特集論文
“e-F@ctory” を支える
CC-Link IEフィールドネットワークBasic
2017年9月公開【全3回】
名古屋製作所 上野友義 市村宇志
[第1回]製品概要
1. まえがき
近年、Ethernetの汎用性・高速性・将来性・廉価性によって、Ethernet技術を用いた産業用ネットワークが増加している。当社では、CC-Link IEネットワークにEthernet技術を適用している。これらのネットワークは高速・大容量の通信を必要とする自動車、液晶・半導体などの製造分野で広がりを見せている。一方で、アジアを始めグローバル市場では、コストパフォーマンスを重視した小規模装置向けの製品に対する要望が増加している。小規模装置では、製品コストはもちろん、設定・立ち上げコストや、保守コストを削減することも求められており、使いやすさも重要となっている。また、IoT(Internet of Things)の注目度が高まる中、従来は開発工数や費用対効果の面からネットワーク対応が困難であった機器や装置でも、ネットワーク対応要望が増加している。
これらの要望に応えるため、汎用Ethernet上で動作する小規模装置向けのオープンネットワークとして、 “CC-Link IEフィールドネットワークBasic” を開発した。CC-Link IEの使い勝手を継承し、上位ITシステムとの親和性を高め、シンプルで簡単なネットワークを実現する(図1)。
本稿では、このネットワークの特長及び適用した技術について述べる。

図1.CC-Link IEフィールドネットワークBasicの位置付け
2. CC-Link IEフィールドネットワークBasicの仕様
CC-Link IEフィールドネットワークBasicの仕様を表1に示す。CC-Link IEフィールドネットワークBasicは、汎用Ethernetを活用し、ソフトウェアだけで構築可能なネットワークである。
トポロジは、Ethernetのトポロジに従うため、基本的にはスター型である。ライン型のトポロジは、スイッチ機能(Ethernetポートを2ポート持ち、スイッチ機能付きICでパケット中継を可能とする機能)を内蔵したスレーブ局を使用することで対応できる。
通信は、マスタ局がブロードキャストで要求を送信し、スレーブ局がユニキャストで応答を返すことでサイクリック通信を実現している(図2)。サイクリック通信は、マスタ局(コントローラ)と各スレーブ局(制御対象機器)間で共有する分散共有メモリを定期的に更新する機能である。今回対応したシーケンサCPU “MELSEC iQ-Rシリーズ” では、スレーブ局16台接続時のリンクスキャンタイム(全局の制御データがマスタ局に反映される時間)を10ms以下で実現している。

図2.CC-Link IEフィールドネットワークBasicの通信方式

表1.CC-Link IEフィールドネットワークBasicの仕様