例に従って全て手作業でプログラミングする必要があり、入力ミスをおかしやすく手間がかかっていた。このため、エンジニアリングツール上から必要な情報を参照して、サンプル制御プログラムなどを簡単にエンジニアリングツールへコピーできるような情報連携機能が求められる。

3. 5 多言語マニュアル制作を含めたマニュアル制作の効率化

 従来マニュアルの原稿データは、文書と定義付けしたタグ情報などが紐(ひも)づいていない非構造の形式であるため、テキスト情報を効率よく活用できなかった。そのため、多言語マニュアル制作では、原稿データの変更箇所(和文からの変更箇所)の洗い出しを手作業でする必要があり、非効率で翻訳までに時間がかかっていた。また、非構造のデータ形式ということもあり、多くの用途に対応できる新たな電子マニュアル媒体に対応する場合、別データとして新規作成する必要があり、多大な工数がかかる。これらの問題を解決するため、原稿データの差分管理などを容易にするデータ構造や、1ソースで多用途に使用できるデータ形式に対応していくことが求められている。

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