開発した「圧縮シェイピング」技術の適用先

三菱電機株式会社は、基幹光ネットワークで用いられる光送受信器に適用する新たなデジタル信号処理技術として、光通信の大容量・低消費電力化を実現する「圧縮シェイピング」技術を世界で初めて※1開発しました。通信トラフィックのデータ状況に応じて、「0」と「1」のビット列からなるデータのうち、「0」の割合が多いデータをエネルギーの小さい信号点※2へ自動的に割り当てる「シェイピング」と、それと同時にデータ圧縮を行う手法です。

基幹光ネットワークは高度情報化社会を支える通信インフラの一つとして、大規模データを集約して長距離伝送するために多数用いられています。近年、新たな生活様式への移行にともない、通信トラフィックは増加しており、大容量かつ低消費電力の通信が求められています。また、次世代のBeyond 5Gサービスでは、現在の10倍の大容量・高速通信が必要とされています。

一方、データ通信の大容量・高速化が進むほど信号伝送時の歪みや雑音等の影響が増加し、符号誤り※3が顕著となります。このとき、誤りを訂正する符号処理には多くの電力が消費されるため、大容量化と低消費電力化を両立する妨げとなります。また、符号誤りを減らすために信号点間同士が重なりにくいように信号点間距離を広げると、全体のエネルギーが大きくなって、光ファイバー通信の制約を満たさなくなるという課題がありました。

今回、高い確率で生じる「0」の割合が多いデータ※4(無効データ)をエネルギーの小さい信号点に割り当てる「シェイピング」を行うことで、全体のエネルギーを抑えたまま信号点間の距離を離し、符号誤りを減少させるとともに、同時にデータ圧縮も行う「圧縮シェイピング」技術を開発しました。これにより、誤りを訂正する符号処理の電力消費を従来※5比8分の1以下に低減するとともに、光送受信器の大容量化も可能となります。また、「圧縮シェイピング」技術を汎用の大規模集積回路であるFPGA※6に実装し、世界最高※1 の光通信用符号処理速度(毎秒、最大1.6テラビット超)で実証しました。

本研究開発の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究「超並列型光ネットワーク基盤技術の研究開発(採択番号:20401)」による成果です。当社は現在、同委託研究「Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発(採択番号:01401)」で、さらに発展的な研究開発を進めています。

  • ※1

    2022年7月19日現在、当社調べ

  • ※2

    通信量を増やすことを目的とした、データを割り当てるための複素数平面上の分布点。複素数平面の原点から距離が離れるほど信号点のエネルギーが大きくなる

  • ※3

    通信トラフィックのデータを構成する0と1のデジタル符号のうち、「0が1」もしくは「1が0」に反転し、符号の誤りが生じること

  • ※4

    情報の送受がないときも通信を途絶えさせないため、0の割合が多いデータを送受するので発生確率が高い

  • ※5

    信号点の発生確率を均一とし、誤り訂正により全データビットを均一に符号化した場合

  • ※6

    Field Programmable Gate Arrayの略。プログラミングによって動作変更が可能なLSI