2025.10.29
#ピックアップ #インタビュー #社内制度 #採用 #Well-being 「Changes for the Better」を体現する人事制度—Vol.2 『安心して働ける』を実現する、三菱電機の福利厚生の取り組み
働き方や価値観の多様化が進む現代、企業には従業員一人ひとりのキャリア形成とライフステージに寄り添った福利厚生制度が求められている。単なる経済的支援ではなく、従業員の自己実現や成長を後押しする仕組みこそが、真の働きやすさにつながるのではないだろうか。
三菱電機では、人生の節目となる30歳・40歳でライフデザイン研修を受講した人に付与されるポイント制度や、転勤等による住まいの変化をサポートする住宅制度等、多岐にわたる福利厚生制度を整備している。
約4万人の従業員が長期的なキャリアを描ける環境づくりの背景を、実際に制度設計・運用に携わる人財統括部 人事総務部 Well-Being推進グループの加藤勇人さんと石田渚さんに聞いた。
【今回紹介する制度】
LD30・40Plus:30歳・40歳で受講するライフデザイン研修にて明確にしたライフプランの実現に向けて、自己投資を行うことを支援する制度(LD30Plus:10万円相当、LD40Plus:12万円相当のポイントを付与)
家賃補助制度:2024年度に大幅見直しを実施。転任者向け支援を強化し、多様な働き方を支える住環境を整備
セレクトプラン:30種類以上のメニューの中から自分に合ったメニューを自由に選択できるカフェテリアプラン制度(8万3千円相当/年のポイントを付与)
別居滞在手当:転勤により配偶者と別居する場合の二重生活費用を補助。帰省旅費もサポート
目次
ライフデザイン研修とポイント制度が連動した「LD30・40Plus」で自己投資を支援
― まず、「LD30・40Plus」について詳しく教えてください。
石田:当社では、30歳・40歳という人生の節目でライフデザイン研修を受講していただき、今後のキャリアや人生について、様々な側面から考えていただきます。LD30・40Plusは、その研修で明確にしたライフプランの実現に向けて、個人が主体的かつ継続的に自己投資を行うことを支援するポイント制度です。付与されたポイントは、自分のキャリアや人生をより充実させるために活用することができます。
加藤:特にユニークなのは、ライフデザイン研修とポイント制度を連動させている点です。30歳で10万円、40歳で12万円相当のポイントを付与していますが、研修を単なる知識のインプット機会で終わらせずに、研修で明確にした将来像を実現させるためのアウトプットを実践できるよう金銭的に支援する、他に類を見ない仕組みになっていて、従業員にも好評をいただいている制度です。
― ライフデザイン研修では具体的にどのような学びがあるのでしょうか?
加藤:自分にとっての豊かで健やかな人生とは何かを考えるきっかけを提供し、仕事のみならずプライベートも含めたキャリアプラン/ライフプランについて考えてもらうプログラムです。30歳では自律的にキャリアデザインすることの重要性を理解し、今後訪れる可能性のあるライフイベントやそのために必要なマネープランなどを学び、40歳ではこれらに加えて健康管理や定年退職後も見据えた人生設計を学びます。
実際に研修を受けた方からは、「何となく資産形成が必要だとわかっていたけれど、研修を機に自分の家庭の将来設計を具体的に考えるきっかけになった」といった声をいただいています。
石田:標準的なライフステージに基づいた一律の支援ではなく、それぞれが目指すキャリアや生き方に応じた取り組みを後押しすることが目的です。特にLD40Plusには、これまで長年にわたり会社に貢献してくれた社員への、会社からの感謝の気持ちも込められています。
― ポイントは、実際にはどのような用途で活用されているのでしょうか?
加藤:LD30・40Plus共通した特徴としては、個人旅行費用補助や子どもの教育費用補助メニューが多く利用されていることです。LD40Plusでは、社員持株会の購入費用補助や資産形成費用補助の利用も多く、ライフデザイン40研修 が経済面でのライフプランを考える機会になっているようです。
印象的なエピソードとしては、「40歳でライフデザイン40研修 を受講し、定年退職後を見据えたマネープランを考える必要性に気づき、LD40Plusの資産形成メニューを活用して株式投資を始めた」という方がいらっしゃいました。LD30Plusは付与年度から10年間、LD40Plusは退職まで利用可能で、長期的な視点で自己投資を計画できる設計となっています。
時代の変化に合わせて進化しつづける住環境支援
― 従来の家賃補助制度が、2024年度に大きく見直されたそうですね。見直しのポイントについて教えてください。
加藤:人的資本経営の観点から、多様・多彩な人財が活躍する基盤となる「働きがいのある職場環境」を実現するため、労働組合と検討を重ね、2024年度に寮社宅・家賃補助制度を大幅に改定しました。
改定のポイントは2点です。「転任者への支援強化」と「独身者向け住宅制度の充実」。特に転任者向けの支援を重点的に強化しました。
石田:背景には、居住地に対する考え方の変化があります。転勤を命じられた人が金銭的な不安なく、新任地で職務に専念できるよう制度を整備しました。
― 具体的にはどのような転任者向け制度があるのですか?
加藤:転任者向けの住宅制度として家賃補助制度を適用しています。独身者や単身赴任で転任される方、家族と一緒に転勤先に転居する方が対象です。
特徴的なのは、従業員が希望する賃貸物件を会社名義で契約し、会社から従業員に貸与する形になっていることです。本人負担は賃料の30%で毎月の給与から控除されます。これにより、従業員本人の社会保険料の負担が軽くなるなどのメリットもあり、転任者へ手厚い制度設計となっています。
私自身も新卒で福山製作所に配属され、2020年に妻と一緒に東京本社に異動した際、家賃補助を利用しました。都内は賃料が高いので、補助があることで現実的な居住エリアを選択でき、通勤時間や生活水準も含めて、暮らしやすさと働きやすさを両立できています。
石田:転勤に関連して、配偶者の仕事や子どもの学校の都合で家族と別居せざるを得ない場合には、別居滞在手当という制度もあります。単身赴任による二重生活の経済的負担を軽減し、家族との時間を確保できるよう帰省旅費も補助しているんです。多様な家族のあり方に対応した制度設計を心がけています。
自由度の高さが魅力。年間8万3000円分のポイントが付与される「セレクトプラン」
― 続いて、セレクトプランについても教えてください。
石田:セレクトプランは、社員一人ひとりの多様な価値観やライフスタイルを尊重し、個人のニーズに基づいたサービスの選択を可能とすることを目的として2003年7月から導入しています。年度初めに8万3000円分のポイントを付与し、それぞれのライフステージやライフスタイルに合わせて必要なメニューを自由に選択することが可能です。
加藤:給食費用補助や生命・損害保険料補助などの生活支援メニュー、個人旅行費用補助などのリフレッシュメニューが多く利用されています。また、育児や介護に関連するメニューは通常ポイントの2倍の補助を支給しており、両立支援に力を入れてきました。
毎年8万3000円のセレクトプランポイントを「今年は何に使おうか」と家族と相談して決めているという声もよく聞きますね。私自身も妻と相談しながら、その年に必要なものを選んで活用しています。
― 実際の利用例を教えてください。
石田:私自身も3歳の息子がいるので、セレクトプランの育児関連メニューを活用しています。本来1ポイント=100円で使えるセレクトプランですが、一部育児関連メニューは1ポイント=200円で使うことができます。保育料なども補助対象になっているため、とても助かっていますね。
実際の利用率も非常に高く、2024年3月末時点のポイント消化率は92.4%でした。 高い消化率からも、従業員の皆さんにとって使いやすく、価値のある制度になっているのだと感じます。
福利厚生が生み出す従業員の「安心の土台」
― 制度設計において大切にされていることはありますか?
加藤:私たちが大切にしているのは、従来の画一的なライフステージモデルから脱却した制度設計です。かつては「30歳で結婚、35歳で子どもが生まれて家を買う」といった標準的なライフステージが想定され、それに合致した人が恩恵を受けやすい制度設計になっていましたが、今はそうした考え方をやめています。
結婚する・しない、子どもを持つ・持たないなど、個々人の多様な価値観やライフスタイルを尊重し、それぞれの状況に応じて使いやすい制度を整えることを目指しています。
― こうした制度が従業員のエンゲージメントに与える影響をどう考えていますか?
加藤:福利厚生は、仕事へのやりがいを支える「土台」のような役割だと考えています。いくら評価・報酬制度などの仕組みが素晴らしくても、生活の基盤となる福利厚生が整っていないと、従業員は不安を抱えながら働くことになります。福利厚生で生活の不安を取り除くことで、仕事でのパフォーマンス向上にもつながると考えています。
石田:「当たり前に安心して働ける環境」を整えることが福利厚生の大切な役割だと考えています。基盤がしっかりしているからこそ、従業員が自分の力を発揮できるのではないでしょうか。
人的資本経営で目指す「多様・多彩な人財が輝く組織」
― 福利厚生によって三菱電機はどんな企業、組織を目指していますか?
石田:私たちが大切にしているのは、多様・多彩な人財が活躍できる組織づくり。福利厚生を通じて、従業員のウェルビーイング*向上を図るとともに、当社の持続的な成長の原動力である「人」の価値を高めていきたいと考えています。
- 三菱電機で働く従業員と従業員が大切に想う人が、身体も心も充実してて幸福を実感している状態
― 最後に、就職活動中の学生や求職者にメッセージをお願いします。
加藤:当社はもともと多種多様な福利厚生制度を整備し従業員を支えてきましたが、これから入社される方やすでに働いている方々が、さまざまな個性を持ってさらに活躍できる環境を整えるために、現在、制度をアップデートしています。
これまでもこれからも、従業員一人ひとりが「この会社で長く働き続けたい」と思える環境づくりを大切にしていきます。制度の土台はしっかりとありつつ、時代に合わせて常に進化しつづける。そんな環境で、皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。
石田:三菱電機には、従業員一人ひとりを尊重し、誠実に向き合う企業文化が根付いています。これが、私が入社して以来、最も魅力を感じている点です。
福利厚生においても、「人」を中心に据えた考え方を大切にしながら、価値観やニーズの変化に柔軟にアジャストし、誰もが安心して働き続けられる環境づくりを推進しています。互いに支え合いながら、自分らしく成長できる職場で、皆さんと共に働くことができる日を楽しみにしています。
プロフィール
INTERVIEWEE
三菱電機 人財統括部 人事総務部 Well-Being推進グループ
加藤勇人
2013年に三菱電機へ入社。福山製作所にて労政業務からキャリアをスタートし、2020年より現職。当社福利厚生制度全般の企画・立案、制度運営に関するルール作りや各拠点・関係会社からの照会対応を担当している。
INTERVIEWEE
三菱電機 人財統括部 人事総務部 Well-Being推進グループ
石田渚
2019年に三菱電機に経験者として入社し、採用グループにて事務系採用を担当。2021年から2023年まで産休・育休を取得し、制度を実際に利用する立場も経験。復職後は採用ブランディングを担当し、2024年より現職。当社福利厚生制度全般の企画・立案を担当し、実体験に基づいた制度改善に取り組んでいる。
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制作: Our Stories編集チーム